コンビニ店舗が増加する一方でコンビニオーナーの成り手がおらず、コンビニ業界は深刻なオーナー不足に悩まされている。
十数年前のコンビニ加盟店説明会では、スーツ姿の脱サラ志望者と思しき人々が、夫婦揃って詰めかけたものだが、それも今は昔。24時間営業の過酷さや本部と加盟店の裁判で本部が敗訴するような事例が増加するにつれ、不透明なフランチャイズ契約などがインターネットで少し調べたら判るようになってしまったため、新規オーナーがまるで来ない。
セブン-イレブンなど大手各社は「オーナー募集」の広告をインターネット上などでやっているが、「取り敢えず、見栄を張っているだけのパフォーマンス。新規オーナーなど全国的に数人いるかどうか」という声がコンビニ関係者から聴こえてくる。
コンビニ本部側は、それでも店舗数増加方針でいるため、既存店のオーナーに複数店舗を進めるなどして店舗数増加をどうにか行っているという。セブン-イレブンなどは、地域によっては複数店経営をかつては渋ったものだが、最近は積極的に進めるそうだ。
しかし、現役オーナーたちの見方は厳しく、「いつか綻びが来る」という意見が目立つ。
「現在、コンビニオーナーの主流は団塊の世代に近い人々。店を始めた時40代やった僕も気が付いたら60歳を過ぎた。今度、ファミリーマートとサークルKサンクス本部が経営統合されるけど、ファミリーマートの方針に着いていけないというオーナーが相当、店じまいすることも予想されますよ。am/pmを統合した時もファミマ路線に着いていけず辞めた店がかなりあるしな。若い人で後を継ぐ人もおらへんし、数年で淘汰される店が次々と出てくるはずやで」と関西のベテランオーナーは語る。
かつては脱サラ組のオーソドックスな選択肢だったコンビニ加盟店であるが、業界内で普通に「コンビニ5万店飽和説」が語られる時代である。セブン-イレブンの鈴木敏文会長は、「出店余地はまだまだある。来年度には2万店をめざす」と強気な主張をマスコミなどで繰り返している。最近までセブン-イレブンが未出店だった四国や沖縄などがあるからで、そうした地方では他チェーンからセブン-イレブンに転向するオーナーも多いからだ。
JR西日本が経営する駅中コンビニ・ハート・イン(Heart・in)を買収するなど、新規店を出すよりも他チェーンを取り込むケースが目立つ。コンビニ店舗自体は飽和状態と言われる程、増加してはいるが、セブン-イレブンの商品や店舗体制は他チェーンからは魅力的なものも多く、コンビニ業界は「セブン-イレブンの独走態勢。一強他弱」という論調の報道がよくなされる。
とはいえ、セブン-イレブンでも新規加盟者は殆どいない。既に7・8年前から地方での加盟店説明会の席上はガラガラで、一人も参加者がいないということもザラだったのである。業界トップのセブン-イレブンからしてこうした状況なのだから、他チェーンは推して知るべしというべきではないだろうか。とはいえ、地域インフラとして貴重な存在になったコンビニが無くなるハズもなく、今後加盟店の淘汰がどのように進むかが注目される。
コンビニ新規オーナーが集まらない |
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店数は飽和状態なうえ、過酷な24時間営業が嫌われて
公開日:
(ビジネス)
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角田 裕育(ジャーナリスト)
1978年神戸市生まれ。大阪のコミュニティ紙記者を経て、2001年からフリー。労働問題・教育問題を得手としている。著書に『セブン-イレブンの真実』(日新報道)『教育委員会の真実』など。
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