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新型コロナ流行によるCO2排出量大幅減を生かせるか

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【緑の最前線(81)】新型コロナ以上に深刻な気候変動危機 「元の日常」への回帰は、悪手

公開日: 2020/06/09 (ワールド)

CC BY-SA CC BY-SA /peggydavis66

三橋 規宏:緑の最前線 (経済・環境ジャーナリスト、千葉商科大学名誉教授)

 コロナショックに追われ、気候変動危機対策が足踏みしている。

 温暖化対策に歯止めがかからず、気候変動が猛威を振るえば、その影響はコロナショックを上回る深刻な打撃を世界中の人々にもたらす可能性が大きい。

 新型コロナウイルスの感染拡大で世界の経済活動が停止状態になったため、2020年の温室効果ガスの減少は過去最大になりそうだ。

 IEA(国際エネルギー機関)の最近の見通しによると、今年の世界の二酸化炭素(CO2)排出量は前年比8%(約26億トン)減少すると予測している。リーマン・ショック後の09年の約6倍の削減である。英国に拠点を置く気候変動分析機関、「カーボン・ブリーフ」も5.5%削減と推計している。

 CO2の大量排出国である中国、米国、インドだけではなく、日本を含めた主要先進国の大部分の国で経済活動が止まり、今年の世界経済はマイナスに転落しそうだ。IMF(国際通貨基金)はコロナショックが猛威を振るう4月中旬、20年の世界経済見通しを発表した。

 前回、1月中旬発表した見通しでは、世界全体の経済成長率を3.3%とプラス成長を予測していたが、今回は3%減と6.3ポイントも下方修正した。

 同様に、米国5.9%減(前回2%)、ユーロ圏7.5%減(同1.3%)日本5.2%減(同0.7%)などとなっている。中国は1.2%でかろうじてプラス成長を保ったが、前回予測6%と比べれば、4.8ポイントもの下方修正である。

 世界の経済活動がここまで低迷すれば、石炭、石油、天然ガスなどの化石燃料の消費も抑えられる。当然CO2の排出量も減少する。大気汚染に悩む中国やインドではこの数ヶ月、大気が澄み青空が見える日が多くなったそうだ。

 皮肉なことにコロナショックは結果としてCO2の大幅削減に貢献したことになるが、安心は禁物だ。

 コロナ禍を乗り越えた後、各国が本格的な経済再開に乗り出すことになるが、その際これまでと同じように石炭などの化石燃料をふんだんに使い、「イケイケドンドン型」の経済回復を目指せば、CO2の排出が急増し「元の木阿弥」に戻ってしまう。リーマン・ショック後の急激な景気刺激策があっというまにCO2排出量を増やしてしまった失敗を繰り返してはいけない。

 コロナショックがもたらしたCO2削減効果を「一時的な現象」で終わらせないためには、以前とは違った新しい経済発展パターンを追求しなければならない。

 目指すべき方向は脱化石燃料を柱とした経済発展である。パリ協定によれば、気候変動を安定化させるためには産業革命以前と比べ気温上昇を今世紀末までに「2度未満、できれば1.5度」以下にすることが必要だが、現状では3度以上も上昇してしまいそうだ。

 温暖化対策に熱心なEU(欧州連合)では域内の温室効果ガスの排出を2050年までに実質ゼロ(90年比)にする目標を掲げており、途中の30年までに40%削減を掲げている。これに対し日本の削減目標は30年26%削減(2013年比)、50年には80%減を掲げEUと比べ見劣りが著しい。

 EUと比べ、日本の取り組みが見劣りするのは石炭火力への依存が過大なためだ。エネルギー白書(2019年)によると、日本の発電に占める化石燃料の割合は石炭32.3%、LNG39.8% ,石油等8.7%、合わせると8割を占める。

 特に石炭火力はCO2を大量に排出するため、2050年までに全廃する必要があるとパリ協定は指摘している。EUが2030年までに石炭火力を全廃する目標を掲げる中で、同年の日本の火力発電比は26%と断然高く、50年でも全廃を避けている。

 日本が石炭火力にこだわるのは発電コストが安く、豊富に存在する石炭を戦後日本のエネルギー政策の中心に据えてきたためだ。だが戦後75年を経て、事情は大きく変わってきた。

 急速な技術革新によっていまや発電コストは太陽光や風力などの再生可能エネルギーの方が安くなった。一方、温暖化の弊害が際立ってきた。そのため、化石燃料の中で最もCO2排出量の大きい石炭火力をまず全廃しようという機運が国際的に強まっている。

 この国際的なうねりは日本のビジネス社会にも大きな影響を与え始めている。その象徴がメガバンクの投融資廃止の動きだ。

 昨年から今年に欠けて、三菱UFJFG,みずほフィナンシャルグループ、三井住友FGが相次ぎ石炭火力への新規投融資を停止すると発表した。丸紅など一部商社も石炭火力から手を引き始めた。

 日本の石炭火力は国内、輸出両面から推進されている。このうち、輸出については税金から支出される公的支援が前提になっている。

 小泉進次郎環境相の肝いりで造られた有識者検討会は先月、この問題を含め石炭火力発電の現状を整理した報告書まとめた。検討会は「相手国の脱炭素化という視点をもって、その解決策を提供していくものに転換していくことが重要」とこれから日本が進むべき方向を指摘している。

 この報告書の精神が経産省内閣と言われる安倍政権の下でこれまで通り無視されるのか、国際的に批判の強い石炭火力政策転換の一歩となるかは不明だが、重要な問題提起になることは確かだ。

 コロナ禍後の景気対策は、脱炭素原則を旗印にまず石炭火力全廃のロードマップ作成からはじめなくてはならない。それに沿って多様な再生可能エネルギーの開発、推進、地産地消型のエネルギー供給体制の整備、新型の公共投資として日本列島全域をつなぐ頑丈で許容量の大きい送配電網の構築、大小多様な蓄電池および水素エネルギーの開発普及などに取り組むべきだろう。

 コロナ禍後の経済が、これまでとは異なり、環境を軸に展開すれば、新規需要が次々と生まれ、様々な技術革新を引き起こし、脱炭素化を加速させ経済の活性化を促すことが可能になるだろう。
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三橋 規宏:緑の最前線(経済・環境ジャーナリスト、千葉商科大学名誉教授)
1940年生まれ。64年慶応義塾大学経済学部卒業、日本経済新聞社入社。ロンドン支局長、日経ビジネス編集長、科学技術部長、論説副主幹、千葉商科大学政策情報学部教授、中央環境審議会委員、環境を考える経済人の会21(B-LIFE21)事務局長等を歴任。現在千葉商大学名誉教授、環境・経済ジャーナリスト。主著は「新・日本経済入門」(日本経済新聞出版社)、「ゼミナール日本経済入門」(同)、「環境経済入門4版」(日経文庫)、「環境再生と日本経済」(岩波新書)、「日本経済復活、最後のチャンス」(朝日新書)、「サステナビリティ経営」(講談社)など多数。
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