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元同僚証言、「売るネタ」はいくらでもある

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【アーツ証券の闇・第二部㊥ 】投資側はそれが真実か調べられない

公開日: 2016/02/17 (ビジネス)

Reuters Reuters

谷川 年次 (経済ジャーナリスト)

 「(投資家に売る)ネタはいくらでもある」。

 こう語るのは、200億円を超える投資資金が消失したレセプト(診療報酬請求権)債を販売していたアーツ証券の川崎正社長らの独系コメルツ証券東京支店時代の元同僚だ。

 アーツ証券が数年前からレセプト債の販売に注力していることは聞いていた。販売資料を見た瞬間、「いつか終わるな」と直感的に思ったという。

 ネタとは、金融商品を販売するにあたり、顧客に説明し納得させるストーリー。レセプト債のケースでいうと、ファンドが医療機関から診療報酬の請求権を安く買い取り、後で受け取る診療報酬との差額で利益を得る仕組みだ。

 診療報酬は請求から支払いまで2、3カ月のタイムラグがあり、その間の資金が必要な医療機関が請求権をファンドに売る。収益が確実に見込める診療報酬を受け取る権利(債権)を裏付けとする債券だから、安全というものだ。

 ネタが真実かどうかは関係ない。投資家側に真実かどうか確かめる術がないからだ。診療報酬、航空機リース、中国の未公開株、弁護士報酬等々なんだっていい。

 投資家にきちんと説明できて納得させ、信じさせることができるかどうかが問われる。販売員はネタを信じない人には早々に見切りをつけ、別の信じる人(カモ)を探すだけだ。

 アーツ証券は2003年8月、コメルツ証券東京支店出身者らが設立した。金融界では、ITバブルの崩壊で外資系証券の本国が日本ビジネスの縮小・撤退が相次いでいた。

 コメルツ証券は大手米系証券の手掛けないニッチビジネスを手掛けていた。つまり「ネタ」を考え、富裕層の個人や企業などに金融商品を販売するのが強みであった。 

 元同僚によれば、レセプト債の販売はコメルツ証券のときも証券化の対象として検討した。しかし、医療機関によって請求の実務がバラバラで、安定的に債権の買い取りが難しいと判断し、商品化できなかったという。

 結果的には、川崎氏らがアーツ証券に移り、「ネタ」として実現した。同証券は04年以降、「国債に近い知る人ぞ知る商品」「配当原資の受け取りは滞ったことがない」など債券の安全性を強調し、営業を展開した。

 6つの別の証券会社にも販売資料を提供し、販売網を拡大していた。6社は一部にコメルツ時代に開拓していた地場証券が含まれているという。

 投資家向けの勉強会資料には、ファンドの収益原資の診療報酬の回収について「延滞率ゼロ%」「デフォルト(債務不履行)発生率ゼロ%」などと記載されていた。投資家側も「まさかそれが嘘とは」思わないし、それが真実か調べるまでは通常しない。

 ただ、医療関係者によると、「請求すれば100%報酬が入ってくる債権をディスカウントしてまで売るのは通常考えにくい。よほど経営状態が良好ではない病院くらい。そんな病院ばかりからどうやって安定的に債権を買い取ることができるのか理解できない。それが医療界の常識だろう」という。

 結果として、金融商品被害の歴史は繰り返されている。1990年代にはクレスベール証券東京支店の販売していた米プリンストン債、2012年にはAIJ投資顧問のAIMグローバルファンド、13年にはMRIインターナショナルのMARS。今回のアーツ証券のレセプト債もこの系譜に連なるといえるだろう。


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谷川 年次(経済ジャーナリスト)
大手新聞記者などを経てフリーに。記者歴は約20年のベテラン。
企業不正や調査に関心。国会、金融庁、厚労省、年金、金融、資産運用などに詳しい。
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