マツダは4月7日、3.3リッター直列6気筒ディーゼルエンジンを搭載した新型SUV「CX-60」を発表した。マツダが「新世代ラージ商品群」と呼ぶ直列6気筒エンジン搭載の高級SUVの第1弾が今回のCX-60だ。
最大のハイライトは世界でも少数派となった直列6気筒エンジンをマツダが新開発し、しかもディーゼルで登場させたことだ。直列6気筒エンジンは「ストレート6」とも呼ばれ、ポルシェやスバルの水平対向6気筒エンジンと並び、静粛性や回転バランスに優れた高級エンジンだ。
直列6気筒エンジンは、かつてトヨタ自動車や日産自動車も生産していたが、衝突安全性やスペース効率の面で劣ることから、全長の短いV型エンジンが主流となった。さらにダウンサイジングの流れの中で、直列6気筒は優位性が薄れ、次第に姿を消していった。現在はメルセデス・ベンツとBMWが生産している程度だ。
世界的に電動化が進み、ダウンサイジングが主流となる中、マツダが3.3リットルの直列6気筒ディーゼルエンジンを新開発したのは、評価が分かれるところだろう。
マツダは今回のCX-60のほか、この大型エンジンを搭載した高級SUVを順次発売する計画だ。欧州で人気の高いマツダは、これら「ラージ商品群」の展開で、BMWなどと並ぶプレミアムブランドとして、ユーザーに認知されることを狙っている。
しかし、欧州では2015年のフォルクスワーゲン(VW)の排ガス不正発覚以降、脱ディーゼルと電動化が進んでおり、マツダのラージ商品群が受け入れられるかは不透明だ。
マツダはオンラインで開いたCX-60の説明会で「現在は電動化への移行期で、内燃機関が混在する。重要なのは使用エネルギーの節約だ。世界で電気自動車(EV)への移行が進んでも、克服すべき課題は多く、内燃機関は残る」と主張した。
さらにマツダは「エンジンの排気量が大きいほど高効率領域を拡大できる。気筒数が多いほど、より低い回転数を使うことができ、さらに効率が改善する」と、新型ディーゼルエンジンの狙いを語った。
でも、それなら「マツダはなぜ、すべてのディーゼルを大排気量、多気筒化しないのか」と質問したくなる。
「エンジン縦置きによって、理想的な前後重量配分を実現。4輪にかかる重量を均等にした」
「縦置きのメリットを生かし、重量物を重心に集約して、慣性マスを小さくし、4輪の力を遅れなく曲がる運動に変換させた」
CX-60の説明会ではマツダの開発陣から、このような説明を幾度となく聞いた。なるほど、直列6気筒エンジンを縦置きに搭載する以上、そのメリットを最大限強調するのは理解できる。
しかし、縦置きエンジンの重量配分の良さをアピールするのはマツダだけではない。SUBARU(スバル)は水平対向エンジンを縦置きに搭載し、低重心、左右対称の重量配分の優位性をアピールしている。
マツダもスバルもトヨタと資本提携しているが、近年は「走り」を重視したメーカーとして、両社は存在感が似通ってきているのが気になる。
果たして、直列6気筒ディーゼルを積んだ新型SUVは支持を得られるのか。マツダの新戦略の真価が問われる。