みずほフィナンシャルグループ(FG)と三井住友トラスト・ホールディングスは28日に傘下の資産管理銀行を経営統合するため中間持ち株会社「JTCホールディングス」を設立することを決める。みずほと三井住友トラストの関係強化が一段階進み、将来の三井住友トラストとみずほ信託の経営統合が視野に入ってきた。
経営統合を決める2社は、みずほFGが筆頭株主の資産管理サービス信託銀行(TCSB)と三井住友トラストの子会社、日本トラスティ・サービス信託銀行(JTSB)。三井住友トラストが33%、みずほFGが27%出資する中間持ち株会社のJTCホールディングスを10月1日に設立し、その下に二つの資産管理銀行を置く。
みずほと三井住友トラストは昨年春に資産管理銀行の経営統合で基本合意書をかわし、ことし3月末までに正式合意する日程を明らかにしていた。しかし、交渉は難航した。当初は預かり資産規模の大きい三井住友トラスト傘下のJTSBが主導権を握るとみられていたが、みずほFGが巻き返しに動いたからだ。
三井住友トラスト側が新中間持ち株会社の社長はJTSBから、出資比率は34%を求めていたのに対し、みずほ側が強く抵抗した。結局、三井住友トラストは、新中間持ち株会社の筆頭株主にはなるものの、特別決議に反対できる3分の1超の出資34%の出資はあきらめ、33%とすることを受け入れた。社長も2年交代の輪番制とし、当初はみずほ側から出し、JTSBの田中次期社長は中間持ち株会社の副社長となる見通しだ。
中間持ち株会社の設立は決めるが、資産管理会社で最も重要な勘定系のシステム統合でどちらのシステムを採用するかは現時点では決まっていない。これも三井住友トラストが預かり資産の大きいJTSBのシステムでの一本化を主張したのに対し、みずほが抵抗して9月末までに決めるという先送りとなった。万が一、この交渉が難航するようなら、10月の中間持ち株会社の設立が先送りされる可能性もわずかだが残っている。
二つの資産管理銀行の合併(実質的には中間持ち株会社への吸収)は21年をめどにする予定だが、システム統合が固まらないため、まだあいまいな部分がある。
今回の資産管理銀行の統合は、二つの銀行グループの首脳間ではわずかに一か月程度の交渉で一昨年の12月に基本合意し、昨年春の基本合意書のとりかわしにこぎつけていた。
当時、スピード合意が実現したのは、三井住友トラストが金融庁首脳から三井住友銀行を傘下に抱える三井住友FGとの経営統合を迫られていたからだ。経営の自主権を失いかねないとみた三井住友トラストの常陰均会長(当時)が、中核子会社の統合でみずほFGとの関係を深め、三井住友FGのグループに入ることを拒否する道を選んだ。
みずほFGの佐藤康博社長(4月1日に会長)にしても、信託銀行最大手の三井住友トラストとの関係強化はライバルの三井住友FGをけん制するうえで有利との判断があったとみられる。
首脳同士の思いは強くとも、経営統合の詳細でもめるのは、よくあること。だが、今回の場合は、みずほサイドで信託部門に関しては旧富士銀行出身者の発言力が強く、旧日本興業銀行出身の佐藤社長の決断だけでは物事が進まないという事情もあったようだ。
とはいえ、銀行界では人員削減とシステムの統合を中心とするコスト低減は最大の課題となっている。巨大なシステムを抱える資産管理部門の統合は最大のテーマのひとつ。みずほFGと三井住友トラストの間でも、さらなる統合計画が大きな経営課題になりそうだ。
欧米にそれぞれある資産管理現地法人の経営統合や、アセットマネジメント部門の統合などが検討される可能性がある。さらに、三井住友トラストとみずほ信託銀行の経営統合も視野に入ってくるとみられる。