• tw
  • mail

カテゴリー

 ニュースカテゴリー

  • TOP
  • 独自記事
  • IT/メディア
  • ビジネス
  • ソサエティ
  • スポーツ/芸術
  • マーケット
  • ワールド
  • 政治
  • 気象/科学
  • コロナ(国内)
  • コロナ(国外)
  • ニュース一覧

原油暴落、連鎖破綻に怯える米シェール業界

あとで読む

【エネから見える世界】ホワイティングに続いて、テキサスのDODも破産申請

公開日: 2020/05/01 (マーケット, ビジネス)

Reuters Reuters

阿部 直哉 (Capitol Intelligence Group 東京支局長)

 原油暴落を受けて米エネルギー産業界が戦々恐々となっている。4月1日、かつてノース・ダコタ州バッケン地域で最大のシェールオイル生産業者だったホワイティングが米連邦破産法第11条(民事再生法に相当)の申請を適用。原油安の局面で上場企業の破綻が初めてとなったケースを受けて、石油業界では「次に破綻する企業、買収される企業はどこかの話題で持ち切り」(米国のエネルギー・アナリスト)という。メディアなどでは「破綻予備軍」の具体的な社名が挙がるなど、連鎖倒産が現実味を帯びてきた。

 今年3月に開催された石油輸出国機構(OPEC)や非加盟国のロシアなどで構成されるOPECプラスで、減産協議が決裂し、サウジアラビアなどが増産方針に転換したことに加え、新型コロナウイルスの感染拡大でパンデミック(感染症の世界的な大流行)を抑える対策で経済活動が停滞し、エネルギー需要が激減した。4月20日のニューヨーク原油先物市場では、代表的な指標となるウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)の当限(5月限)が暴落し、終値ベースで前週末比55.90ドル安の1バレル=マイナス37.63ドルを付けた。WTI価格がマイナスとなるのは、ニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)にWTI原油先物が上場された1983年以来、初めてのことだ。

 全米で石油・天然ガス生産量の5分の1を占めるテキサス州でも、原油暴落の影響が顕著となっている。『The Midland Reporter』(MRT)によると、4月第4週の1週間だけで、主要生産地であるパーミアン盆地でシェール開発に関わる企業の6割強が、リグ(石油掘削装置)の稼働停止に追い込まれているという。

 人員整理も本格化し始めた。The Texas Workforce Commission(TWC=テキサス労働力委員会)はこのほど、同州において石油&天然ガス業界に従事する労働者のレイオフ(一時解雇)状況(4月24日現在)を公表した=以下のグラフを参照。この時点のレイオフでダントツなのが「NexTier Oilfield Solutions」だ。すでに1,000人を超えている。


 また、石油掘削企業だけにとどまらず、工業用シリカ(酸化シリコン)や砂プロパント(地層の亀裂内部に埋め込む支持材)の生産を手がける油田サービス関連企業も含まれている。U.S.SilicaやBlack Mountain Sandなどだ。フラッキング(水圧破砕)工法が主流のシェール開発では大量の砂が必要となる。砂は水と化学品を混合する際に使用される。

 米国でシェール開発が活況となった2014年春、原油価格の上昇にともない、砂生産・加工企業の株価は右肩上がりを続けた。ニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場するSilicaの株価は当時、同年5月前半に45ドル近辺で推移していたが、原油高にともない、8月11日には60ドル半ばまで上昇した。飛ぶ鳥を落とす勢いだったSilicaの株価は現在、1.45ドルの水準まで下げ、危険水域に入っている。

 TWCが公表したリストには、Baker HughesやHalliburtonといった油田サービス大手も含まれる。Halliburtonは15人のレイオフにとどまっている。ただ、「巨大企業にとり、15人はリストラのうちに入らないだろう。新型ウイルス感染の収束見通しが不透明なため、一段の原油安水準が続けば、リストラされる従業員は一気に増加する」(国内のエコノミスト)といった声も聞かれる。

 ところで、米エネルギー業界ではいま、次の破綻企業、買収されるシェール関連企業にかかわる話題で持ち切りという。前述の『MRT』報道によると、最近発表されたレポートで、米国でシェール開発事業を展開する、以下の企業が予備軍として名前が挙がっているそうだ。

