マツダMX-30は、ホンダが10月30日に発売する「ホンダe」とともに、2019年秋の第46回東京モーターショーに参考出品したモデルだ。いずれもEVで、2020年に市販するという触れ込みだった。それぞれ、初の量産EVとして注目され、ホンダはその公約通り日本と欧州で発売することになった。
ところがマツダが国内で発売したMX-30は直噴ガソリンエンジンにモーターを組み合わせたマイルドハイブリッドカーだった。マツダは欧州ではMX-30のEVモデルを9月に発売したが、「日本市場では2021年1月に発売を予定している」と先送りした。マツダが10月8日にオンラインで行ったMX-30の発表記者会見でも、EVについてこれ以上詳しい説明はなかった。
マツダは昨秋の東京モーターショーでMX-30について「バッテリー容量が35.5kWhで、航続距離は約200キロ(WLTCモード)」と発表し、その通りのスペックで欧州では発売した。
もちろん今回、MX-30のハイブリッドモデルをいきなり発売したわけではない。7月末、日本市場向けのMX-30について、EVに先行する形で直噴ガソリンエンジンを搭載したハイブリッドモデルを今秋発売すると発表している。しかし、一般のクルマ好きにとっては昨秋の東京モーターショーの印象が強い。

マツダMX30=HPから
ホンダeが公約通り、日本と欧州で市販するのに対して、マツダがMX-30のEVモデルの発売を欧州に限り、日本ではハイブリッドに路線変更したうえ、EVをリース販売にとどめる理由は何か。
それは日本でEVを市販しても、MX-30のように航続距離の短いEVは使い勝手が悪く、幅広い支持を得られないと判断したからではないか。
もちろんバッテリーの容量を増やせば航続距離は伸びるが、バッテリーを増やすほど販売価格がかさむ。そのジレンマはホンダも同様で、バッテリー容量35.5kWhで航続距離283キロのホンダeは、コンパクトな2ボックスセダンとしては451万円と高額だ。
昨秋の東京モーターショーを見て、マツダがEVを発売すると期待した一部のクルマ好きにとって、ハイブリッドで登場したMX-30は肩透かしに違いない。マツダとしても同社初のEVと打ち出せないMX-30について、「フリースタイルドア」と呼ぶ観音開きのユニークなドアを宣伝するくらいしかアピールポイントがないのが現状だ。
マツダには、このクラスのSUVとして既に「CX-30」が存在する。それなのに、わざわざキャラクターの似たMX-30を開発する必要があったのか。ハイブリッドにするなら、CX-30を改良すれば十分ではなかったかとさえ感じてしまう。
欧州の環境規制をクリアするため、マツダがEVを市販しなければならない事情はわかる。でも、日本のみならず、欧州で航続距離の短いMX-30が受け入れられるのか。今後の市場の評価とマツダの将来に一抹の不安が残る。