SUBARU(スバル)は2021年9月2日、新型「レガシィ」の日本仕様車「レガシィアウトバック」の先行予約を開始した。
7代目となる新型レガシィは2019年に北米で発売しており、日本市場での発売は約2年遅れとなる。しかも、日本国内ではセダン(レガシィB4)の設定はなく、SUVのアウトバックのみだ。
どうして日本での発売が2年も遅れてしまうのか。日本の一般ユーザーには理解できないだろう。でも、クルマに詳しい多くのスバルファンは納得している。もはや今のレガシィは、かつてのレガシィではないからだ。
1989年に初代がデビューしたレガシィは、4代目まで日本で人気のあるクルマだった。自動車雑誌「カー・アンド・ドライバー」による一般読者の「好きなクルマ」の人気投票で、レガシィは1990年代に連続して1位に輝いた黄金期がある。それまでの日産スカイラインに代わり、クルマ好きに一番支持されるクルマだったのだ。
ところが2009年発売の5代目以降、レガシィの日本国内の人気は下火になっていく。その理由はレガシィが本国の日本市場ではなく、北米市場を向いてしまったからにほかならない。
スバルは北米市場の要望に応え、5代目のボディを大型化した。車幅は4代目の1730ミリから日本仕様で1780ミリに拡大。北米仕様と日本国内のアウトバックは1820ミリとなった。これでは道幅の狭い日本では使いにくい。
スバルはそれを承知の上で、5代目以降のレガシィを北米ユーザーの嗜好に合わせた。大型化したレガシィは大味となり、スバルが作る「アメリカ車」となった。
それはスバルの売上高の約7割を北米市場が占める現実を考えれば、仕方ないことかもしれない。売上高に占める日本の割合は、もはや約25%にすぎないからだ(いずれも2021年4~6月期実績)。
事実、5代目以降のレガシィの国内販売は振るわなかった。かつてレガシィの看板は「ツーリングワゴン」と呼ぶステーションワゴンだったが、2014年発売の6代目からツーリングワゴンは日本市場から消え、アウトバックとB4のみとなった。
スバルは5代目以降のレガシィが大型化し、日本国内で人気を失った反省から、2014年に国内専用の「レヴォーグ」を新設。歴代レガシィの中でも名車の誉が高い4代目とほぼ同サイズ、同コンセプトのツーリングワゴンを、インプレッサをベースに復活させた。
そのレヴォーグは日本市場で人気を博している。2020年発売の2代目は4代目レガシィと5代目インプレッサに続き、スバルにとって3回目の「日本カー・オブ・ザ・イヤー」を受賞したこともあり、販売は好調だ。
一方、6代目レガシィは2020年にB4の国内販売を終え、モデル末期の2021年はアウトバックだけとなっていた。毎年、販売が好調となる年度末の直近データ(2021年3月)で比較しても、レガシィアウトバックの国内販売台数はわずか147台にとどまり、レヴォーグの4892台と大差がついた。
スバルは年間の世界販売台数が100万台クラス(2022年3月期の予想は96万台)の中堅メーカーだ。しかし、近年は好調な北米市場に支えられて高収益が続き、営業利益率で業界トップクラスの8%を目指すなど鼻息が荒い。
それは主力の米国でマーケットシェアが2011年の2.09%から9年連続で上昇し、2020年には4.2%となっていることからも伺える。当面はシェア5%の獲得が目標という。
スバルにとって北米市場の果たす役割は大きく、レガシィは事実上、北米専用の「アメリカ車」となったわけだ。
アメリカンテイストの新型レガシィアウトバックが日本でレヴォーグほどの支持を得られるとは考えにくい。それでも、スバルが作った北米専用車を日本でも味わえると思えば、新型アウトバックを購入する価値はあるのかもしれない。
いずれにせよ、かつてスバルを代表する主力車だったレガシィが7代目となり、大きく変貌したのは間違いない。