国内の軽を含む乗用車の2020年度の新車販売は、トヨタ自動車の小型車「ヤリス」が20万2652台で初の首位となった。意外にもトヨタが首位となるのは、現行の4代目「プリウス」がデビューした直後の2016年度以来、4年ぶりだ。
日本自動車販売協会連合会と全国軽自動車協会連合会がこのほど発表した。
国内の新車販売は排気量660cc超の登録車よりも、660cc以下の軽自動車の人気が高く、2019年度までは3年連続でホンダの軽「N-BOX」がトップだった。
今回、N-BOXは19万7900台で、ヤリスと僅差の2位だった。3位はスズキの軽「スペーシア」、4位はダイハツ工業の軽「タント」と、2~4位は人気の軽ハイトワゴンが占めた。N-BOXは軽市場では2015年度から6年連続で首位という「軽の横綱」だ。
その意味で、ヤリスがN-BOXを抑え、軽よりもワンクラス上の小型車として首位を奪還したのは、ちょっとしたニュースだ。
ヤリスはトヨタの世界戦略車として、2020年2月に発売。もともと欧米市場で使ってきた名称で、日本では先代のヴィッツから名称変更した。
ヤリスはハイブリッドモデルのほか、クロスオーバーの「ヤリスクロス」、本格的なスポーツモデルとなる「GRヤリス」など幅広い車種をそろえたことから、多くのユーザーを獲得した。
とりわけヤリスクロスは斬新なスタイリングで、街中でも存在感がある。GRヤリスは販売台数こそ少ないものの、モータースポーツに直結した本格的なスポーツカーを残そうとするトヨタの底力を内外に示したと評される。
ヤリスの国内の最大のライバルは「ホンダフィット」だ。ヤリスと同じく、フィットは現行の4代目が2020年2月に発売されたが、こちらはトップ10に入らず、明暗を分けた。
このクラスのファミリーカーは燃費が決め手になる。同じハイブリッドでもヤリスとフィットの燃費の差は歴然で、ホンダはトヨタとの燃費競争から脱落してしまったようにみえる。この点もユーザーは厳しく評価したのではないか。
タントに続く5位以下は、トヨタの「ライズ」「カローラ」「アルファード」「ルーミー」と、8位までトヨタの登録車が続く。かつて首位の定番だったカローラは6位で、モデルチェンジ直後の勢いはない。
9位はダイハツの「ムーヴ」、10位は日産自動車の「ルークス」と、再び軽が続く。結果的にトヨタはトップ10のうち、首位のヤリスを含め5車種と半数を占めた。子会社のダイハツを含めると7車種になる。
残る3車種はホンダ、スズキ、日産が各1車種ずつと、トヨタグループの圧勝になった。
2020年度の国内新車販売台数は前年度比7.6%減の465万6632台と、2年連続で減少した。登録車が前年度比8.9%減と4年連続でマイナスとなっただけでなく、軽も同5.3%減で2年連続で減少したのが響いた。
ブランド別ではトヨタを含む主要9ブランド全てが前年度を割った。
登録車ではトヨタが2.7%減の145万4262台、ホンダが14.1%減、日産自動車が18.0%減と上位3社が振るわず、最下位の三菱自動車は28.0%減と大きなマイナスになった。
2020年度は新型コロナウイルス感染拡大に伴う生産停止や、政府の緊急事態宣言が響き、年度前半の販売が大きく落ち込だ。その意味で2020年度には特殊要因に翻弄されたといえるが、コロナ化の終息が見通せない2021年度も国内の新車販売は楽観はできない。
そんな中、トヨタのヤリスが新たな商品展開で若者らの支持を得て、国内販売で首位を獲得したことは、クルマ好きにとって数少ない明るいニュースだったといえる。国内販売で首位を取るのは簡単でないが、ヤリスのようにユーザーの支持を得られるクルマを開発するチャンスは、他のメーカーにもあるのではないか。