韓国検察は4日、李在鎔(イ・ジェヨン)サムスン電子副会長に対し、資本市場法上の不正取引及び相場操作と株式会社の外部監査に関する法律違反の容疑を適用し、逮捕状を請求した。
朴槿恵(パク・クネ)前大統領の国政壟断事件に巻き込まれて1年間の収監生活の末に執行猶予で釈放された李副会長は、2年4ヵ月ぶりに別の疑いで再び拘束の危機に追い込まれた。
韓国検察は、2015年のサムスン物産と第一毛織の合併過程で、企業価値の評価が意図的に歪曲され、第一毛織の子会社であるサムスン・バイオロジックスの会計を操作するなど、不法が行われたと見ている。また、このような違法行為は、李副会長のサムスン電子の経営権継承過程の一環であり、李副会長も関連報告を受けるなど、事件に関与していると判断した。
事件は2018年11月にさかのぼる。韓国金融委員会傘下の証券先物委員会は、参与連帯などの市民団体が提起したサムスン・バイオロジックスの会計不正疑惑に対して「意図的重過失」という結論を下し、代表取締役解任勧告と課徴金80億ウォンという重い懲戒を下した。
サムスン・バイオロジックス(以下サムスン・バイオ )は、サムスングループがバイオ産業進出のために2011年に設立した医薬品委託製造(CMO)会社だ。設立以来4年連続で赤字が続いたサムスン・バイオは、2015年に1億9000億ウォン台の純利益を記録した。
サムスン・バイオ側は、サムスン・バイオエピスという子会社を関係会社に転換する際、持分の価値を帳簿価額(2900億ウォン)から市場価額(4兆8000億ウォン)に再評価して会計に反映したと主張したが、証券先物委員会はこれを故意の会計不正とみなした。
証券先物委員会はサムスン・バイオを会計不正で検察に告発し、事件はソウル中央地検特捜部に移った。ところが、検察はサムスン・バイオの会計不正はサムスン電子の経営承継と深い関係があるとみて、2015年に行われたサムスン物産と第一毛織の合併過程にまで捜査を拡大した。
サムスン・バイオの企業価値が膨らまされたことで親会社の第一毛織の株式も高評価を受け、サムスン物産との合併で第一毛織の株式が3倍に値上がりした。結局、サムスン物産の持分はないが、第一毛織の持分が多かった李副会長は、この合併で統合されたサムスン物産の株式の16.5%を持ち、筆頭株主となった。
サムスン物産はサムスン電子の2大株主であり、李副会長はサムスン物産を通じてサムスン電子に対する支配力を強めた。つまり、李副会長のサムスン電子経営権継承のため、サムスン・バイオの会計不正が行われたというのが検察の判断だ。
検察は最近まで、サムスングループに対する約50回の家宅捜索、110人余りの関連者に対する約430回の召喚調査など、強力な捜査を進めてきた。5月に入ってからは2回も李副会長を被疑者として召喚して事情聴取を行い、李副会長に対する起訴が迫っているという噂が聞こえていた。
そこで、副会長は2日に検察起訴の妥当性を判断してほしいという「検察捜査審議委員会」の審議を申請した。この事案が果たして起訴に値する事件なのかについて、検察ではなく外部の専門家たちが判断してほしいと要求したのだ。審議のために、15人からなる検察市民委員会が召集され、過半数の賛成を得ると捜査審議委に案件が渡される。
審議が終わるまでは起訴が見送られるため、遅延戦術という見方があった。しかし、李副会長に反撃された検察は2日後に電撃的に拘束令状を請求し、李副会長は再び拘束の岐路に立たされることになったのだ。李副会長に対する逮捕状の実質審査は8日に行われる。逮捕状が棄却されても、検察の起訴を避けることはできないというのが、韓国メディアの見方だ。
李副会長は今回の事件のほかにも、朴元大統領の国政醫断と関連した収賄容疑についても裁判が進行中だ。2018年2月の2審では懲役2年6ヶ月の執行猶予4年で釈放されたが、2019年8月の最高裁の上告審で2審の判決が「法理を誤解した誤りがある」として破棄・送還された。
この破棄・送還審で最高裁判所がサムスン電子が崔順実側に提供した賄賂の金額を86億ウォンと判断したことで、李副会長は実刑を免れないという見方が支配的だ。賄賂額が50億ウォンを超える場合は、特別犯罪加重処罰法によって5年以上の懲役刑に処され、執行猶予が不可能だからである。
一難去ってまた一難。サムスン電子と李副会長に未曾有の危機が迫っている。