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原油価格の下落傾向続く OPECプラス崩壊と新型コロナで経済停滞 

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【藤和彦の眼】米国が需給調整の備蓄増強に乗り出したが・・・

公開日: 2020/03/17 (マーケット, ビジネス)

Reuters Reuters

  3月上旬のOPECプラス(OPEC加盟国とロシアなどの非OPEC産油国)の協議決裂を契機に世界の産油国は増産に舵を切り始めている。中でも顕著な動きを示しているのは世界第3位の原油生産国サウジアラビアである。

 日量973万バレルだった原油出荷量を4月には同1230万バレルへと大幅に引き上げることに加え、サウジアラビアのエネルギー産業鉱物資源相は11日、原油生産能力を日量1200万バレルから同1300万バレルに増強するよう、国営石油会社サウジアラムコに指示した。

  サウジアラビア政府は18日に開催予定のOPECプラスの実務者レベル会合をキャンセルし、6月10日に開催されるOPECプラスの閣僚会議の参加にも否定的な姿勢を示している。

  OPEC第3位の原油生産国であるアラブ首長国連邦(UAE)も日量300万バレル強の原油生産量を4月に同400万バレルにまで拡大し、さらに同500万バレルにまで生産能力を増やすことを表明した。

 世界第2位の原油生産国であるロシアだが、OPECプラスによる再協議に前向きな姿勢を示しつつも、今後日量30~50万バレル増産する意向である。

  世界第1位の原油生産国である米国の米国の足元の原油生産量は日量1300万バレルと過去最高レベルであるが、現在の原油価格(1バレル=30ドル前後)で採算がとれるのはエクソンモービルやシェブロンの米石油大手などの4社に限られる(3月10日付OILPRICE)。このような状態が続けば、シェール企業の半分が経営破綻に追い込まれるとの予測も出始めている(3月9日付OILPRICE)。

  米国の石油産業の中心的存在となったシェール企業の財務体質が脆弱であることはよく知られている。原油価格の急落により2015年から16年にかけて米国では100社以上のシェール企業が経営破綻したが、今回はそれをはるかに上回る深刻な危機に見舞われることが必至の情勢である。

  今後3カ月間でシェール企業を始めとするエネルギー産業が発行した182億ドルに上る社債が償還を迎える(3月10日付ロイター)。今回の原油価格急落により、多くの社債の格付けが悪化しており、資金繰りが行き詰まるリスクが格段に高まっている。

  2015~16年にシェール企業に対し、買収や融資、出資などを通じて救いの手を差し出したプライベートエクイテイ(未公開株)投資会社も原油価格の急落により大きな打撃を受けており(3月10日付ブルームバーグ)、再び助け船を出す余力は残っていない。

  これまで「原油高は米国内のガソリン価格につながる」としてOPECプラスの協調減産に批判的だったトランプ大統領も、シェール企業の悲鳴を受けて13日、米国内での原油の過剰供給を回避するため、戦略石油備蓄(SPR)を積み増す方針を明らかにした。

 米国政府はここ数年原油の対外依存度が著しく低下したことから、SPRの大量放出を進めてきたが、シェール企業の大量倒産という大惨事を回避するための方針転換である。

 だが果たして効果はあるのだろうか。

  そのポイントは世界の原油需要の推移にかかっていると筆者は考えている。
 
 足元の世界の原油需要は、新型コロナウイルスの感染拡大による経済の急減速で中国の原油需要(日量1350万バレル)に急ブレーキがかかり、日量400万バレル減少したとの見方が強まっている。だが現在の水準が「底」である保証はない。

 その理由は、世界最大の原油需要国である米国の需要(日量2000万バレル)にも多大な影響が出ることが懸念され始めているからである。

 米国政府は13日、国内の新型コロナウイルスの感染拡大を受け、国家非常事態を宣言したが、これにより「米国内でヒト・モノの移動が本格的に制限され始め、今後数ヶ月はガソリンなどのエネルギー需要が急速に減少する」との見方が強まっている。

 米ゴールドマン・サックスは15日「第2四半期の米国経済成長率はマイナス5%となり、11年ぶりの苦境に陥る」との予測を示しており、米国経済はリセッションの瀬戸際に立たされている。

  リーマンショック後の米国の鉱工業分野を牽引してきた石油産業の昨年の雇用数は約150万人だが、既にレイオフが始まっており、今後この動きが進めば、米国経済のさらなる下押し圧力となる。

  米国よりも新型コロナウイルスの感染拡大が激しい欧州経済における原油需要はさらに深刻であり、暴力的とも言えるやり方で新型コロナウイルス対策を講じてきた中国経済が今後若干上向いたとしても、「焼け石に水」に過ぎないかもしれない。

 このように新型コロナウイルスの蔓延が終息しない限り、世界の原油需要は持続的に減少する可能性が高まっているが、このことは日本が原油輸入を依存している中東地域の地政学リスクを高めることにつながることは言うまでもない。

藤 和彦 (経済産業研究所上席研究員)

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藤 和彦(経済産業研究所上席研究員)
1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣参事官)。2016年から現職。著書に『原油暴落で変わる世界』『石油を読む』ほか多数。
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