川崎重工業(カワサキ)が往年の名門バイクブランド「メグロ」を復活させた。カワサキは「メグロ」の名を冠したネオクラシックバイクを「メグロK3」として半世紀ぶりに復活させ、2月1日から全国で発売した。
現役時代のメグロに実際に乗ったライダーは極めて限られるが、伝説としてのメグロを知るライダーは少なくないだろう。そんなライダーを意識し、メグロのDNAを引き継ぐカワサキが半世紀年ぶりに伝統あるブランドを復活させることになった。
メグロは1924年創業の目黒製作所のバイクのブランドだった。日本の2輪メーカーとして戦後のスズキやホンダより古く、戦前から続く「陸王」などと並ぶ有力メーカーのひとつだった。
目黒製作所は排気量の多い英国風のビッグバイクを得意とし、日本初のスポーツバイクを送り出したメーカーとして知られる。モータースポーツでも活躍するバイクメーカーだったが、ホンダ、ヤマハ、スズキなど後発メーカーに押され、1964年に川崎航空機(現川崎重工=カワサキ)に吸収された。
「メグロ」の名を冠したバイクは、カワサキと経営統合した直後に誕生した「メグロK2」を最後に消滅した。
とはいえ、メグロは、その後のカワサキのバイクに多大な影響を与えた。カワサキはホンダ、ヤマハ、スズキと異なり、伝統的に50ccなど排気量の少ないバイクやスクーターを生産しない。
大排気量を得意とするのは、かつてのメグロが大排気量で高性能を誇るバイクだったからだろう。目黒製作所との経営統合で、カワサキはメグロのビッグバイクのノウハウを吸収したのだ。
1966年に誕生した「メグロK2」は、カワサキが「メグロ」ブランドを冠して発売した最後のビッグバイクだ。そのメカニズムと英国調のスタイルは、後のカワサキの代名詞となる「650W1(ダブワン)」をはじめとする同社の4ストローク大型スポーツバイクに継承された。
今回、カワサキが「メグロK3」として発売するバイクは、W1後継の「W800」をベースとしている。タンクに輝く「メグロ」のエンブレム以外は、W800と大差ないともいえるが、カワサキは半世紀前の「メグロK2」の後継となる「メグロK3」を復活させることで、再びメグロブランドを育てる方針。
メグロ復活について、カワサキは「スポーツバイクメーカーとして日本初のブランドとなったメグロの歴史を引き継いだカワサキの誇りであり、伝統を決して途絶えさせないという、強い決意の表れだ」と説明している。
メグロK3のタンクを飾る「メグロ」のエンブレムとクラシカルなスタイリングは、往年を知るシニア層には懐かしく、当時を知らない大多数のライダーにとっては新鮮に映るから不思議だ。
カワサキは今回のバイクだけでなく、「メグロ」のロゴが入ったキャップなど専用グッズも売り出すという。果たして、往年のメグロブランドはカワサキの狙い通りの人気を得られるか。メグロK3の今後の行方に注目したい。