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4月はやっぱり値上げの季節 消費冷やす恐れ

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【木内前日銀政策委員の経済コラム(91)】 制度改正の負担増と企業値上げ続々

公開日: 2021/04/01 (マーケット, ビジネス)

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木内 登英 (前日銀政策委員、野村総研エグゼクティブ・エコノミスト)

 年度初めの4月1日は、国内で様々な制度、価格が改定されるタイミングだ。雇用者の働く環境を改善させる方向に制度が改定される一方で、消費財の小売価格についてはやや値上げ方向での改定が優勢な状況であり、生活者にとっては順風と逆風とが交差する形となる。

 ただし、2回目の緊急事態宣言発令によって雇用環境は脆弱性を増し、また春闘での賃上げ率は大きく下振れた。こうした環境の下では、値上げの動きが個人消費の低迷を助長してしまうリスクに、より注意を払うべきだろう。

 同一労働同一賃金の実現に向けた働き方改革関連法の成立によって、パートタイム労働法が「パートタイム・有期雇用労働法」に改正され、2020年4月1日より施行された。そして中小企業については、今年4月1日より施行される。パートタイム・有期雇用労働法とは、同じ会社で同じ仕事をする正社員と非正規労働者との間で、あらゆる待遇の不合理な格差を禁止することを定めたものだ。中小企業で働く非正規労働者にとっては、働く環境の改善に繋がる。

 さらに、今年4月1日から、改正高年齢者雇用安定法が施行される。これによって、企業には従業員に65歳以上までの就業を確保する義務が生じる。加えて70歳までの就業確保措置の実施が努力義務となる。具体的には、70歳までの定年引上げ、定年制の廃止、70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入、などの措置が求められる。

この措置により、高年齢者の雇用が促されるだろう。パートタイム・有期雇用労働法と合わせて、家計全体には所得増加の効果をもたらすことになる。

 ユニクロは例外で値上げの動きが優勢

 他方、生活者にとって逆風となるのは、4月の値上げの動きだ。小売業者には消費税分を含めた総額表示が義務付けられることが、4月の税抜き価格改定を促す大きなきっかけとなっている。

 最も注目を集めているのは、ファーストリテイリングの値下げ戦略だ。傘下の衣料品大手ユニクロとジーユー(GU)で、3月12日から全商品を実質的に約9%値下げした。従来の税抜き価格をそのまま税込み価格とすることで、実質的に約9%の値下げとしたのである。

 しかし、それ以外では、値上げの動きの方がやや優勢に見える。「モスバーガー」は4月から、商品の6割について10円~50円の値上げをする。税込み価格の端数を切り上げたり、人件費や物流費が膨らんだ分を転嫁したりするという。

 串カツ田中ホールディングスは、消費者の健康志向を捉え、串カツ全商品で糖質を従来比4割抑えた衣を採用する。これに伴い原材料費が上がるため、全商品の9割で1品当たり平均10円程度価格を引き上げる。価格改定は本体価格を1~40円程度値上げし、他では一部値下げする。

 菊正宗酒造は「樽酒商品(瓶詰、パック詰め、カップ詰)」7商品の価格を4月1日出荷分から値上げする。樽材を扱う業者の減少などによる資材値上げ要請を受けたもので、値上げの幅は7~65円となる。

 日清オイリオグループは、原料価格の高騰が続いていることを受け、4月と6月に、家庭用食用油の価格を引き上げる。2度の価格改定で、1キログラムあたり計50円以上の値上げとなる。

 三井住友銀行は2021年4月5日より、コンビニATMの手数料を値上げする。平日昼間は110円の値上げで220円へ、それ以外は330円へと変更される。

 値上げが家計の個人消費をより慎重にさせるリスク

 こうした小売段階での値上げに加えて、卸売段階でも値上げの動きが広がっている。4月にはポリエチレン、ナイロン樹脂、砂糖などの卸売価格が引き上げられる。これらは今後、小売り段階の製品に転嫁され、値上げに繋がってくるだろう。

 ファーストリテイリングのように値下げした企業もあるが、全体的には値上げの方が優勢のようだ。全体の動きを把握するために、日経テレコンのワード検索機能を用いて、「4月+値上げ」で過去1か月間の記事検索をすると、1,168件がヒットした。「4月+値下げ」では684件である。また、「4月+価格引き上げ」では32件、「4月+価格引き下げ」では17件となった。それぞれ、前者は後者の倍近い数字となっている。これらは、4月の価格改定のうち、値上げの動きの方が値下げの動きよりも優勢である可能性を示唆していよう。

 新型コロナウイルス問題2年目となるこの時期に値上げの動きが広まっている背景には、企業が、従来からの原材料、人件費の上昇分を価格に転嫁することで、収益を確保する狙いがあるだろう。新型コロナウイルス問題の発生を受けて昨年4月には値上げを見送った企業が、事態がやや落ち着いてきたことを受けて、先送りしていた価格改定を今年の4月に行なうケースもあるだろう。

 しかし、新型コロナウイルス問題を受けた経済の脆弱性はまだ続いている。昨年冬のボーナスの大幅な落ち込みに加えて、先般妥結した春闘の平均賃上げ率は1.8%程度と昨年の2.0%を大きく下回った見通しだ。家計の先行きの所得見通しは厳しくなっているのである。

 また、緊急事態宣言の再発令を受けて、今後は企業の倒産、廃業、それに伴う失業者の増加が、遅れて顕在化する可能性がある。家計が先行きの所得や雇用の見通しにより悲観的になっているこのタイミングで値上げの動きが広がっていることは、家計の個人消費をより慎重にさせるリスクがあるだろう。
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木内 登英(前日銀政策委員、野村総研エグゼクティブ・エコノミスト)
1987年野村総研入社、ドイツ、米国勤務を経て、野村證券経済調査部長兼チーフエコノミスト。2012年日銀政策委員会審議委員。2017年7月現職。
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