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恒大の資金繰り危機 不動産で連鎖破たん懸念

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【経済着眼】習体制は共青団に近かった恒大創業者に距離

公開日: 2021/09/27 (ビジネス)

【経済着眼】習体制は共青団に近かった恒大創業者に距離

俵 一郎 (国際金融専門家)

 中国経済の実質成長率は2000~2009年の10年間平均10.4%、2010~2019年が同7.68%であった。ちなみに中国は2013~2018年に亘って世界経済成長率の3割の寄与度を占めて米国に倍する寄与度を示した。その高度成長をリードしてきたのは、固定資産投資であり、51.9兆元(8兆ドル)とGDPの43%を占めている。

 しかし、人口減少、高齢化社会への突入に伴って住宅建設ブームや工場増設などの固定資産投資の鈍化から多くのエコノミストの見通しでは今後10年は4~5%に落ち込むとの見通しが多い。積極的な拡大を続けてきた恒大集団の凋落はそうした時代の前触れかもしれない。

 今年から来年にかけて債務の元利払いが集中する。とくにオフショア市場におけるドル建て債の元利払い不履行になれば金融危機の到来が恐れられる。すでに9月23日に利払いを行う予定であったドル建て債券の価格は、額面の3割程度にまで落ちている。さらに同社の販売する投資信託などに投資した国内の投資家は8万人で総額400億人民元に達する。
  
 不動産業界は中国の高度成長の一翼を担ってきた。もし蹉跌すればその成長モデルが完全に行き詰ったことを意味する。近年における中国の急激なマンション建設ラッシュは、約9000万戸の空室を作り出している。このため、9月までの半年間における52大都市のマンション価格は前年比16%も落ちている。

 中国経済の特徴のひとつは、地方政府の場合、開発投資、住宅建設のための土地売却収入が総収入の1/3を占めていることだ。この収入で総額8.4兆ドルに及ぶ地方債の元利払いが行われてきた。

 恒大集団のみならず、中国の不動産会社は過剰債務の状態にある。業界全体で総額2,210億ドルのドル建債残高があり、多くの債券にデフォルトの危機がある。同業界が発行した債券のうち、16%の債券が利回り30%以上、恒大集団も含めて11%が利回り50%以上となっている。金融市場では利回り50%以上というのはデフォルト寸前とみなされる。

 事実、恒大集団の資金繰りが逼迫したのは中国政府の責任でもある。いわゆる「3つのレッドライン」の適用だ。つまり、①債務の総資産比率を70%以下とする、②純債務の自己資本に対する比率を100%以下とする、③短期負債を上回る現金を保有する、の3点である。恒大集団は多くの不動産会社と同様に6月時点で、すべての基準に届かなかった。このため、追加的な社債発行を禁止されて資金繰りが一段と悪化を見たわけである。

 もし、中国政府による規制が苦境の主因であれば、政府は規制を緩和・撤廃すればよいが、もっと根源的な問題が横たわっている。つまり①不動産取引が次第に投機的要素を強めて、もはや中国の持続的成長を担うことはできないこと、ならびに②政府自身が何度も警告を発してきたように過剰債務が危険水域に入っている、ということだ。

 2017年に習近平総書記は「住宅は住むためにあるのであって投機の対象ではない」との有名なスピーチをして以降、上記2つの問題は年々、鮮明化している。

 中国では1990年代後半に市場主義経済の導入を通じて人類史上最大の住宅ブームが起きた。しかし、高齢化社会、人口の減少を目前として住宅需要が鈍化していくという構造的な問題が大きくなりつつある。

 2020年の新生児数は前年の1,465万人から1,200万人に減少している。今後も人口減少は22~35歳の出産適齢期女性がピーク比30%も減少することから確実に続いていく。新生児数は近々1,000万人を切っていくことになろう。従って住宅に対する需要は減少していく。

 中国ではこの30年にわたって億人単位で農村部から都市に人口移動が行われてきた。しかし、その都市部でもいまや縮小する都市が中国の1/3でみられている。そのような人口減少の下でこれまでのような「行け行けゴー」で借金をしまくって不動産開発を進めていく手法は早晩行き詰まりを迎えるはずだった。恒大集団はその前触れといえよう。

 このように中国経済は不動産事業に過度に依存した経済からの転換期にある。習近平政権が打ち出した「共同富裕」のスローガンも高度成長路線から、分配重視での中成長率路線への変更を迫るであろう。さらに住宅投資、開発投資から半導体、AIなどのハイテク産業、カーボン・ニュートラルへの転換などのグリーンエネルギー関連へと経済の軸足を移していけるかが問われてくる。

 習近平政権が今後、恒大集団ならびにもっと広く不動産業界をどのように扱うかも焦点となる。まず注目すべきは来年3期目を狙う習近平国家主席は、今般、恒大集団が危機に瀕しても資金繰り規制を緩めず、救済する姿勢を示さなかった。

 債務漬けともいえる恒大集団が経営破たんすれば他の不動産業者や個人投資家にとって悲惨な結果をもたらすのは間違いない。同時に世界第二の経済大国における金融危機の発生や経済成長の鈍化などマクロ的な悪影響も大きいはずだ。

 それにもかかわらず、習近平政権は、恒大集団ないし金融市場に対する政府介入を通じて不穏な情勢の安定化を図ろうとはしていない。その一つの理由として推測されるのは、大手不動産企業ではいずこも恒大集団と大差ない債務過剰、売り上げ減少に直面しているため連鎖破たんが相次ぐとみているためだ。

 中国政府はホアロン・グループ(投資信託)や中国海航集団(HNA、航空、物流、旅行業などのコングロマリット)の過剰債務問題に対しても直接的な介入を控えてきた。しかし、恒大集団は3,000億ドルの総債務、60億ドル以上とみなされる高利回り商品を個人投資家に売りつけてきた。

 ここに政府介入ありうべし、との観測が広がってくる。しかし、恒大集団を全面救済すれば上記のように他の不動産大手も諸手を挙げて支援を要請してこよう。

 不動産会社は中国国営銀行から多額の融資を受けている。中国政府が救済融資を要請すれば受けざるを得ない。しかし、いまのところ、そうした延命措置を取る気配はない。金融当局はリーマンョックのようなシステマティックな金融危機は訪れないと判断しているのではないか。

 中国政府が支援に踏み切るとすれば、8万人にのぼる個人投資家や恒大集団と契約した土地代金が未入金で財政危機を迎える地方政府などをケースバイケースで救済するなど限定措置にとどまりそうだ。

 もし経営建て直しを図るとすれば、750億ドル以上の負債を抱えていた中国海航集団に対する政府主導の再建が参考になるかもしれない。つまり、中国海航集団に対して政府が主導して古い経営陣を追い出して新しい経営者を指名した。

 新経営陣によって、4つの分野にグループを分割させて経営効率化を図らせたうえ経営をホワイトナイト(友好的な企業)の手に委ねた。これで同グループの株価、債券価格が漸く安定した。システミックリスクありと判断した場合には経営陣の追い出し、徹底した経営効率化を図っていくであろう。

 恒大集団の創業者トップである許家印氏は一時、中国の資産家番付トップに躍り出るほどの大富豪である。同社の株式時価総額は、株価暴落から現在37億ドルにまで縮小したが、昨年には410億ドルとその10倍以上の巨額であった。

 その資産を武器に、李克強首相らを生んだ共青団出身者を中心とする政治家とも親しい。習近平国家主席としては「共同富裕」を打ち出した矢先に政敵ともいえる共青団と親しい大富豪を救済することはなかろう。
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