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朝、毎、東京は撤回と理由の説明要求

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【論調比較・任命拒否問題】親政権2紙が代弁する政権の本音「軍事研究拒否はけしからん」

公開日: 2020/10/08 (政治)

Reuters Reuters

岸井 雄作 (ジャーナリスト)

 日本学術会議の会員任命を巡り、任命権者である菅義偉首相が学術会議から推薦された候補105人のうち6人の任命を拒否した問題が波紋を広げている。

 過去に例がないだけに、学者組織への権力の介入――第一報に接した瞬間、直感的に疑念を抱いた人も多かっただろう。新聞、テレビの多くも連日、大きく報じているが、政権への距離で新聞の扱いは従前にも増して差が目立つ。

 任命を拒否されたのは、小沢隆一・東京慈恵会医科大教授(憲法学)▽岡田正則・早稲田大教授(行政法学)▽松宮孝明・立命館大教授(刑事法学)▽加藤陽子・東京大教授(日本近代史)▽宇野重規・東京大教授(政治学)▽芦名定道・京都大教授(哲学)――の人文・社会科学系の6人。

 学術会議は今年9月末で会員の半数が任期満了になるため、8月31日に6人を含む計105人の推薦書を首相あてに提出したが、9月末に学術会議事務局に示された任命者名簿には6人を除く99人の名前しかなかった。新会員99人は1日付で任命された。

 6人は安倍晋三政権時代、国論を二分した安保法制、共謀罪(テロ等準備罪)、特定秘密保護法などに反対を表明していたことから、これを理由に任命が拒否されたのではないかとの疑念が各方面から起こり、学術会議は任命拒否の理由説明と、改めて6人を任命することを求める要望書を出すことを、新メンバーでの最初の総会(10月2日)で決め、3日提出した。

 学術会議は科学が戦争に協力させられた反省から、1949年、前年制定された学術会議法に基づいて発足。科学に関する政策提言や内外の科学者との連携、世論の啓発などの役割を担う。政府内の組織だが、独立して職務を行う「特別の機関」との位置づけだ。

 会員は戦後の教育委員会などと同様、「民主的選挙」での選出(学者による投票)方式だった。「学者の国会」とも呼ばれた所以だが、学問的業績に疑問符が付く人も選ばれるなどの批判もあって1984年に学会による推薦方式に、さらに2005年から会員・連携会員による推薦方式に変わった。任期は6年で、半数ずつ、3年ごとに改選している。

 投票方式から推薦方式に改めた際には、国による学問への介入への懸念も強く、時の中曽根康弘首相が1983年の国会で「政府が行うのは形式的な任命に過ぎません」と明言、所管大臣も「推薦された者をそのまま会員として任命する」と答弁した。

 だが、これに関し、2018年11月に「推薦通りに任命すべき義務があるとまではいえない」との見解を政府内部でまとめており、実際に2017年の前回の改選の際に政府は選考過程で交代枠を超える名簿の提出を学術会議に求め、2018年の欠員補充では、実際の推薦候補に政府が難色を示したため、補充できずなかったことも明らかになり、安倍政権が人事介入を徐々に強めていたことが分かる。

 菅首相は6日の内閣記者会の変則インタビューで、今回の任命拒否について「総合的、俯瞰的な活動を確保する観点から判断した」と3回も繰り返し、具体的理由は説明していない。

 7、8日の国会閉会中審査(衆参両院の内閣委員会)でも議論は深まらず、10月下旬召集予定の臨時国会に論戦は持ち越されている。


 この問題の第一報は共産党の機関紙「しんぶん赤旗」で、10月1日の1面トップで「菅首相、学術会議人事に介入/推薦候補を任命せず/安保法制批判者ら数人」と報じた。

 2日朝刊で大手紙各紙は追随したが、扱いは天地ほどの差がついた。

 東京が1面トップ、朝日と毎日は東証の取引停止があったため1面左肩ながら準トップの大きな扱い。

 3紙は2面、3面、社会面などでも多くの解説記事、関連記事を載せ、「官邸 学問に人事介入」(毎日2面「焦点」)、「説明なし 学者除外」(朝日社会面)と菅政権を批判。その後も3紙は2017年、18年の介入などの続報を1面トップなどで大きく報じ続けている。

 一方、読売は2日朝刊の第三社会面(社会面見開きの1ぺージ前)で、「会長に梶田氏」のメイン記事(3段見出し)に続けて2段見出しで「6人任命せず」と、28行の短い記事で淡々と伝えた。

