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「こんなときだからこそ我々の出番」

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「わが経営」を語る 川本恭治城南信用金庫理事長①

公開日: 2020/09/17 (ビジネス)

撮影・中村豊 撮影・中村豊

森 一夫 (経済ジャーナリスト、元日経新聞論説副主幹)

 新型コロナウイルス対策によって経済が冷え込み、中小企業の経営はとりわけ厳しい。東京都と神奈川県東部を営業地域とする城南信用金庫(東京都品川区)は今、こうした地域の中小企業の支援に全力を挙げている。拠り所は公益重視の伝統の経営理念で、全国の信金との連携強化にも積極的である。「今こそ我々信用金庫の出番」と言う川本恭治理事長(58)に、現在の取り組みと同金庫の経営について聞いた。(聞き手は森一夫)

 ――いわゆる新型ウイルスの第2波は峠を越したようですが、陽性患者は絶えず、経済活動は依然として低調です。実際に接する中小企業はどんな状況ですか。

 あらゆる業種の皆さんが大変困っているというのが現状です。緊急事態宣言でまず直撃を受けたのは、街の飲食店や小売店です。製造業の方々は当初、受注残があったので、いきなり売り上げが無くなる飲食店のようなことはありませんでした。しかし緊急事態宣言後、受注残が尽きると、新たな受注が無いので、今は製造業も含めて、皆さんお困りです。

 こんなところまでがと思うのは、例えばお寺です。先日、あるお寺のご住職とお話したら、お葬式が無い、お参りも来ないと言うのです。お布施が入りませんから、お寺さんの収入が半分とか3分の1に減ってしまう。お盆には檀家を回るのですが、来ないでくれと言われる。

 それでリモートでやるそうです。ご住職が本堂でお経をあげて檀家に配信するのですが、お布施をいただけているのでしょうか。2月は例年、インフルエンザの流行などもあって亡くなる方が多いそうです。しかし今年はコロナで、皆さん、用心してマスクや手洗いを励行するなど健康に気をつけたので、亡くなる方がほとんどなくて葬式も減った。

 結構なことなのですが、葬儀屋さんも大変なんです。今はお通夜をしない、本葬も家族だけでというので、売上激減だそうです。花屋さんや、香典返しの品物の業者さんにも甚大な影響がある。夏祭りや秋祭りも軒並み中止で、露店を出す方々も上がったりです。

 このように隅々まで負の連鎖が及んでいるのが、街の現状です。

 ――年末、新年にかけて。経済の見通しはいかがですか。L字型なのかV字型回復なのか。

 いや、当分、回復は難しいのではないですか。コロナの感染はゼロにならないでしょうし、冬場にぶり返す恐れもある。このままでは事業を続けられないと思っている中小企業の方は一杯います。ですが従業員をどうするか。事務所を閉めようにも、賃貸契約書を見ると半年前に言わなくてはならないので、半年分の家賃を払う必要がある。

 続けるにも止めるにも、お金が要るので、にっちもさっちもいかない方がたくさんいます。事業承継で誰かが引き受けてくれればいいのですけど、どこも人様の事業を引き取る余裕はありません。今まで聞いたのは1件だけです。技術が優れていて素晴らしい商品を持っているので、親会社のような大手企業が従業員ごと買ってくれたというケースです。

 それでも表面上、落ち着いて見えるのは、公的なものも含めて、融資がひとわたり行われて、ひとまず資金繰りがついているからです。

 ――コロナ対策で、5月から国や東京都による民間金融機関でも無利子・無担保で融資できる制度ができましたね。

 それもあって4月から8月末までの5カ月間で、融資が1000億円も純増になりました。これは城南始まって以来のことです。月間では8月がピークで前年と比べ9倍くらい融資しました。

 新規のお客様がすごく増えました。多い支店では100件くらい新規の方が来られて、これもかつてないことです。理由は3つあって、1つは、付き合っていたメガバンクに断られた。

 もう1つは申し込みが殺到していて支払日に間に合わないため。

 あと1つは売り上げが大幅に落ち込み初めて借り入れをする。こうした事情で、「城南さん、何とかしてくれませんか」となったわけです。

 ――新規の顧客も含めて融資の申し込みに、積極的に応じてきたのですね。

 もちろん、そうです。我々信用金庫は地域金融機関ですから、地域の皆さんとともに生きていくのが本来のあり方で、お困りの方には全力で支援させていただく方針です。それで今まで付き合ってきた金融機関に断られて、何とか城南でという方が多いのだと思います。我々としては非常にうれしいことなのです。

 ただ業況が回復しないので、中小企業の方は1回目の融資金を使い果たすと、2度目の融資を申し込まなければならなくなります。私どもではまだないのですが、暮れぐらいからそういうお話が出てくるのではないかと見ています。

 ――国や都による保証がつく融資は。

 それはノーリスクです。問題は公的なものが終った後です。今度は自らリスクを取ってお貸しして、お客様に何かあったらロスになる融資の申し込みが来ると思います。これにどう対応するかが、今後いろんな金融機関が突き付けられる問題になります。

 では城南信用金庫はどうするのかに答えますと、こういう時代の今こそ我々の出番なのです。なぜそう考えるのか。我々には偉大なる先人がいるからです。
 <次回に続く。原則木曜日に掲載します>
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森 一夫(経済ジャーナリスト、元日経新聞論説副主幹)
1950年東京都生まれ。72年早稲田大学政経学部卒。日本経済新聞社入社、産業部、日経BP社日経ビジネス副編集長、編集委員兼論説委員、コロンビア大学東アジア研究所、日本経済経営研究所客員研究員、特別編集委員兼論説委員を歴任。著書に「日本の経営」(日経文庫)、「中村邦夫『幸之助神話』を壊した男」(日経ビジネス人文庫)など。
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