相談ごと 「お墓を買ったのは5年ほど前です。元々主人は、お墓なんていらない、という考えだったのですが、私はどうしても自分が最後に落ち着ける場所が欲しかったんです。子供達の応援もあってようやく主人を説得できましたが、その結果どういうお墓を買うかは主人任せとなりました。子供たちには自分の事は自分で考えてほしい、ということで、夫婦墓という骨壷が2つ入るだけの小さなお墓を買いました。0.5平米位のもので、勿論安かった事もあります。でも私はとても嬉しかったんです。ところが昨年、主人の妹が病気で急死したのです。独身を貫き、仕事に生きた人生だったように思いますが、身寄りと言えば主人だけ。当然お墓の用意もしていません。主人は取りあえず私たちのお墓に骨壷を入れてしまいました。今後の事はまた考えよう、ということで。しかし今年に入って主人もまた交通事故で亡くなってしまったのです。お墓に納骨した後、私は頭を抱えてしまいました。お墓に入れる事ができるのは骨壷2つだけ。そしてもうそれが満杯になってしまったのです。私の入る余地はありません。お墓が欲しかった私にはもう行くべき場所がなくなってしまいました。」
田舎から出てきた人が例外なく驚くのが東京のお墓の狭さです。昔は4~5平米位が多かったのですが、今の主流は1平米。最近はそれよりも小さなお墓が増えています。もちろん骨壷の収納数も少なく、上のようなお悩みも増えているようです。
お墓の納骨室(カロートと言います)の底の部分は土になっているのが望ましいのです。カロートが満杯になった時に骨壷の中のお骨をそこに撒いて土にかえす、という事を行います。ところが小さなお墓の場合、カロートの底が土になっていないものもあります。その結果お骨の処置に困ってしまう、という事が起こります。今回はその典型例と言えるでしょう。
やはり先ず実行してほしい事は、お墓の構造を確かめることです。底の部分が土になっているかどうか。しかしそうだったとしても、亡くなって間がないお骨を土にかえすのは辛い、と思われるかもしれません。
現実的な対処として、義妹さんのお骨をお墓から出し、個人墓か永代供養墓に改葬する事をお勧めします。お金はかかりますが、このままだと跡継ぎとなる子供たちの代へと問題を先送りするだけです。お墓を建てる際の見通しが甘かった、とも言えるケースですので割り切って行動するべきだと考えます。小さなお墓でも骨壷が3つ入るものもありますし、底が土になっているものも多いのです。起こり得るべき事態をよく考慮し、計画的にお墓の購入を進めていれば防げていたトラブルであったと言えるでしょう。
宮浦 孝明(みやうら・たかあき)氏 お墓問題研究所所長。本業は小金井行政書士事務所所長・行政書士だが、行政書士としてお墓をめぐるトラブルの処理に数百件はかかわり、業界内でも「お墓の博士」で通っている。法律面での争い事相談に強いほか、お墓をめぐる諸費用、お礼などにも詳しい。