トヨタ自動車が2020年4月に中国、9月に欧州で発売した電気自動車(EV)を日本でも限定販売することになった。レクサスブランドの「UX300e」で、2020年度は国内で135台限りという。
UX300eのリチウムイオンバッテリーの容量は54.4kWhで、1回の満充電で走ることができる航続距離は367キロ (WLTC モード)だ。ホンダが10月末に発売する初のEV「ホンダe」と、マツダが2021年1月に発売する初のEV「MX-30」は、いずれもバッテリー容量が35.5kWhとコンパクトで、航続距離も200キロ台と短い。
先輩格の日産自動車のリーフは最上級の「e+」が62kWh、458キロとバッテリー容量、航続距離ともに勝っており、UX300eは性能的にホンダ・マツダと日産の中間に位置する。
トヨタはレクサス公式ウェブサイトで10月22日から11月4日まで購入の申し込みを受け付け、抽選の結果、当選者に連絡するという。価格は標準仕様が580万円、上級仕様が635万円と高価だが、富裕層の応募が殺到するに違いない。
トヨタは「レクサスのEVとしての高い品質を追求したUX300eを通じて、電気自動車が持つ可能性やクルマの未来をお客様に体験していただきい」と話す。しかし、わずか135台の限定販売では、UX300eはトヨタが「レクサスブランドで一応EVを出した」というアリバイ作りに見えなくもない。UX300eにライバルメーカーを凌駕するような先進性はなく、トヨタが本気でEVを普及させるために開発したとは思えないからだ。
トヨタはハイブリッド(HV)カーの初代プリウスを発売する前年の1996年に「RAV4」のEVを発売した経緯がある。自動車メーカーとしては世界でもいち早くEVを開発したが、プリウス以降はEVよりも実用的なHVに注力してきた。
もちろんトヨタはEV開発を放置してきたわけではない。2010年には米テスラと業務提携で基本合意し、2012年にはテスラと共同開発した「RAV4EV」を米国で発売した。
米カリフォルニア州の排ガス規制に対応するため、トヨタはRAV4EVを2012年以降の3年間で約2600台販売する計画だった、計画達成前の2014年に生産を終了し、その後はテスラとの提携も解消した。
トヨタとしては、100%電池で走行するEVよりも、制御が複雑なHVやプラグ・イン・ハイブリッド(PHEV)を開発・量産する方が技術的に難しいとの自負がある。
電池とモーターを組み合わせることで、中国メーカーでも簡単に作れるEVだが、航続距離や充電時間など課題は多く、一般のユーザーの支持は得られないとの読みがトヨタにはあるのだろう。
少なくとも現状のリチウムイオン電池の性能では、EVに限界があるのは事実で、HVやPHEVが現実的な「解」であり、将来的には水素を燃料とする燃料電池車(FC)が勝るかもしれないとトヨタは考えているはずだ。
トヨタが久しぶりに日本市場で販売するEVだが、限定135台では話題づくりに過ぎない。残念ながら、今回もトヨタのEVに対する本気度は伺えなかった。