 産経は5面(政治面)の下の方で「6人見送り」と、やはり2段見出しで報じ、脇見出しで「首相に任命権」と、わざわざ書いた。その後の報道も、新たな事実が出ても淡々と報じるのが中心で、政府側の反論だけは大きめに扱っている。

 こうした報道ぶりは、安倍政権時代の「モリ・カケ」問題でも、2紙の初報は遅れ、かつ小さかったのが、事件が広がるにつれ大きく扱わざるを得なくなっていったことを思い出させるものだ。

 日経は社会面3段だが、見出しには「異論唱える学者排除」と取り、批判的なトーンをにじませた。


 各紙の報道姿勢を象徴するのが5日の菅首相の「インタビュー」を受けた6日の紙面。

 まず、これが「会見」でなく「インタビュー」なのは、内閣記者会の常勤幹事社である読売、日経、北海道の3社の「グループインタビュー」という位置づけで、取材(質問)できるのは3紙記者だけで、記者会加盟の他の16社と、その他の抽選に当たった非加盟記者が別室で聴くという異例の形式だった。

 各社からのインタビューの申し込みに個別に応える時間がないためにこうした形式になったと説明される。

 安倍政権時代から露骨になったメディアの選別の一形態といえそうで、インタビューの中で学術会議問題を取り上げたのは北海道新聞だけで、読売や日経は就任から3週間の手ごたえ、敵基地攻撃、成長戦略、携帯電話料金などを質問した。

 記者が果敢に学術会議問題に切り込んでいるようにみえるテレビニュースもあったが、実態は激しい質疑には至らず、限られた最低限の質問に対し首相が説明しただけだった。

 6日朝刊は読売が1面トップでインタビューを報じたが、「『インド太平洋』推進」がメイン見出しで、「各術会議人事を説明」と2段見出しに取っただけ。

 2面トップでその部分を詳報したが、「正当性強調/『学問の自由侵害せず』」と、首相の言い分をそのまま報じた。日経もトップ記事は企業統治改革などに関する首相の発言で、学術会議はべた記事で、これも首相の説明を載せただけ。

 直接インタビューできなかった産経も、1面トップで学術会議についての発言を報じたが、「首相『前例踏襲に疑問』/任命見送りで見解」と、首相の言い分をそのまま載せた。

 同じ朝刊で朝日、毎日、東京は首相発言を1面で記事にし、「理由明言せず」(毎日1面)、「詳細説明せず」(東京1面)など説明不足をそろって批判的に報じた。


 各紙、社説でも取り上げているが、読売、産経の親政権2紙は、政権の本音がにじんでいる。

 一般記事は地味な産経は、主張(社説に相当)では朝日などとともに3日(https://www.sankei.com/column/news/201003/clm2010030002-n1.html)に掲載したが、ほぼ100%政府の説明を代弁。

〈任命権は菅義偉首相にあるのだから当然だ。……学術会議が推薦した会員をそのまま任命する従来のやり方こそ、改めるべきだ〉と、中曽根答弁などには一切触れずに政府の人事権を擁護。

 読売(6日、https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20201005-OYT1T50201/)は、産経と同じ親菅政権とはいえ、〈今回の決定について、政府が十分に説明していないのは問題だ。過去の答弁との整合性をどう取るのか。菅首相は、判断の根拠や理由を丁寧に語らねばならない。……安倍前内閣の施策を批判したことが、除外の理由ではないかと反発している。多様な意見表明の機会を閉ざしてはなるまい〉と、一定の疑念を示し、政府の説明を求めている。

 各紙に遅れて、満を持して社説を載せた読売がここまで書いたのは、5日の首相インタビューを含め、政府の説明に、いかに説得力がないかの証明といえるだろう。

 そろって任命基拒否の「撤回」を明確に求める朝日、毎日、東京は、説明責任で読売とほぼ同様に主張。

〈首相は「(6人の安保法制などへの反対は)全く関係ない」と述べた。そうであるなら、理由や基準を明確に説明すべきだ〉(毎日7日、https://mainichi.jp/articles/20201007/ddm/005/070/075000c)
〈総合、俯瞰などもっともらしい言葉が並ぶが、6人の拒否がそれとどう結びつくのか全く分からない。……今回の対応について人事の秘密に逃げこむことは許されない。説明を裏づけ、判断過程を検証できる文書をあわせて提示する必要があるのは言うまでもない〉(朝日6日、https://digital.asahi.com/articles/DA3S14647852.html?iref=pc_rensai_long_16_article)
などと、明快な説明を求めている。


 ただ、読売、産経の論調の主眼は、今回の人事を脇に置いて、学術会議のあり方への疑問・批判にあるようで、〈学術会議のあり方も問われている〉(読売)、〈襟をただすべきは学術会議の方である〉(産経)と、そろって書く。

