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移転2年後の豊洲市場の惨状

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【都政を考える 再検証・豊洲と築地①】豊洲市場は光害の元凶?

公開日: 2020/11/13 (政治, ビジネス)

開場の日に豊洲市場を訪問した小池知事=Reuters 開場の日に豊洲市場を訪問した小池知事=Reuters

澤 章 (都政ウォッチャー)

 10月11日、豊洲市場は築地市場から移転して2周年の節目を迎えた。だが、心から祝意を表明する者が果たしてどれだけいただろう。メディアの取り上げも、2年前の大々的な報道とは打って変わって寂しい限りだった。

 そんな豊洲市場も、日没が早まる今の時期、夕刻になれば施設全体に煌々と明かりが灯る。夜景として観賞する分には非常に美しい。しかし、周辺の住環境にとって話は別だ。市場の特性上、照明は一晩中つけっぱなしである。

 運河を挟んだ対岸には、オリンピックの選手村のマンション群が並ぶ。今はまだ無人だが、販売はもう始まっている。ベイエリアの眺望を望んでいざ住み始めたら、窓の向こうの照明はいつまでたっても消えることがない。カーテンを閉めれば済むかどうかは人それぞれだが、現時点ですでに「明るすぎる」との苦情が寄せられているという。豊洲市場は、光害の犯人扱いをされるという想定外の事態にも直面しているのである。

▽取扱量が4割減少した豊洲市場

 豊洲市場の経営状況は芳しくない。新型コロナで落ち込んだ客足が徐々に戻りつつあるとはいえ、中国観光客相手にぼろ儲けしてきた場内の寿司店に、開店前からの長蛇の列はない。本業の卸・仲卸業者の経営は、移転前から進行する長期的な取扱量の低迷に加えて、新型コロナによる需要の落ち込みで厳しさをさらに増している。

 豊洲市場の水産卸7社の総取扱量を見れば、その窮状は明らかである。2009年、54万トンだった年間取扱量が昨年は34万トンにまで激減。この10年で実に4割近くの落ち込みを記録した。金額ベースでは9%減の3970億円(2019年実績)に踏みとどまっているが、これは単価の上昇が反映されたに過ぎず、取扱量の大幅な減少は卸売市場の存在価値そのものを揺るがしかねない。

 2016年夏からの2年間、築地市場では豊洲市場への移転延期のゴタゴタが繰り広げられた。今振り返れば、小池都政1期目の一大政治ショーにすぎなかったことは明白だが、その最中にも、「市場飛ばし」の物流は着実に進行していた。水産卸の厳しい数字、物流環境の激変に卸売市場自体が適応できなかった結果である。

 なぜなら、青果部門では、市場外流通の逆境を跳ね返し業績を伸ばしている卸売市場が存在するからだ。1989年(平成元)年に秋葉原駅前の神田市場と荏原市場を統合して移転開場した大田市場である。10年前と比較して、取扱量で8%増、売上金額では24%も業績を伸ばしている。東京都が管理する11の卸売市場の中では、まさに一人勝ち状態である。

 そうした意味で、移転2年の豊洲市場は、存続の崖っぷちに立っている。このままでは、遠くない将来、「マグロのセリ」を売り物にする観光施設に成り下がってしまう恐れさえあるのだ。求められるのは業界一丸となっての身を切る努力だが、築地市場から引き継がれた甲論乙駁の「まとまらない」業界体質が足を引っ張る。

 将来展望を切り開く力のない豊洲市場には、それこそ、日本食文化遺産的な位置づけか、あるいは水産物流の中継センターへの転身といった暗い将来像しか用意されていない。

▽「千客万来施設」は本当にできるのか?

 「豊洲市場が観光施設に・・・・」と書いて、千客万来施設のことを思い出した。千客万来施設とは、卸売市場移転受け入れの条件として東京都と地元江東区が交わした約束事項の一つであり、築地市場の活気と賑わいを豊洲市場にもたらすために計画されたものである。だから、東京都としては必ず作らなければならない。

 水産仲卸売場棟用地の隣に用意された1.1ヘクタールの土地は、現在、駐車場として暫定利用されているが、本来は豊洲市場開場と同時に施設がオープンする予定だった。ところが、市場移転問題の最終盤に請負事業者との間でトラブった。きっかけは、小池知事の「食のテーマパーク」発言である。請負事業者にしてみれば、豊洲の千客万来施設と同じようなものが築地に作られては、
ライバル出現で困るというのだ。事業者は、話が違うと事業撤退をちらつかせ、訴訟も辞さずと態度を硬化させた。

 もともと当該施設は曰く付き物件だった。当初、名乗りを上げた大手企業が撤退した後、再度の公募が行われた。こうして選ばれた事業者は創業者の会長が牛耳る中規模企業だった。小池知事と老会長との間で狸の化かし合いがしばらく続いた末、2018年5月、急転直下、両者は事業継続で合意した。その際には、電通の社員が介在したとも言われている。締結された協定によれば2023年に開業することとされているが、果たしてこの約束は守られるのか。

 ホテル、温泉施設、レストラン街を軸とする事業計画は、インバウンドを見越して成立する内容だ。豊洲市場を訪れた国内外の観光客を引っ張ってきて初めて採算がとれる。新型コロナの状況が見通せず、国内需要も回復に時間がかかる中、体力的に十分とはいえない事業者が1、2年後に大規模な施設の工事に着工できるのか、大いに疑問である。

 千客万来施設は豊洲市場と一体的に整備されることが前提だ。裏返せば、千客万来施設の完成なくして豊洲市場の移転完了はないのである。事業者と東京都の動向から目を離してはいけない。
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澤 章(都政ウォッチャー)
1958年、長崎生まれ。一橋大学経済学部卒、1986年、東京都庁入都。総務局人事部人事課長、知事本局計画調整部長、中央卸売市場次長、選挙管理委員会事務局長などを歴任。(公)東京都環境公社前理事長。2020年3月に『築地と豊洲「市場移転問題」という名のブラックボックスを開封する』(都政新報社)を上梓。著書に『軍艦防波堤へ』(栄光出版社)、『ワン・ディケイド・ボーイ』(パレードブックス)、最新作に「ハダカの東京都庁」(文藝春秋)、「自治体係長のきほん 係長スイッチ」(公職研)。
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