10月26日のNYナスダック市場ではハイテク株の代表であるアルファベット(グーグルの持ち株会社)の株価が10.11ドルも急落して94.82ドルと1日で9.63%の下落となった。
これは同日発表された第三四半期(7~9月)の同社決算で売上高が前年比6%増の691億ドル(約10兆円)にとどまったためである。新型コロナ感染の感染初期である2020年春を除けば、2013年以来最も低い伸びであり、かつアナリストの事前予想(前年比9%)をも大きく下回るものであった。
グーグルの検索サーチ収入は395億ドル、前年比4.2%と事前予想の伸び(8%)の約半分に過ぎなかった。さらにユーチューブの広告収入は71億ドル、前年比2%の減収とこれも予想(4.4%)の半分と不振であった。
最高経営責任者であるサンダー・ピチャイは「広告業界全体にとって厳しい時代になった」と語ったほか、CFOも「2021年の第3四半期がコロナ感染の拡大からオンライン広告に乗り換えが続いていた良い時期との比較で前年比では伸びが低かった」「ただし、業界によっては広告支出全体を減らすような動きもあった」とコメントしている。
マイクロソフト社の第3四半期決算でも売上高は、過去5年の最低水準である前年比6%台にとどまった。パソコン、ゲーム機「Xbox」の販売落ち込みとドル高による海外部門の利益減少などが響いた。クラウドコンピューター部門の売上高は前年比35%増と好調であった。
アマゾンの第三四半期決算では売上高が1,271億ドル(約18.5兆円)、前年比15%増と久方ぶりの二桁増となった。四半期ベースとしては過去最高益でもある。しかしながらプライム会員向けセールを6月から7月にずらした効果が大きく、営業利益は前年比48%減の25億ドルと5四半期連続の減益となった。
株価は、27日終値こそは前日比4.7%低下の110.96ドルにとどまったが、その後の時間外取引で約20%も暴落した。これで年初来下落率は35%となった。
内容を見ると、インターネット通販の売上高は534億ドル、前年比7%増にとどまった。また、クラウドコンピューター部門の売上高も205億ドル、前年比27%増と引き続き好調であるが、増収率が30%を割り込むのが2020年第4四半期以来とややブレーキがかかってきたことも嫌気された。
株価急落を誘ったのは10~12月の売上高が1,400~1,480億ドルと前年比2~8%増と伸び悩み、利益も最大でも40億ドルとクリスマスセールにもかかわらず低迷する厳しい見通しを示したことだ。S&P等の市場予想であった各々1,550億ドル、50億ドルを大きく下回った。
とどめを刺したのがメタ(フェイスブックの親会社)の27日の1-9月期決算発表である。株価は31.88%も下落して97.94ドルと100ドルの大台を割った。最近1年間の高値(353.83ドル)の1/4近くの水準となった。時価総額では年初の1兆ドル近くから2,900億ドルとなり、時価総額トップ20の座から滑り落ちた。
売上高は前年比4%減の277億ドルにとどまった。純利益も44億ドルと前年同期の91億ドルから半減した。何と言っても力を入れていたバーチャルリアリティー(VR)部門が年初来3四半期の合計で90億ドルをこえる赤字を付けたのが響いた。
メタのVR部門を中心とした投資過大を憂える声は大きい。しかしながら会社側はメタの投資を含む支出額は今年の850~870億ドルから来年は多ければ1,010億ドルに達すると発表している。市場では「コスト増をまかなう売上増が果たせていない」として来年も厳しい年となるものと予想している。
このようなデジタル広告に収入の多くを依存しているアルファベット、メタなどのテック企業のさえない決算は米国の景気悪化、消費者、企業がインフレの高騰の中で広告収入のカットを目指してきた表れと言えよう。概ね不況の際に真っ先にカットされるのはいつでも広告収入であるという経験則が生きている。
またアルファベット、アマゾン、マイクロソフト、メタ等のテック企業はグローバルにビジネスを展開しているためドル高に伴ってドル建て評価ベースでは海外事業部門の売り上げ、利益の伸び鈍化ないし減少につながったことも大きい。
米国を取り巻く厳しいマクロ経済環境-ドル高とインフレ-がさすがのGAFAにも暗い影を落とし始めた。今後、FRBが利上げを続けていけば、もともと高い予想株価収益率(PER)なども見直されて一段と環境が悪化しよう。
ただ、GAFAはコロナ感染のピーク時でも業績が伸びたように小売り、航空、ホテルなどと比べて相対的に業績は安定している。株価の下落に歯止めがかかるとの見方も多い。