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アマゾン コロナ反動で赤字スレスレ

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【経済着眼】株価はピークの半分 IT大手のなかでも苦境ぶり際立つ

公開日: 2023/03/14 (ビジネス)

CC BY アマゾンのアンディ・ジャシーCEO=CC BY /Steve Jurvetson

俵 一郎 (国際金融専門家)

 Eコマースの雄であるアマゾンが苦境に立っている。同社株式の時価総額は、ピーク(2021年7月)の1兆8,800憶ドルから昨年の11月には8,790億ドルとなった。株式時価総額が1兆ドル減少した初の企業となった。

 時価総額はその後、少し戻したが、それでも9,450億ドルとピーク比半減している。FRBによる急速かつ大幅な利上げでGAFAを代表とするテック企業の株価は一斉に下落したものの、アマゾン株の下落は際立っている。

 直近の昨年第4四半期決算をみると、売上が1,492億ドル、前年同期比+9%と市場予想(1,454億ドル)を若干上回ったものの、営業利益は27億ドルと前年同期(35億ドル)を下回った。純利益は98%減の2億7800万ドルまで減り、一株当たり利益は前年同期の1.39ドルから3セントとなった。

 急成長を続けてきた企業向けクラウドサービス部門であるAWSも前年同期比+20%と伸びが鈍化した。2022年中のEコマース部門の売上も前年比-2%と創業以来初のマイナスを記録した。

 同社では、売上不振の背景としてエネルギー、食料品を中心としたインフレの高騰やFRBによる高金利の影響を挙げている。ウォルマートやメーシーズなどのオンラインショッピングの充実、さらにはロックダウンの解除に伴う実店舗での消費が回復したといった要因もある。

 新型コロナ感染が拡大する前、アマゾンは幾多の部門で高収益を稼いでいたが、その後2020年には都市封鎖などで急速に販売を増やした。しかし、2022年には27億ドルの純損失を出し、長期負債は現預金の規模を上回るまでバランス・シートが悪化した。

 現在のアマゾンが業況の伸び悩みに直面している真の原因は、景気変動やインフレ、金利上昇などの循環的要因よりも2020年春以降、世界的に新型コロナウィルスの感染が拡大する中、むやみに人員、物流拠点などを急拡大した反動が出た面が大きい。

 つまりアマゾンは、新型コロナの感染が拡大した当時には、ロックダウンで消費物資の供給が滞る中で小売業者という範疇を越えて、救急、消防活動のような緊急サービス機関の呈をなしていた。伝統的な小売店舗が閉鎖されてロックダウンで家の中に閉じ込められた勤労者はEコマースにラッシュした。2020年の売上げは前年を38%も上回った。

 この売り上げの爆発的な拡大は、アマゾンに業務拡大と迅速な対応の体制構築に自信を与えた。わずか1年半の間に配送ネットワークの規模を倍増させ、数千の倉庫を新設した。陸上輸送のみならず、航空貨物のハブも急速に拡大した。現場の労働者を中心に増員につぐ増員で、ピーク時には150万人を超えた。2021年9月には物流拠点で一挙に12.5万人を採用すると発表して世界を驚かせた。

 アマゾンでは経営合理化策として大型プロジェクト、倉庫の増設計画の見直しなどを急いでいる。人員面でも18,000人の解雇を発表した。ソフトウェアエンジニア、製造マネージャー、人事担当に至るまで解雇の対象としている。新型コロナ感染の拡大時に恐るべきペースで雇用拡大をしてきた咎めとも言えよう。

 上記のような短期的なコスト削減だけでなく、長期的な収益見通しが改善しない限り、株価の回復は期待しがたい。創業者ジェフ・べゾスの後継者として2021年7月に指名されたジャッシーCEOは1997年にアマゾンに入社以来創業者のジェフ・ペゾスと一緒に歩んできた。AWSを成長の柱に据えた功績も大きい。

 しかし、アマゾンの立て直しには、短期的に供給過剰の体質を改めることも必要ながら、より重要なことは創業者のスティーブ・ジョブス亡きあと、アップルのティム・クックが直面してきたのと同じく長期的な挑戦に挑む姿勢を見せることだ。

 株価は将来の収益を見越して形成されるという点から言っても長期戦略は不可欠だ。残念ながらべゾスが見せてきた先見性、革新性をジャッシーCEOはいまだ見せていない。アマゾンの創設者であるぺゾスの時代には際限のない野心、仕事に対する心からの楽しさといったものがジャッシーになってからは消えたと言われている。

 しかし、べゾスが立ち上げていった新規分野も必ずしも成功したわけではない。クラウドコンピュータサービスや宇宙ビジネスのほか、エンターテインメントやスーパーストアの運営まで手を広げていった。

