「ノスタルジック2デイズ」はクラシックカー(旧車)専門の自動車雑誌「ノスタルジックヒーロー」などを出版する芸文社の主催で、毎年多くのクルマ好きで賑わう。
第13回となる今回の目玉は、日産が1月の「東京オートサロン」で初公開し、6月下旬から発売するという日本市場向け新型フェアレディZとともに歴代Zが一堂に会したことだろう。東京オートサロンでは、歴代Zの展示はなかった。
「S30型」と呼ばれる初代Zは1969年にデビューし、日米でヒット。今日まで世界でZの愛好者を増やすきっかけとなった。
1978年発売の2代目「S130型」は初代のキープコンセプトだったが、1983年発売の3代目「Z31型」と1989年発売の4代目「Z32型」は、いずれも先代とスタイリングを大きく変えた。
その後、Zはコストカッターと呼ばれた当時のカルロス・ゴーン社長の下で2000年に絶版となるが、2002年に5代目が「Z33型」として復活。歴代Zの中でも初代の面影を色濃く残すスタイリングとなった。
2008年発売の6代目「Z34型」もZ33型の発展形だった。新型はこの6代目の大幅改良版で、型式は「Z34」のままだが、スタイリングとエンジンなどを変更した。

新旧フェアレディZについて熱く語る新型Zの開発責任者・田村宏志氏(左)と
日産の元デザイナー・山下敏男氏=横浜市西区のパシフィコ横浜で2022年2月19日
田村氏は「ZとGT-Rは日産社内でほとんど同じチームで開発している。開発ドライバーもみな一緒」などと秘話を語った。
日産を代表するスポーツカーの双璧、ZとGT-Rの違いについて、田村氏は「Zはダンスパートナー、GT-Rはモバイルスーツ」などと表現。人々を魅了するデザイン重視のZに対して、「GT-Rはエンジンや走りを作り込み、さらにスーパーな領域に行くクルマ」と語った。
新型Zは最高出力298kW(405PS)、最大トルク475N・m(48.4kgf・m)の新開発3リッターV6ツインターボエンジンを搭載している。田村氏は現代の市販車で1本のタイヤが負担できる最高出力は150PSだと説明。「4WDのGT-Rは150×4で600PSまで可能だが、FRのZは本来なら150×2で300PSにすべきだった」と明かした。
田村氏は「ダンスパートナーが400PSに化けた時、制御できなければアクセルを踏めない」と述べ、FRでもドライバーが「オーバー100PS」をコントロールできるよう新型Zをセッティングしているとした。
元デザイナーの山下氏は「スポーツカーのデザインは難しい」と本音を吐露。「クルマが好きな人はポルシェやフェラーリ、アストン・マーティンなどを見ていて、『ポルシェに似ているからカッコいい』などと思う先入観がある。それを拭い去って新しいスポーツカーを作っても認められない空気感がある」と、自らの体験を語った。
山下氏は「(初代Zの)S30型はなぜいつまでも人気があるのか。今見てもS30型はデザインがよい。新型ZはS30型のフロントデザインをモダナイズして入れている」などと発言。

日産の初代フェアレディZ(手前)と左に並ぶ2代目以降の歴代Z=横浜市西区のパシ
フィコ横浜で2022年2月19日
クルマ好き、とりわけZファンにとっては、たまらないトークショーだった。新型と歴代Zの周りでは、多くのファンがカメラのレンズを向けていた。