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注目は長期のインフレ期待値

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【経済着眼】意外と強い米経済、利上げ模索へ

公開日: 2016/02/18 (マーケット)

CC BY CC BY /Agent Smith

村田 雅志 (ブラウン・ブラザーズ・ハリマン通貨ストラテジスト)

 2月も半ばを過ぎたが、年初に強まった米国景気の先行きに対する慎重な見方は、依然として払しょくされていないようだ。

 米国株は昨日(2月17日)まで3営業日続伸となったが、年初来では5%台半ばのマイナス。米2年債利回りも2月11日の0.65%近辺から上昇し、昨日は0.74%台で引けたが、年始の1.03%台から30bp近く低下している。

 しかし米経済指標は、第1四半期の米成長率が、それなりの伸びを確保する可能性が高いことを示している。1月の米雇用統計では、失業率が4.9%と約8年ぶりの5%割れ。平均時給は前月比0.5%増と市場予想(同0.3%増)を上回り、賃金の増加ペースは加速。米景気のけん引役である個人消費の拡大継続を示唆した。

 これを裏付けるかのように、1月の米小売売上高は前月比0.2%増と市場予想を上回り、0.1%減だった前月分も0.2%増に上方修正。GDP算出に用いられるコントロール売上高(総売上高から食品、自動車、建材、ガソリンを除いたもの)は同0.6%増と8カ月ぶりの高い伸びとなった。

 アトランタ連銀が独自に公表する経済予測モデル「GDPナウ」によると、第1四半期成長率は2月17日時点で2.6%増と、2月1日時点の1.2%増から大きく上方修正。需要項目別にみると、個人消費が3.3%増と、昨年第4四半期の2.2%増から加速する予測となっている。

 年始からの米国株の下落で米個人消費は2月以降、鈍化するとの見方も一部にあるようだ。しかし2月のミシガン大消費者信頼感は90.7と1月から低下したが、昨年の最低水準(87.2)を上回ったまま。米国株は、底打ちの兆しを示しており、株価下落を理由に個人消費(ひいては米景気)が鈍化すると見るのは、やや無理があるように思える。

 原油安を理由に米国景気の先行き懸念を指摘する声もあるようだが、これも無理のある見方だ。米国は他先進国と同様に原油の純輸入国。原油安で原油関連企業の業績が悪化し、雇用が減少したのは事実だが、米国経済全体でみた場合、原油安がネガティブに作用するとは考えにくい。

 そもそも、先行き不透明感は強いものの、原油価格は2月に入り減産合意期待もあって一進一退の動き。原油安が続くとの見方が後退したようにも思える。

 本日(2月18日)発表された1月の日本の貿易統計(通関ベース)では、輸出数量が前年比9.1%の減少と約3年ぶりの落ち込み。ドイツでは2月のZEW景況感指数が+1.0と2014年10月以来の低水準に落ち込むなど、日独ともに第1四半期成長率に強い期待が持ちにくい状況。中国景気の減速も続くとの見方が根強く、年始から色々とあったが、世界経済における米国景気の堅調が目立つ図式に変わりはないように思える。

 本日早朝に公表されたFOMC議事録(1月26-27日開催分)では、多くの当局者が下振れリスクが高まったと認識していることが示されたが、中長期的な見通しを変更するには十分な確証が見られないとも指摘。声明文でも示されたことだが、米景気は緩やかな拡大を続け、インフレは中期的には2%に回帰するとの見通しが維持された。原油安やドル高が落ち着いていることも考慮すれば、FRBは追加利上げを模索する動きを続けると見るのが自然と思われる。

 とはいえ、FRBが追加利上げを続ける、という見方が崩れる可能性を「完全に」否定することは難しい。その理由は、米景気が大きく減速し、世界景気全体の停滞感が強まるためではない。米国のインフレ期待が低下し、FOMCメンバーのインフレ見通しが下方修正される可能性があるからだ。

 本日公表されたFOMC議事録では、調査による長期的なインフレ期待がほとんど変わっていないと指摘された。FOMC後に発表されたミシガン大による調査では、5-10年先のインフレ期待値が2.4%と、前月の2.7%から鈍化。ミシガン大学がインフレ期待の調査を始めた1979年2月以降で最も低い水準を記録した。

 FOMC議事録は、インフレが中期的に2%に戻ると想定する前提の一つは、調査による長期のインフレ期待が安定し続けている(remain well anchored)点も指摘している。3月18日発表予定の3月のミシガン大調査による5-10年先のインフレ期待値が2月と同水準もしくはさらに低い伸びとなれば、FOMCは4月以降、インフレ見通しを下方修正し、インフレ期待が高まるまで利上げを見送る可能性が高まる。

 こうした見方は、セントルイス連銀・ブラード総裁の発言からもうかがえる。同総裁は、日本時間の本日午前に講演し、インフレ期待が低下しているなかで金融引き締めをするのは賢明ではないと発言した。3月16-17日開催のFOMC後に示されるドットチャートで年内の利上げ回数見通しが下方修正される可能性を示唆した。ブラード総裁は、米雇用市場の改善を以前から指摘するなどタカ派の印象が強く、今年のFOMCで投票権を有している。今回の同総裁の発言が、今後市場で重視される可能性もある。

 年内の利上げが1、2回にすぎないとの見方が強まれば、米国株は底堅さを増し、市場のリスク回避姿勢も和らぐ傾向が強まるだろうが、ドル買いの動きは期待しにくくなる。ドル円は111円割れから114円台まで回復したが、その後伸び悩み。市場はFRBによる年内利上げ姿勢の変化を見極めようとしているように思える。
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村田 雅志(ブラウン・ブラザーズ・ハリマン通貨ストラテジスト)
東京工業大学工学修士、コロンビア大学MIA、政策研究大学院大学博士課程単位取得退学。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社にてアナリスト、エコノミスト業務に従事。2004年に株式会社GCIアセットマネジメントに移籍。2006年に株式会社GCIキャピタル・チーフエコノミスト。2010年10月よりブラウン・ブラザーズ・ハリマン通貨ストラテジスト。2009年より2013年まで専修大学経済学研究科・客員教授。日経CNBCでは「夜エキスプレス」レギュラーコメンテーターを務めている。

著書に「景気予測から始める株式投資入門」、「実質ハイパーインフレが日本を襲う」、「ドル腐食時代の資産防衛」など。
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