アベノミクス効果で雇用が創出されたと言えば聞こえは良いが、この2~3年の景気回復でコンビニ加盟店は東京・大阪など都市部を中心に人手不足に悩まされている。かつてはコンビニバイト言えば、高校生・大学生のアルバイトデビューや、無名のお笑い芸人・俳優、フリーター、主婦パートなどに丁度良い待遇で、アルバイトの象徴的存在だった。
そうした人々のみならず、ニートや不登校で引きこもり状態になった人の社会復帰の足掛かりとなることも多かったのである。しかし、ここに来てかつての主力店員だった学生や主婦などから「割に合わない」と敬遠されるようになっているという。
理由はコンビニの仕事量の増加だ。昔と違って市県民税も含めた公共料金の支払いに加えて、バス・航空・アマゾンなどの買い物の料金収納代行等々・・・ それに加えてフライヤーの導入がオーナー・店員を泣かせている。「洗浄などが大変」と言うのだ。
地方でアルバイト店員からオーナーに転じたNさんは、
「最近、久々に深夜勤務に自ら入ってみましたが、フライヤーの洗浄が大変の何の。これでは時給900円程度では割に合わない。10数年前、自分がバイト店員だった頃と全然違う。自分のバイト時代は深夜勤務はのどかなものでしたが」と語る。
かつては深夜客は少なかったものだが、24時間営業コンビニがすっかり社会に定着した今となっては深夜の来客数も多い。フライヤー洗浄は油を抜き、洗剤で洗い、煮沸消毒するなど手間がかかり、約30分はかかる面倒な作業だ。深夜でも来客数の多い店舗なら、かなりキツイ。深夜勤務に久々に入った店員がフライヤー洗浄の作業手順を間違え、パニックになることもあるという。
兵庫県のセブン-イレブンオーナーFさんによると、
「うちのお店は、この地域のコンビニでは一番高く時給設定しています。最低でも850円です。だけど、それはコンビニバイトの中で高めということでしかないですわ。求人を出しても昔のようには来ませんわ。スーパーなどはもっと時給を高くしていますしね。高校生は基本的に採用してへんかったのですが、最近では積極的に採用しています」
Fさんはオーナーになっておよそ10年目。その間、やる仕事は増加したという。
「昔やったら、深夜勤務はおでん容器の洗浄ぐらいやったんですけど、フライヤー洗浄もやらなあかんし・・・ どうにか深夜は1000円台の時給で辞める意思を撤回させた従業員さんに入ってもらってます」
従業員側の目線はどうなのだろうか。元パート店員の証言を聴くことが出来た。東京都内のコンビニ店舗で主婦パートだったGさんは、業務内容のハードさから体を壊した。
「労働時間は朝9時から午後1時までの4時間でした。休みはなく働き通し。人件費を節約しているお店でしたので、仕事の量が多いんです。昼間弁当などを買いに混雑するピークの時間などは大変でした。『残業するな』とオーナーから指示が出ていたのですが、残業をする時間も出てしまいました。重い物も運ぶ機会が多く、腰を悪くしてしまい辞めることになりました」
これではパート・アルバイトの象徴的存在からは程遠い。中国や韓国などの外国人留学生ですら、コンビニバイトを毛嫌いし始めているという。「コンビニバイトはブラックバイトになった」という声も一部にあり、時給を多少上げただけでは解決策が見つからない。コンビニ業界の新たな課題と言える。
「10数年前、自分がバイト店員だった頃と全然違う」 |
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コンビニはもはやブラックバイト、悲鳴を上げる従業員たち
公開日:
(ビジネス)
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角田 裕育(政治経済ジャーナリスト)
1978年神戸市生まれ。大阪のコミュニティ紙記者を経て、2001年からフリー。労働問題・教育問題を得手としている。著書に『セブン-イレブンの真実』(日新報道)『教育委員会の真実』など。
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