トヨタ自動車が超小型の電気自動車(EV)「C+pod(シーポッド)」を2021年12月23日から、全国の個人ユーザー向けにリース販売を始めた。
C+podはトヨタが開発した2人乗りの近距離移動専用の超小型EVで、2020年12月25日から、一部の法人や地方自治体などに限定販売していた。今回、トヨタは「より多くのお客様に商品を提供する体制が整った」として、一般ユーザー向けにも販売する。ただし、リース販売に限り、「料金プランは取扱店によって異なる」という。
トヨタがC+podを「超小型EV」と称するのは、全長2490ミリ、全幅1290ミリ、全高1550ミリと、現行の軽自動車より一回り以上、小さいからだ。
乗車定員は2人で、通常の軽のように4人は乗れず、荷室も限られる。さらに最高速度は時速60キロで、高速道路は走れないなど、制約が大きい。
トヨタはもちろんそのデメリットを承知のうえで、「免許取り立ての独身若年層や運転に不安を感じる高齢者の方など、日常生活で少人数かつ近距離の移動が多い方に賢く使っていただける」と説明している。
高速道路を走れなくとも、このサイズの超小型EVは潜在的な需要があるようだ。出光興産も超小型EVの開発を進めており、2022年の発売を目指している。出光は専門メーカーと新会社を設立し、超小型ながらも4人乗りのEVとする計画だ。出光は超小型EV全体で年間100万台の需要を見込んでいる。
出光はこれまで岐阜県飛騨市、高山市、千葉県館山市、南房総市で超小型EVの実証実験を行い、地方都市では日々の買い物や子供の送迎などで「自転車や原付バイクに代わる安全な移動手段に対するニーズがあることがわかった」という。
地方では軽が生活の足として普及しているが、運転経験が浅いドライバーや高齢者など自動車を運転することに不安をもつ層があるという。この点はトヨタの狙いと同じだ。
トヨタとしては、従来型の軽のEV開発は完全子会社のダイハツ工業に任せ、自社は超小型EVを先行投入し、市場の反応を見るという戦略なのだろう。
C+podのリチウムイオンバッテリーの容量は9.06kWhと小さく、1回の満充電で走ることができる航続距離は150キロ(WLTCモード)と限定的だ。しかし、トヨタはこの航続距離があれば通勤や買い物など「日常生活では安心して使用できる」と説明している。
さらにC+podは日産リーフなど通常のEVであれば当たり前の急速充電にも対応していない。飽くまで家庭で100Vなら満充電まで約16時間、200Vなら同約5時間の普通充電を想定している。
果たして、ここまで割り切った超小型EVは国内で普及するのか。トヨタはハイブリッド(HV)、プラグインハイブリッド(PHV)、燃料電池車(FCV)、EVと電動化を全方位で進める世界でも数少ないメーカーだ。
超小型EVのコンセプトは日本だけでなく、急速なEVシフトが進む中国や欧州でも通用する可能性がある。それだけにトヨタの個人リース販売が本格化し、出光も参戦する2022年の行方が注目される。