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「安かろう悪かろうは嫌なんです」

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「わが経営」を語る 市江正彦スカイマーク社長①

公開日: 2019/11/07 (ビジネス)

撮影・中村豊 撮影・中村豊

 スカイマークは4年前の経営破たんから順調に立ち直り、このほど東京証券取引所に再上場を申請し、11月29日より初の国際定期便となる成田―サイパン線の運航を開始する。同社は大手航空会社とも格安航空会社(LCC)とも異なる「第3極」の路線を歩む。生存競争が厳しい航空業界でどのように経営を再建して、今後の成長をどう図るのか、市江正彦社長に聞いた。(聞き手は森一夫)

 ――スカイマークが民事再生法に基づく新体制に移行した2014年9月に、日本政策投資銀行の取締役常務執行役員だった市江さんは社長に就任しました。以来4年余り着実に経営を立て直して、前3月期は売上高882億円、営業利益72億円の業績を上げ、再上場の目処もたちました。好調に推移した要因は何ですか。

 振り返ると、運がよかったというのが一番ですね。この4年間、基本的に景気がよかったでしょう。最近、米中対立で雲行きが怪しくなってきましたが、企業業績が堅調だったので、企業は出張などで経費をつかうし社員への分配もそれなりありました。

 高齢化などで国内の旅行需要は減ると言われながら、結構いいんですよ。国内航空の旅客数は全体で前年比2%程度増えています。やはり運のよし悪しはありますよ。

 とはいえ、私が就任した当時、スカイマークの業績はかなり落ち込んでいました。民事再生法の適用を申請した前年度のお客様の搭乗率は60%台でした。

 ――搭乗率は何%が損益分岐点になるのですか。

 私が社長に就任した2015年度は営業利益が15億円で、搭乗率は76%でした。だから損益分岐点は75%近辺になりますね。客単価の高い大手ならば、たぶん70%あれば黒字でしょう。

 60%台の搭乗率では赤字なので、株式の16.5%を持ったANAホールディングスさんとのコードシェア(共同運航)を検討することになっていたんです。要するに価格は安くなるが、席の卸売りもやって補おうとしたのです。

しかし次の16年度には84%になりましたから、自社だけでやれるようになりました。でも当初は、そんなに乗っていただけるかなと心配でした。

 ――運がよかっただけではないでしょう。

 スカイマークは割といい路線を持っているなというのが最初の印象でした。東京の羽田空港から飛ぶ路線が6割くらいあったので、どうして赤字になるのだろうと思ったくらいです。

 ところが当時、ボーイング737が26機あって、2機が動かせない状態になっていたんです。「単に書類整備の問題ですから大丈夫です」と言われたのですが、簡単ではありませんでした。

 年1回必要な「耐空証明」が取れなかったためです。自動車の車検みたいなもので、整備状況を証明する記録が不備だと、検査が最初からやり直しになって大変なんです。最終的にはANAさんから出向した人たちの助けで解決できたのですが、時間がかかりました。

 飛行機のやりくりが難しく、年が明けて運休をだす羽目になりました。社員はお客様に電話して、他の便への振り替えや他社への変更をお願いしなければなりませんが、すんなりとはいきません。代理店からも「民事再生でよくなっているなんて、嘘っぱちじゃないか」と散々です。

 ――サービス業のつらいところですね。

 痛感しましたよ。信用を取り戻すどころではないし、後ろ向きの仕事で社員は疲弊します。そこで4月から減便しました。1日130便くらいあったのを112~113便にしたのです。ようやくダイヤが正常化し始めましたが、それでよしとせず、さらに一歩進めて定時運航に努めることにしました。

 羽田空港をせっかく使っているのですから、ビジネスで利用するたくさんのお客様の要求に堪えるようにしたいという狙いもありました。ビジネス客は定時運航を重視します。また出張はぎりぎりまで日程が決まらない場合が多いので、相対的に値段の高い出発間際のチケットを買っていただけます。

 ――定時運航は大事なセールスポイントですね。

 私は「安かろう悪かろう」というのがすごく嫌なんです。「安いけど、どうせ遅れるんだろう」というお客様の間にあったスカイマークへの悪いイメージを払しょくしなければと思いました。

 実は社員もみんな時間通り行きたいのです。遅れれば、お客様だけでなく、社内でも「お客さんが待っているのだから早くしてくれ」と苦情の声が上がります。

 しかし「やりたいんです」と言っても、各部門が一丸となって取り組まなければ定時運航は難しいんです。ならば、よしっ、本部をつくって推進しよう、本部長にはオレがなると決めて、「定時運航率95%」を当社の「第1目標」に掲げました。

 ――今や定時運航率では業界トップだそうですね。

 遅れても15分以内ならば「定時」という定義で、それを全体の便数で割った比率が定時運航率です。「95%」ならば絶対に1位だろうと目標にしたわけで、18年度は93.9%で2年連続して国内主要航空会社でトップの座を占めました

 スカイマークは、悪い時は定時運航率が80%くらいでした。見違えるように向上したのはチームワークの賜物で、これがうまく回りだして、会社は大きく変わりました。

(次回は来週14日掲載の予定です)

森 一夫:「わが経営」を語る (経済ジャーナリスト、元日経新聞論説副主幹)

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森 一夫:「わが経営」を語る(経済ジャーナリスト、元日経新聞論説副主幹)
1950年東京都生まれ。72年早稲田大学政経学部卒。日本経済新聞社入社、産業部、日経BP社日経ビジネス副編集長、編集委員兼論説委員、コロンビア大学東アジア研究所、日本経済経営研究所客員研究員、特別編集委員兼論説委員を歴任。著書に「日本の経営」(日経文庫)、「中村邦夫『幸之助神話』を壊した男」(日経ビジネス人文庫)など。
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