中国の電気自動車(EV)メーカー「比亜迪(BYD)」がスポーツタイプ多目的車(SUV)の「ATTO 3(アットスリー)」を日本で2023年1月31日から440万円で発売することになった。BYDは36カ国・地域でEVを販売し、EVの世界販売台数で米テスラに次ぐ世界第2位の新興メーカーだ。果たして日本市場の反応はどうか。
注目したいのはアットスリーの440万円という価格設定だ。BYDを日本へ輸入・販売する「BYD Auto Japan」の東福寺厚樹社長は2022年12月5日に記者会見し「同じクラスのEVに対しても、アットスリーは十分に高い価格競争力がある」と自信を見せた。
東福寺社長の言う「同じクラスのEV」とは何か。日本で車格、性能、価格面でアットスリーに最も近いのは「日産リーフ」だろう。アットスリーのリチウムイオン電池の容量は58.56kWh、航続距離(WLTCモード)は485キロだ。これに対して、日産リーフは電池の容量と航続距離が40kWhで322キロ、60kWhで450キロの二つの仕様がある。
BYDの価格発表時点では、アットスリーと性能的に並ぶ60kWhの「リーフe+」の販売価格は422万円台からだった。これでは多くの日本のユーザーは、価格が安く、長い販売実績から信頼性の高いリーフe+を選ぶだろうと思われた。
ところがBYDの価格発表から間もない12月22日、日産がリーフの販売価格の引き上げを発表した。これはちょっとしたサプライズだった。
422万円台だった60kWhのリーフe+は525万円台からと、大幅な値上げになった。日産は「世界的な原材料費や物流費などの高騰」を理由に上げた。
この結果、リーフで最も安価な40kWhのモデルも408万円台からとなった。軽EVを除けば日本のEVで最も安価で売れ筋のリーフは、いずれも400~500万円台となり、BYDとの競争関係が微妙になった。
安価なEVという点では、韓国の現代自動車が2022年に日本でも発売した「IONIQ(アイオニック)5」は電池容量が58kWhで航続距離498キロのモデルが479万円だ。このほか、ブランド力で日本市場に販売攻勢をかける独フォルクスワーゲンの新型EV「ID.4」は52kwh、435キロのモデルが514万円台からだ。
これに対して、日本の他メーカーのEVはホンダeが35.5kWh、259キロで495万円などと、性能と価格のバランスが悪い。トヨタのbZ4Xは71.4kwh、559キロだが、電池の経年劣化や下取り価格の低下を考慮したためかリース販売のみとなっている。このため日産リーフと軽EVの日産サクラ以外のEVは、日本でほとんど普及していない。
いずれにせよ、2023年は本格的な中国製EVとして日本に上陸するBYDの行方が注目される。日産リーフの値上げによって、440万円のBYDアットスリーの存在感が高まったのは間違いない。
米テスラや韓国の現代がネットを中心に日本でEVを販売するのに対して、BYDは日本国内に100店舗以上のディーラー網を構築しようとしている。これも日本のユーザーにとっては安心材料だろう。EVの普及で遅れをとる日本市場に本格進出しようとするBYDの本気度が伺える。