日本で発売した新車の中で「この1年の一番」を決める「カーオブザイヤー」は、「走り重視」の日本カー・オブ・ザ・イヤーと、「実用性重視」のRJCカーオブザイヤーの二つがある。この違いは両賞の選考委員の人選にある。
「日本カー・オブ・ザ・イヤー」は、自動車雑誌の出版社などが実行委員会を作り、レーサーやラリースト出身の自動車評論家が選考委員の中心メンバーだ。
これに対して「RJCカーオブザイヤー」を主催するのは日本自動車研究者ジャーナリスト会議(RJC)というNPO法人だ。RJCは旧来の日本カー・オブ・ザ・イヤーを「メーカーの接待づけ」や「運動性能に偏重した選考」が多いなどと批判し、1991年に誕生した経緯がある。選考委員は学識経験者やエンジニアのほか、ベテランの自動車評論家が多い。
今回、スバルレヴォーグが日本カー・オブ・ザ・イヤー、トヨタヤリス(ヤリスクロスを含む)がRJCカーオブザイヤーを受賞したのは、「走り」のスバルレヴォーグと、「実用性」のトヨタヤリスという両車のキャラクターの違いからもわかりやすい。この点で今回の受賞は順当と言えるだろう。
日本カー・オブ・ザ・イヤーは首位のスバルレヴォーグが437点で、2位のホンダフィットの320点、3位のトヨタやリスの300点を大きく離したのが特徴だ。4位はプジョー208/e-208の141点、5位はランドローバーディフェンダーの105点だった。今回は2019年11月1日から20年10月31日に日本国内で発表した45台が対象だった。
一方のRJCカーオブザイヤーは、首位のトヨタヤリスが152点、2位のスズキハスラーが146点という接戦だった。3位は日産キックスの117点、4位はホンダフィットの111点で、スバルレヴォーグは5位の74点と振るわなかった。ここでもRJCカーオブザイヤーが実用車重視であることがわかる。対象車種は日本カー・オブ・ザ・イヤーとほぼ同様だ。
日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員会はレヴォーグの受賞理由について「スバルグローバルプラットフォームとフルインナーフレーム構造の組み合わせで類い希な操縦性と快適性を高次元で両立。日常域での扱いやすさを重視した新開発1.8L 直噴ターボエンジンはリーン燃焼という新しい技術トライとユーザー目線の開発姿勢で支持を集めた」とコメントしている。
日本カー・オブ・ザ・イヤーは選考委員が60人と多く、各選考委員が投じる最高得点は10点だ。今回、スバルレヴォーグは60人のうち、25人が10点満点を投じており、2位以下を圧倒した。
自動車評論家の片岡英明氏は「新型レヴォーグは、ドライバーが意のままに操ることができる気持ちいい走りとロングドライブでの優れた快適性と安全性、これらを高い次元で両立させている」と評価。一方、スバルの電動化の遅れから「環境性能に物足りなさを感じるが、それを補って余りある魅力と価値を見出せたので10点を投じた」とコメントした。

この二人のコメントは、今年の対照的なカーオブザイヤー2台の評価として、極めて的を得ていると感じた。いずれにせよ、今年のカーオブザイヤーも、これまで通り両賞の棲み分けが続いた。