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「収益になる生活習慣作りがなりわいです」

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「わが経営」を語る 掬川正純ライオン社長①

公開日: 2021/03/15 (ビジネス)

撮影・中村豊 撮影・中村豊

 オーラルケア(口腔衛生)製品で国内首位のライオンは、「日本生まれ、アジア育ちの世界企業」を目指している。10年前とは見違えるような業績の企業になり、新型コロナウイルスの流行もヘルスケア製品の市場拡大という形でプラスになっている。創業期から生活習慣改善の啓蒙に努め、最近は社員に副業を奨励するなど働きがい改革にも積極的である。勢いを増すライオンのこれからを、3年目の任期に入った掬川正純(きくかわ・まさずみ)社長に聞いた。(聞き手は森一夫)

 ――2020年⒓月期決算でのライオンの業績は増収増益で、売上高3554億円、営業利益441億円になり、営業利益率は12.4%でした。ずいぶん変わりましたね。

 この10年、利益率が飛躍的に高まったので、ある意味で筋肉質の会社になってきました。私たちとしては、もっと変わらないといけないと思っています。

 ――前期の新型コロナウイルスの影響はいかがでしたか。

 手洗いの習慣がより強まり、前期はハンドソープや消毒液などがよく売れました。在宅時間が増えて巣ごもり需要の高まりで、食器を洗う台所用洗剤やクッキングペーパーの売り上げも、通常プラスマイナス2%の範囲で推移していたのが、2ケタの%で増えました。

 オーラルケアの製品は、人口が減っても単価が上がっていたので、年に2、3%伸びていましたが、歯ブラシは景気が悪くなると、影響が如実に出ます。昨年も売り上げは前年の90%台に落ちました。前年割れはリーマンショック以来です。

 私どもは、歯ブラシを1カ月に1回替えてくださいとお願いしています。しかし我慢すればもう少し使えますから、買い替え頻度が下がったようです。

 ――こうした傾向は今年、どうなりますか。

 昨年はよい物と悪い物とのコントラストがかなりはっきりしていましたが、今年はそれが弱まっていくと思います。ハンドソープの市場規模は、2,020年が19年比1.8倍くらいに拡大しましたが、今年は19年比1.6倍くらいになると見ています。少し減っても、高い水準で落ち着くでしょう。

 手洗いなどの衛生習慣はこれからも、以前より高いレベルで定着すると思います。我々も定着を図るために、無駄なく洗う方法などの情報発信や、よりイージーな手洗いの仕方を提案します。

 ――イージーな手洗い?

 ええ、手をかざせば泡状のハンドソープが出てくるオートディスペンサーを、2月からオンラインで先行販売しており、5月下旬から一般の店頭で発売する予定です。家庭向けの小型のサイズで、普通の詰め替え容器をセットすれば使えます。非接触型は感染予防上、非常によいと思います。

 ――ライオンは自社を「生活習慣メーカー」と定義しているそうですね。

 はい、私たちの事業領域は健康の分野ですが、医師ではないので、何で貢献するのかといえば、生活習慣作りだと思っています。ライオンは130年の歴史で、日本人の衛生に資する生活習慣を作ってきたと自負しています。

 歯磨き一つとっても、物を売る事業と並行して、正しい歯磨きを啓蒙する活動を先駆的に進めてきた歴史があります。1日2回以上歯を磨く人の割合は、直近50年間で約20%から約80%まで約4倍に高まりました。私たちだけの力によるものではありませんが、かなりお役に立っていると思います。

 大事な点は、この50年で、歯磨き剤の市場規模もやはり約4倍に拡大したことです。私たちは、慈善事業としてよい生活習慣の浸透に努めているわけではありません。健康によい生活習慣を広めれば、社会のためになると同時に、結果的に私たちの事業収益につながります。それが私たちのなりわいなのです。

 ――最近、歯磨き剤も値段が高めの物が増えました。

 昔は150円から300円くらいまでの価格帯の物がほとんどでしたが、今は1500円くらいまで広がりました。

 注目されるのは特にシニア層ですね。こうした分野にお金をつかっていただけるようになったことが、大きく影響しています。日本は人口が既に減少局面にありますが、50歳代以上のオーラルケアに関する消費支出はここ20年増え続けています。

 これは重要なモデルとして、今後、事業を営む上で、高齢化が進む中国や韓国などにも適用できるのではないかと考えています。高齢化は私たちにはチャンスです。

 ――ライオンは先日、新たに事業構想「Vision2030」を発表して、2030年にアジア13位から「アジアトップ10入り」を果たして、「日本生まれ、アジア育ちの世界企業」を目指すそうですね。

 昨年で「Vision2020」が終わり、次の10年を考えたとき、成長力に課題があると思ったのです。過去10年で筋肉質の会社になりましたが、売り上げの伸びが前半は年率平均4%程度だったのが、後半1%台に低下しているのです。

 そこで次の10年は、売り上げ成長に経営の軸足を移そう、それには我々の貢献領域を広げることだというストーリーを描いたのです。

 事業領域を、物を売るだけでなく情報を活用したビジネスも手掛け、さらに今までの日本中心からアジアにもっと広げていこうと考えたわけです。

 その結果としてアジアトップ10に入ろう。生活習慣作りに貢献すると同時に、規模的にも存在感のある事業でありたい。それが経営効率を高めて、収益性の向上につながります。これからの10年、事業の成長を目指します。

 <次回に続く。原則、毎週月曜日に掲載します>

森 一夫 (経済ジャーナリスト、元日経新聞論説副主幹)

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森 一夫(経済ジャーナリスト、元日経新聞論説副主幹)
1950年東京都生まれ。72年早稲田大学政経学部卒。日本経済新聞社入社、産業部、日経BP社日経ビジネス副編集長、編集委員兼論説委員、コロンビア大学東アジア研究所、日本経済経営研究所客員研究員、特別編集委員兼論説委員を歴任。著書に「日本の経営」(日経文庫)、「中村邦夫『幸之助神話』を壊した男」(日経ビジネス人文庫)など。
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