 それによると、Centennial Resource Development、Energean Oil&Gas、Jagged Peak Energy、Laredo Petroreum、Matador Resouces、Persley Energyのほか、WPX EnergyやCallon Petroreumも加わるとしている。

 また、Seaport Global Securitiesは、Resolute Energy、Abraxas Petroreum、Halcon Resources、Contango Oil&Gasを付け加えた。

 これらのうち、Contennial、Callon、Abraxasの株価はいずれも1ドルを割り込んでいる(4月27日現在)。筆者は3社に経営状況を問い合わせたが、いずれからも回答を得られていない。

 今後数年内に米国のシェール関連企業全体の債務(300億ドル超)が満期を迎える。米独立系シェール企業の多くが、破綻したホワイティングを連想し、「明日は我が身」と危機感を募らせているようだ。

 「米国の偉大な石油・ガス産業を落胆させない」-トランプ米大統領は4月21日、エネルギー産業への資金支援を急ぐため、ブルイエット・エネルギー長官やムニューシン財務長官に指示したことを明らかにした。

 新型肺炎の感染拡大に対する収束のメドが見通せず、エネルギー需要の長期的な低迷で、石油の供給過剰状態が続くとの見方も根強いなか、目先の原油相場の反転を予測する専門家はいない。

 こうしたなか、シェール関連企業の新たな経営破綻に関するニュースが飛び込んできた。テキサス州ケイティに本社を置くDiamond Offshore Drilling(DOD)が4月27日、米連邦破産法第11条を申請したという。

 DODは、上記のリストに社名が挙がっていない。「どのシェール企業がいつ破綻してもおかしくないということ。連鎖倒産の始まりかもしれない」(前出の米国のエネルギー・アナリスト)。

 トランプ政権による支援策が米エネルギー産業の起死回生策となるか、予断を許さない。コロナウイルス感染防止の対策と同様、時間との闘いとなっている。待ったなしの状況だ。
続報リクエストマイリストに追加

以下の記事がお勧めです

  • 【エネから見える世界】 OPECプラス減産合意でも、原油価格反転は期待できず

  • 【エネから見える世界】 トランプのパリ協定離脱は不発、石炭会社の倒産バタバタ

  • 阿部 直哉のバックナンバー

  • 北朝鮮へのワクチン外交を期待

  • “習降李昇” 習近平の権力が弱まり、李克強が浮上しているのか? 

  • コロナワクチン 増え続ける副反応疑い死 

  • IPEFは日本の重荷ではないのか

  • プロフィール
  • 最近の投稿
avator
阿部 直哉(Capitol Intelligence Group 東京支局長)
1960年、東京生まれ。慶大卒。Bloomberg Newsの記者・エディターなどを経て、2020年7月からCapitol Intelligence Group (ワシントンD.C.)の東京支局長。1990年代に米シカゴに駐在。
著書に『コモディティ戦争―ニクソン・ショックから40年―』(藤原書店)、『ニュースでわかる「世界エネルギー事情」』(リム新書)など。
avator
阿部 直哉(Capitol Intelligence Group 東京支局長) の 最新の記事(全て見る)
  • 【エネから見える世界】バイデン勝利で拍車か -- 2020年9月15日
  • 【エネから見える世界】混迷のベラルーシ情勢が原油調達に影響 -- 2020年9月7日
  • 【エネから見える世界】欧州で広がる「グリーン水素」ビジネス -- 2020年8月14日
Tweet
LINEで送る

メニュー

    文字サイズ:

  • 小
  • 中
  • 大
ソクラとは 編集長プロフィール 利用案内 著作権について FAQ 利用規約 プライバシーポリシー 特定商取引法に基づく表示 メーキングソクラ お問い合わせ お知らせ一覧 コラムニストプロフィール

    文字サイズ:

  • 小
  • 中
  • 大
  • 一覧表示を切替
  • ソクラとは
  • 編集長プロフィール
  • 利用案内
  • 著作権について
  • メーキングソクラ
  • お知らせ一覧
  • FAQ
  • 利用規約
  • プライバシーポリシー
  • 特定商取引法に基づく表示
  • お問い合わせ
  • コラムニストプロフィール

Copyright © News Socra, Ltd. All rights reserved