3月10日(火)渋谷区役所前で、渋谷区が施行を目指している「パートナーシップ条例」に反対するデモがあった。今回のデモを主催したのは、「頑張れ日本!全国行動委員会」という市民団体である。代表の水島氏は「私たちは、同性愛の人たちを差別するつもりはない」としながらも、「こういったもの(パートナーシップ条例を施行)を行っていこうという行政の流れに対して、絶対に反対する」と声を張り上げた。
「頑張れ日本!全国行動委員会」は、2010年2月22日に設立され、当初の代表には元航空幕僚長の田母神俊雄氏が就任している。この結成式には、現首相の安倍晋三氏を始め、現内閣の閣僚が複数出席していた。 デモに先立つ3月8日の産経新聞では、NHK経営委員の長谷川三千子氏が、渋谷区の条例導入に難色を示した。長谷川氏は「忘れてならないのは、人間も生物なのだということ。<中略>われわれもまた雄と雌とが一緒にならないと次の世代を生み出せない生物なのだということ。そして、次の世代が生み出せなければ、人類はたちまち絶滅する。この生物としての宿命を制度化したものが結婚制度であると私は思う。それを考えると、同性婚とはまさに生物5億年の歴史に逆らう試みといえるでしょう」と述べた。
国会からも、渋谷区の条例案をけん制する動きがでてきている。自民・公明・民主などの超党派の有志による、LGBT(性的少数派)問題を考える国会議員連盟が発足し、17日に初会合を開く。渋谷区のパートナーシップ条例について、議論するものとみられる。 同条例案に対し、憲法違反だとする自民党執行部と、憲法に抵触しないとする民主党執行部で対立が起こっている。
両党は、憲法24条の「婚姻は、両性の合意に基いて成立し」という文言を巡り、産経新聞によると自民党の馳氏は、「憲法がいう『両性』とは異性のことだ。条例案は憲法に明確に反する」と述べ、民主党政調会長の細野氏は、「『両性の合意』とは、親に強制的に結婚させられるということではなく、個人の意思を尊重するという趣旨だ」とそれぞれの見解を示した。
これらの動きに対し、国民の意見は冷静だ。先月、保坂展人区長が「(同性パートナーシップ制度の導入に関して)具体的に答えを出すべく準備している」と発言した東京都世田谷区。昨年、同区が行った「男女共同参画に関する意識・実態調査」では、「性的マイノリティー(性的少数者)という言葉を知っていますか」という質問に全体の70%が知っていると答え、「性的マイノリティーの方々の人権を守る啓発や施策について必要と思いますか」という質問に「必要」と回答した人は、70%近くに達した(女性74.4% 男性63.3%)。
海外でも、1990年代から同性婚の制度が導入され始め、2000年代には、オランダやベルギーで同性婚が実現している。2月27日付の毎日新聞によると、「国際NGO「ILGA(イルガ)」などによると、何らかの制度で同性カップルを認めているのは、欧州や北南米など32カ国と47地域(2014年5月現在)」となっている。 新しい動きに反発が出るのは、常だ。いたずらに対立するのではなく、幅広い議論の下でコンセンサスを形成していくのが民主主義のルールだろう。