日産自動車は新型の電気自動車(EV)「アリア」の日本専用特別限定車を2021年6月4日に発表し、同日から予約の受け付けを始めた。
予約注文を受け付けるのは、リチウムイオンバッテリーの容量が66kWhの「B6」と91kWhの「B9」で、それぞれ2WD(二輪駆動)と4WD(四輪駆動)がある。このうち、最も早い納車はB6の2WDだが、「今冬」からになるという。それ以外のグレードの納車時期については明らかにしていない。
日産は2020年7月にアリアを発表し、当初は「日本での発売は2021年中頃を予定し、欧州、北米、中国では、2021年末までの発売を予定している」としていた。
今回、日本国内で特別限定車の予約を開始したが、発売時期が「今冬」と、当初予定より大幅に遅れることになった。日本以外の海外市場については「今後、予約注文を開始する」と述べるにとどめた。
日本専用の特別限定車と言っても、バッテリー容量やモーターの最高出力、0→100キロの加速性能、最高速度、航続距離(WLTCモードを前提とした社内測定値)は、20年7月に発表したデータと大きくは変わらない。バッテリー容量が発表時の65kWhから66kWh、90kWhから91kWhにわずかに増えた程度だ。
航続距離などの性能は20年の発表時と変わらなかった。最も航続距離が長いのはバッテリー容量91kWhの2WDモデルで最大610キロ。最も短いのは66kWhの4WDモデルで最大430キロだ。
最もパワフルで速いのは91kWhの4WDモデルで最高出力290kW、最大トルク600Nm、0→100キロ加速が5.1秒、最高速度が200キロだ。最高速度はともかく、0→100キロ加速はスポーツカー並みだ。
全国希望小売価格は最も安価な66kWhの2WDモデルで660万円、最も高いのが91kWhの4WDモデルで790万円となった。日産は標準グレードとなる66kWhの2WDモデル(660万円)の場合、「省庁や各自治体からの補助金を差し引いた実質購入価格は約500万円からとなる」と説明している。
日産の星野朝子執行役副社長は記者会見で「ひと踏みでみなさんを虜にしてしまう。速いです。スムーズです」と、アリアの魅力を語った。
当初は今夏とみられた発売時期が冬となったことについては、世界的な半導体不足の影響を挙げたほか、「世界初の技術を満載したクルマなので、一つ一つ丁寧にローンチ(発売の準備)をやっている最中だ」と述べるにとどまった。
アリアは日産がリーフに次ぐ第2弾のEVとして発売する世界戦略車で、世界市場では米テスラや中国の新興メーカーなどがライバルになる。日産としてはテスラのベストセラーカー「モデル3」と並ぶ高性能EVを世界で発売することで、日産の先進技術をアピールする狙いがあった。
それなのに今回、カタログモデルとせず、特別限定車として発売する理由は何なのか。コロナ禍による世界的な半導体不足は不可抗力とはいえ、量産できない特別な事情があるのではないかと勘ぐってしまう。
日産にとってアリアの発売が遅れるダメージは決して小さくないだろう。