フェイスブック、インスタグラムなどを運営するメタプラットフォーム社(旧フェイスブック社)の株価は2月3日に26%あまり下落した。株式の時価総額は1日で2,000億ドル(約23兆円)あまり減って米国企業としての下落では史上最高となった。これまではアップルが一昨年9月3日に記録した約1,800億ドルの減少が最大であった。
同社では2月2日に21年第4四半期の決算発表をした。1日あたり利用者数が中国のバイトダンスが運営するTikTok(モバイル端末向けビデオプラットフォーム)等との競争激化から約19億3000万人と創業以来初の減少となった。TikTokと競合するインスタグラムでは12-17歳の週間利用者数が21年中、TikTokに初めて抜かれるに至った。
収入の主力である広告収入もアップルが昨年10月にiPhone(アイフォーン)の利用データを把握する機能を大きく制限したことにも悪影響を受けた。
つまり、アップル社ではアプリ開発者、広告主にユーザーの行動を追跡し、広告表示に役立つIDFAという広告識別子を立てていた。しかし、プライバシー保護のために、ユーザーにIDFAの利用の是非について選択することを許した。
当然ユーザーの多くが広告識別子による追跡を拒否したため、フェイスブックはターゲット広告で推計100億ドルの減収を余儀なくされた模様である。
アナリストは広告収入の減少にはインフレ高進やサプライチェーンの混乱などのマクロ経済情勢の悪化も影響した、と分析している。さらにメタ社のみならず、テック企業全般がFRBによる金融引き締めの影響から低金利を前提としていた企業価値が大きく損なわれそうだ(高PER企業ほど現在価値への割引率である金利上昇の影響を受けやすい)、との見通しも加わっている。
いずれにせよ、ザッカーバーグCEOがメタバースの将来性に賭けて社名をフェイスブックからメタ社に変更した意気込みにもかかわらず、10年以上先のメタバースの成長性よりも足元の売上げ、収益環境の悪化が株価の急落につながったわけである。
このところ、ザッカーバーグ氏が議決権株式の過半数を占めて独裁してきた同社の足元が揺らいでいる。
昨年10月にフェイスブックの内部告発者からインスタグラムが若い女性の精神、健康に悪影響を及ぼす(摂食障害など)ことをわかっていながら対策を取らなかったなど「フェイスブックは何よりも利益を優先してきた」と米英の議会などで証言されて企業イメージが大きく損なわれた。
さらに仮想通貨リブラの構想を立ち上げたが、各国中央銀行などの抵抗によってついについに研究開発を諦めるに至った。
ザッカーバーグ氏は広告料収入への過度の依存を改めようと、メタバースを将来の事業の柱に据えると大見えを切った。「コンピュータネットワークの中に構築された現実世界とは異なる仮想空間」と定義されるメタバースはすでに仮想空間でのコンサートに5万人規模のアバター(分身)が参加する、などの実績をあげている。
しかしながらメタ社では21年中のメタバース収入が230億ドルに達したものの、営業損益は102億ドルの赤字となっている。まだまだザッカーバーグ氏が夢見るような収益事業として育ってゆく見通しに乏しいと投資家は判断している。
このようにメタ社は強い逆風にさらされている。メタ社はGAFAの一角を占めてあらゆる機関投資家、投資信託などによって保有されているだけに株価急落の悪影響も広範囲にわたる。ただ、一部の投資家は、大きく値下がりした今こそ買い時と虎視眈々と買い増しを狙っている。