カスタムカーやチューニングカーの祭典「東京オートサロン2022」が1月14~16日、千葉市の幕張メッセで開かれる。2021年は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で開催中止となり、インターネットで「バーチャルオートサロン」が行われた。リアルの開催は2年ぶりとなる。
東京オートサロンは1983年にチューニングカー専門の「OPTION」誌が「東京エキサイティングカーショー」としてスタートさせ、87年から現在の「東京オートサロン」となり、今回で40周年という。
この間、東京オートサロンは世界最大級のカスタムカーイベントに成長し、クルマ好きにとっては毎年新春恒例の一大イベントとなった。近年は国内外の大手自動車メーカーが多数出展し、東京オートサロンに合わせて新モデルを発表するケースが増えた。
このため2年に1度の東京モーターショーよりも、毎年新春の東京オートサロンの方がマニアックなクルマ好きには注目されるようになった。
それでは今年の注目ポイントは何か。「走り」が好きなモータースポーツ志向のクルマ好きの視点で考えてみよう。
大手メーカーの中では、まずトヨタ自動車の「GRヤリス」のフルチューンモデルとホンダの「シビックtypeR」のプロトタイプだろう。
GRヤリスは2020年の東京オートサロンでトヨタが世界で初公開したスポーツモデルで、トヨタが世界ラリー選手権(WRC)で総合優勝するなど、モータースポーツ参戦で得た技術や知見を市販車に生かしている。フルチューンがどの程度の価格とレベルかわからないが、期待感が募る。
新型のシビックtypeRはホンダが2022年内に発売を予定しており、「ブース内で流れるテストの映像と合わせて、開発中の模様を感じていただくことが可能。このモデルは東京オートサロン限定展示」という。
SUBARU(スバル)は「WRX S4」「レヴォーク」「BRZ」3台の上級モデル「STI Performance」をそれぞれ展示する。スバルの子会社でモータースポーツ部門を担う「スバル・テクニカ・インターナショナル(STI)」のパーツを組み込み、運動性能を向上させたモデルで、市販が期待される。
このほかスバルは「STI E-RA CONCEPT」と呼ぶコンセプトカーを参考出品する。STIが「カーボンニュートラル時代に向けて、モータースポーツの世界で新しい技術の経験と修練を積むことを目的に新プロジェクトを立ち上げ、当プロジェクトで開発を進めてきた」という「世界初公開」のモデルだ。
詳細はわからないが、「STI E-RA CONCEPT」の「E」は少なくとも電動化、恐らくはEV(電気自動車)のことだろう。RAは「レコード・アテンプト(記録達成)」の意味で、スバルはモータースポーツ参戦のベース車両の名称に用いている。
スバルはトヨタ自動車と共同開発したEV「ソルテラ」を年央に発売する予定で、「STI E-RA CONCEPT」はこの技術を応用し、モータースポーツ参戦をにらんだEVのコンセプトカーかもしれない。
このほか日本メーカーの中では、日産自動車が新型「フェアレディZ」の日本仕様モデルを初公開する。新型Zは2022年春に米国で発売し、日本でも年内に発売する予定だ。
もちろん、大手メーカー以外にも、オートサロンには部品メーカーやチューニングメーカーが多くのカスタムカーやチューニングカーを参考出品する。その顔ぶれは、これまでと大きくは変わらない。クルマ好きの祭典なのだから、これはこれで楽しめばよいのかもしれない。
しかし、敢えて苦言を呈すなら、展示車の多くはこれまでの技術の延長線で、新たな時代の息吹を感じさせる展示は少ない印象を受ける。とりわけ大手メーカーの出展に例年ほどの意欲や魅力を感じないのはどうしてだろうか。新技術の発表は各国のモーターショーかもしれないが、東京オートサロンならではの「クルマ好き」へのメッセージがあってもよいのではないか。
何もすべてのクルマを電動化しろと言うつもりはない。ここでは多くを語らないが、EVは技術的課題が多い。近距離移動のコミューターならよいが、大容量の電池を積み、長距離を走行できたとしても、旅先でカラになったその大容量電池を充電するには膨大な時間がかかる。日本の年末年始の帰省ラッシュでは高速道路のサービスエリアが大渋滞するだろう。
トヨタがEVだけでなく、燃料電池車(FCV)やハイブリッドカー(HV)など全方位政策をとるのはそのためだ。むしろトヨタのようにモータスポーツに水素エンジンや次世代燃料を内燃機関のエンジンで使おうとするメーカーも現れている。
日本のメディアは脱炭素の次世代自動車はEVが本命と決めつけているようだが、全固体電池など革新的な技術が実現しない限り、EVの本格普及は難しいのではないか。
東京オートサロンは、筆者を含むクルマ好きの祭典だけに、内燃機関の魅力を残しつつ、次世代に通用する新技術の参考出品を見たかったと言ったら、言い過ぎだろうか。
ともあれ、2年ぶりのリアル開催だ。デモ走行など屋外イベントも復活する。エンジン音はじめ五感を駆使して、40周年となる東京オートサロンを楽しみたい。