 アマゾンがこのように新規分野に手を広げていった点に対する疑念も株価に影響している。例えばアマゾンムービーなどを通じたビデオ制作である。アマゾンは2022年の一年間だけで170億ドルをビデオ制作などのエンターテインメントのコンテンツに投下した。

 前年は130億ドルであった。代表作である「ロード・オブ・ザ・キング」は10億ドルをかけて1億人の視聴者を記録した。アマゾン独自のビデオ映画製作のためにMGMの映画スタジオを84.5億ドルかけて取得した。さらにスポーツの分野でも全米NFL(ナショナル・フットボール・リーグ)、サッカーの英国プレミア・リーグの試合中継に参画するようになった。

 このようなコストのかかる企画はいずれ報われるとの思いであったが、目下のところ思惑は外れたと言わざるを得ない。ジャッシーCEOはこれをオミクロン感染の蔓延、ウクライナでの戦争、大辞職時代、インフレ高進などの外部環境の変化が原因と分析している。誰も予想できないことが起きた、と力説している。

 しかし、アマゾンが新型コロナ感染の拡大でみせた業容の急速な拡大は、あとから振り返れば、乱雑な行きあたりばったりのビジネス拡大であった。とくにいったん構築した配送ネットワークの過剰を修正するのは容易ではない。ジャッシーCEOは「(多くの受注を寄せた)消費者に寄り添った結果、過剰となった」「しかし、同じことが再び起きても責任を果たすために同じことをした」と弁明している。

 アマゾンではロックダウンが終わってビジネス拡大を強化するために新しい分野へ参入したが、これも経営効率、将来性などの観点から精査が必要だ。

 例えば、アマゾンでは生成AI(generative AI、画像,文章、音声、など様々なコンテンツを生成することのできる人工知能)を利用したChatGPT(ユーザーが入力した質問に対して、まるで人間のように自然な対話形式でAIが答える)などはテクノロジーカンパニーとして長期間研究を続けてきた。ただ、この分野ではマイクロソフト、グーグルが先行している感があり、アマゾンはなお一層の努力が必要なようだ。

 足踏みを続けているのは生成AIや自動運転ほどファッショナブルではないが、重要な分野として食料品店の運営を通じて生鮮食料などを配送するビジネスがある。アマゾンは5年前に137億ドルを投じて米国のホールフーズを取得した。当時、アマゾンが生鮮食料品の分野まで新機軸の託送サービスを始めるのではないかと食品業界では戦々恐々としていた。しかし、そうした新構想は実現しておらず、5年間の収入の伸びがわずか10%に過ぎないというM&Aの投資効率としても不満足な水準で終わっている。

 さらに鳴り物入りでスタートしたアマゾン・ゴーもほとんど普及していない。2022年には8店舗の閉鎖も発表した。カメラが顧客を追いかけて買ったものを識別してレジでの決済を経ずにアマゾンのアカウントにチャージするだけ、といった画期的な試みであった。しかし、目下のところ極めて限定的な効果しか挙げていない。

 べゾスが見事な腕前で発案したのが「プライム会員」制度である。2005年のことである。当初は配送手数料の無料化と迅速な配送で始まったが、いまやビデオ視聴や音楽配信などのエンターテイメント、ゲーム、最近ではヘルスケアまで分野を広げている。

 昨年、アマゾンのいわゆる課金サービス(いわゆるサブスク)収入は352億ドルに達してそのほとんどをプライム会員制度が稼ぎ出している。しかし、会員数の飽和感が強まるにつれて昨年の伸び率は前年比11%と次第に減速してきた。

 プライム会員はアマゾンでのショッピングの頻度、購入金額とも通常のメンバーよりも多い。プライム会員は全米で9,900万人と推計される。米国の家庭の69%にあたり、飽和点を過ぎたとみられる。またプライム会員の年間手数料を米国で17%引き上げて139ドル(約19,000円)とした。しかし、最近のインフレでコストに関して敏感になってきた消費者にプライム会員のメリットをアピールし続けるのは難しくなってきた。

 ジャッシーに対して批判的な議論を展開してきたが、急成長を続けてきたアマゾンが転換点に立っているため、べゾスが味わっていない苦労もさせられてきたのは事実だ。ジャッシーは大きく言って、膨らんだ固定費コストを削減する、プライム会員を増やす、値段を下げる、配送を一段と迅速化する、という真っ当な目標を掲げている。

 そのうえで戦線を広げていったビジネスを精査して場合によっては撤退する、敢えてリスクを取って新規ビジネス分野にも進出する、といった長期戦略が必要だ。監督当局によるアマゾンの優越的な地位利用に関しての法廷闘争やタックスヘブンの利用による節税などを規制する国際税制への対応も不可欠だ。

 向かうところ敵なし、であった同社株価が急速に値戻しするには克服すべき課題が多い。
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