 具体的に問題にするのが2017年の大学などの軍事研究に関する学術会議の声明だ。

 この声明は創立当初の1950年と1967年に出された「軍事目的の科学研究を行わない」とする声明を「継承する」というもの。「自衛のための研究」を容認する声もあることから、前2回に比べて「継承」という表現でややトーンを弱めたとも評される。

 自衛目的と攻撃目的の区別、民生利用と軍事利用の線引きは難しいことが背景にあるが、防衛装備庁が2015年に創設した軍事転用が可能な技術研究などを支援する研究助成制度への大学の応募が進まない実態がある。

 これを、いわば「国策への妨害」ととらえ、産経は〈欧米諸国のような先進民主主義国でも、防衛当局と産業界が協力して先端技術を開発するのは当たり前のことだ。軍事研究を行わないとする一方で、海外から集めた先端技術の軍事利用を図る中国から、多数の科学者を受け入れている事実には目を伏せたままだ。学術会議は、活動内容などを抜本的に改革すべきである〉と断じ、読売も〈情報技術が飛躍的に発展した現在、科学の研究に「民生」と「軍事」の境界を設けるのは、無理がある。旧態依然とした発想を改めることも必要ではないか〉と求めている。

 今回の任命拒否への反発が広がる中で、政府・自民党から学術会議の見直し論が叫ばれるのは、強権的な任命拒否から「論点をずらす」という面とともに、学術会議を政策に沿う方向に変えていこうという本音があるとすれば、合点がいく。

 「必ずしもバリバリのリベラル派でない学者まで拒否したのは、菅政権の狙い、その強い意図を感じる」(大手紙論説委員)との指摘もある。


 朝日、毎日、東京も、今回の人事の背景に軍事研究問題があるのではないかと、軍事研究に慎重な立場から分析している。

〈学術会議は二〇一七年、……「戦争を目的とする科学の研究は絶対に行わない」とした過去の声明を継承すると表明している。政府にとっては煙たい存在なのだろう〉(東京3日、https://www.tokyo-np.co.jp/article/59386?rct=editorial)
〈政府は科学技術振興を国の成長戦略の柱と位置づける。一環として防衛装備庁は、軍事転用が可能なロボット技術研究などを支援する制度を創設した。だが、学術会議の声明の影響もあって、応募は思うように増えていない〉(毎日3日、https://mainichi.jp/articles/20201003/ddm/005/070/108000c)
〈前会長の山極寿一京大前総長、新会長でノーベル賞受賞者の梶田隆章東大教授らが、政権の科学技術政策に批判的な姿勢を示したこともあり、自民党内には根強い批判や不満があるという〉(朝日3日、https://digital.asahi.com/articles/DA3S14644624.html?iref=pc_rensai_long_16_article)

 さらに、安倍政権時代からの忖度の蔓延との関連にも3紙は注目する。

〈異論を唱えれば冷遇される。そんな空気に官僚は萎縮し、政と官の関係はゆがんだ。その中心にいたのが官房長官だった菅氏である。……既に、強引な手法の弊害が明らかになっている中、学術界にもそれを持ち込もうとするなら看過できない〉(毎日3日)
〈「政権の方向性に反対する官僚は異動」と公言する菅首相の下で、その矛先が研究者にも向かってきているように見える〉(朝日3日)
〈萎縮させることで方針に従わせるという、官邸が省庁に対して行ってきた手法の延長線上にあるようにみえる〉(東京3日)

 日経は一般記事の扱いは小さいが、社説は3日(https://www.nikkei.com/article/DGXMZO64549470S0A001C2SHF000/)に素早く載せ、〈(6人が)ときの政府の方針に従わなかったことが理由だとすれば、学問の自由を侵害しかねない。学術会議が2017年に大学が軍事研究にかかわることに歯止めをかけるように求める声明を出したことへの意趣返しとみる向きもある〉などと疑問を並べ、〈政府は異例の決定に至った経緯と理由をきちんと説明すべきである〉と、明快に説明を求めている。
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岸井 雄作(ジャーナリスト)
1955年、東京都生まれ。慶応大学経済学部卒。毎日新聞で主に経済畑を歩み、旧大蔵省・財務省、旧通商産業省・経済産業省、日銀、証券業界、流通業界、貿易業界、中小企業などを取材。水戸支局長、編集局編集委員などを経てフリー。著書に『ウエディングベルを鳴らしたい』(時事通信社)、『世紀末の日本 9つの大課題』(中経出版=共著)。
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