「労働法的にはいけないとわかりつつも、レジで違算が出た時は従業員に負担させていました。違算まで店の負担にすると、とても持ちません」。従業員の雇用を大切にしてきたコンビニオーナーが吐露した本音である。
コンビニのみならず、スーパーやデパート、書店などレジ接客を経験した人は、一日の売上精算時に売上とは合わない誤差が出るのを経験したことがあるだろう。これを違算と呼ぶ。
この違算は、客への釣銭手渡しなどが原因で起きるものだが、万円単位の値段の高い商品をウッカリ処理すると、1万円単位の違算が生じることがある。個人商店に過ぎないコンビニ加盟店にとっては、かなり痛い損害である。冒頭のオーナーが述べるように法的にはこの違算に関して労働者である従業員は負担する必要は一切ない。
しかし、実際には確信犯的にレジの金銭を盗む悪質な従業員もいる為、オーナーが従業員に違算を負担させる心境も無理からぬものがある。そもそも、コンビニでは万引き客も「常連さん」と言える存在だが、従業員が店内の商品を盗む「内引き」と言われる行為も後を絶たないのである。「内引き」は窃盗であるから、当然ながら即解雇しても法的に何の問題もないのだが、「内引きした子に辞めろというても、辞めんけん。結局、店におるよ」という気の優しいオーナーは解雇しない場合もある。だが、このようなオーナーは例外と言うべきだろう。
「君はこの店のフィーリングに合っていないから」という理由で、特に問題もない店員をたった3日で解雇したオーナーもいる。このオーナーは、その後地域合同労組に加盟した店員からの追及で和解金を支払う羽目になった。
仕事の量が増加し、「割に合わないバイトになった」と言われる最近のコンビニ業界だが、昔から労働法違反が後を絶えない職場として労働基準監督署や合同労組(ユニオン)から問題視されてきた歴史がある。
とは言っても本部のロイヤリティが高額な所為で不採算店ならば、オーナー夫婦の労働量を時給換算すると4・500円程度というコンビニ店舗の実情では致し方ないものがある。
こうした労務管理の不祥事が加盟店に於いて絶えない実情について本部側は、「システムマニュアルという店舗運営マニュアルをオーナーには配布し、指導している。その中には労務管理についてきちんと書いてある。ただし、本部側の指導は加盟店に強制出来ない」と本部と加盟店の「対等性」を強調して逃げるばかりである。
加盟店オーナーも経営者・事業主であるから、人を雇う際には一定の人事・労務に関する知識が求められる。
売り上げ合わなければ、従業員が負担 |
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【コンビニ事情】ブラックバイト化してしまう理由
公開日:
(ビジネス)
Reuters
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角田 裕育(ジャーナリスト)
1978年神戸市生まれ。大阪のコミュニティ紙記者を経て、2001年からフリー。労働問題・教育問題を得手としている。著書に『セブン-イレブンの真実』(日新報道)『教育委員会の真実』など。
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