同賞の実行委員会は両車について「日本独自の軽自動車規格を採用し、現実的な車両価格でバッテリーEVを所有するハードルを下げ、日本でバッテリーEV普及の可能性を高めた」と評価した。

三菱自のekクロス=HPから
選考委員の最終審査でサクラ・eKクロスEVの得点は399点となり、2位のホンダシビックe:HEV・シビックタイプRの320点、3位のトヨタクラウンの236点を上回った。
サクラとeKクロスEVは「自動車研究者ジャーナリスト会議(RJC)」が選ぶ今年の「RJCカーオブザイヤー」にも輝いており、日本を代表する二つのカーオブザイヤーを同時受賞した。11月9日発表のRJCカーオブザイヤーの得点は、首位のサクラ・eKクロスEVが175点、2位のスズキアルトが140点、3位のマツダCX-60が108点だった。
RJCはサクラとeKクロスEVの受賞理由について「軽自動車規格のボディサイズに、日常使用で十分以上の走行距離、滑らかな加速やきびきびとしたハンドリング、上質な内外装、最新の安全装備を備え、実用EVとして高い完成度を誇る。幅広いユーザーに手の届く車両価格も実現し、EVの普及促進に弾みをつけた」とコメントしている。
今回のサクラとeKクロスEVのカーオブザイヤーのダブル受賞は、日本のカーオブザイヤー史上で画期的といえる。
日本カー・オブ・ザ・イヤーを軽自動車が受賞したのは、1980年に同賞が誕生以来、初めてなのだ。日本カー・オブ・ザ・イヤーは自動車雑誌の出版社などが実行委員会を作り、自動車評論家やモータージャーナリストなどが選考委員を務めている。
現在の選考委員は60人で、太田哲也氏、桂伸一氏、木下隆之氏、佐藤久美氏、清水和夫氏、中谷明彦氏、松田秀士氏らレーサー出身の自動車評論家が多いのが特徴だ。谷口信輝氏のように現役のレーサーもいる。このほか、クルマ好きで知られるテリー伊藤氏や松任谷正隆氏ら芸能・文化人も委員を務めている。
このため日本カー・オブ・ザ・イヤーは伝統的に「走り」や「趣味性」が重視され、これまでEVは日産リーフが受賞したことはあるが、実用的な軽自動車が受賞したことはなかった。
これに対して、RJCカーオブザイヤーはNPO法人の自動車研究者ジャーナリスト会議(RJC)が主催する。RJCは日本カー・オブ・ザ・イヤーを「メーカーの接待づけになっている」「評価がクルマの運動性能に偏重している」などと批判し、1991年に発足した経緯がある。
このためRJCカーオブザイヤーは実用的なファミリーカーが受賞するケースが多く、これまで軽自動車も何度も受賞している。日本カー・オブ・ザ・イヤーに高級車やスポーツカーが多いのとは対照的だ。
今年の両賞のベスト3を見ても、考え方の違いが見て取れる。次点はRJCカーオブザイヤーが軽のアルトなのに対して、日本カー・オブ・ザ・イヤーには「走り屋」向けのスポーツカー、シビックタイプRだった。
両賞の過去の受賞を見れば、この傾向はさらに鮮明だ。両賞は意図的に棲み分けを図っているのか、11月にRJCカーオブザイヤーを受賞したクルマは12月の日本カー・オブ・ザ・イヤーとならないというジンクスがあった。
ところが、今回は両賞が一致した。しかも、2021年の日産ノートに続き、2年連続で両賞が一致した。その前のダブル受賞は2011年の日産リーフ、さらにその前は2001年のホンダフィットまで遡らなくてはならない。
このようにサクラとeKクロスEVが軽自動車でありながら、ダブル受賞となったのは画期的だ。EVの受賞は2011年の日産リーフ以来、11年ぶりとなる。
サクラとeKクロスEVの受賞理由を見ても、今回は日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員会が実用性を重視し、RJCが走りを重視したコメントとなっているのも意外だった。両賞の潮目は変わったのか。いずれにしても今年は話題の多いカーオブザイヤーとなった。