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ツィート「#種苗法改正案に抗議します」が、法案を見送りに追い込んだ

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【農を考える】きっかけは4月30日の柴咲コウのツィート

公開日: 2020/05/28 (政治, ビジネス)

【農を考える】きっかけは4月30日の柴咲コウのツィート

山田 優 (農業ジャーナリスト)

 政府が今国会(第201回)で成立を目指していた種苗法改正案の審議が、与党の判断で見送られた。自家増殖の制限に農家の支持が得られなかった他、種苗の企業支配を懸念する市民から幅広い批判が集まった。強圧的な官邸農政の終わりの始まりと見ることもできる。

▽柴咲さんのツイート

種苗法改正案で問題提起

 女優の柴咲コウが同法改正に関連し、4月末に「自家採取禁止。このままでは日本の農家さんが窮地に立たされてしまいます」とツイートすると、くすぶり続けていた法改正への慎重論が一気に高まった。ふだん、農業とは縁の薄い人たちにも関心が広がり、東京高検の黒川弘務検事長(当時)の定年問題で安倍政権を批判する「#検察庁法改正案に抗議します」と並び「#種苗法改正案に抗議します」の投稿が飛び交った。

 江藤農水大臣は5月19日の記者会見で「今国会での審議入りをお願いしたい」と食い下がったが、20日付の日本農業新聞に「与党が法改正見送り」と書かれてしまい、面目は丸つぶれになった。次々と対立法案を通してきた安倍政権にとっては痛手となった。

▽海外流出の防止

 農水省は、改正の狙いを海外への優良品種の流出を防ぐことで「農家が優良品種を持続的に利用できる」と説明してきた。日本で開発したイチゴやブドウの新品種が中国や韓国で増殖され、同国内や東南アジアなどで堂々と販売されている事例などを挙げ、「農家の自家増殖を規制することが必要だ」と主張した。同時に「現在利用している大半の品種は(規制されない)一般品種で、規制の対象はごく一握りだけ」と説明し、法改正に理解を求めていた。

 日本では長年にわたって、農家がいったん入手した種苗は、自らの経営に使う限り自由に種採りや株分けができた。1998年の種苗法改正で初めて23種に自家増殖禁止が盛り込まれ、その後400種近くに拡大された。今回の法改正で登録品種すべてで自家増殖が禁じられ、増殖には育成権者(農業試験場や種苗企業)の許諾が必要となる予定だった。

 法改正反対を最初から唱え議論をリードしてきたのは、雑誌「現代農業」の発行元である農山漁村文化協会だった。自家増殖は農家の権利で、種採りを通じ農家が多様な遺伝資源を守ってきたと主張。さらに「自家増殖は海外への品種流出の原因ではない」などと農水省の規制強化を数年前から強く批判してきた。

▽当初は関心が薄く

 当初、農家の関心は高いとは言えなかった。2015年に農水省が行った生産者アンケートによると「種苗法に基づく品種登録制度を知っていた」農家は41%に過ぎなかった。しかし、世論の盛り上がりの中で、農家の間にも自家増殖禁止に対する不満の声が急速に高まった。強引な官邸農政に対する反発も背景にはあった。

 2012年の第2次安倍政権になって、農業政策は競争力強化が至上命題になった。農産物輸出の拡大や農村所得の向上が政策目標に掲げられた。その手段として民間企業の農業分野への参入が進められた。農地の規制緩和が進行する一方、育成者権など「知的財産」の権利が強化された。今回の種苗法改正は、民間活力重視という従来の延長線に位置づけることができる。

▽生物多様性を豊かに

 自家増殖禁止は、たんに農家の手間やコストが増えるだけではない問題をはらむ。種まきから生育、収穫、採種という一連のプロセスを農家が注意深く観察することで、土地に合う作物の改良が進められてきた歴史がある。ところが近年、作物の多様性は急速に失われつつある。自家増殖を禁じれば、作物に対する農家のまなざしはさらに閉ざされてしまう。

 野党や農業関係者の間には、安倍政権による法改正を阻止したことへの高揚感が漂う。だが、法改正の見送りは目標ではない。多様な作物の担い手として、農家による自家採種の復権を目指すことが必要だろう。
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山田 優(農業ジャーナリスト)
農学博士。1955年生まれ。日本農業新聞記者出身で海外農業を担当してきた。著書に『亡国の密約』(共著、新潮社、2016年)、『農業問題の基層とは何か』(共著、ミネルヴァ書房、2014年)、『緊迫アジアの米――相次ぐ輸出規制』(筑波書房、2005年)などがある。
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