2月末以来の4度にわたるシステム障害の影響で、みずほフィナンシャルグループの坂井辰史社長の全国銀行協会会長への就任を2021年度は見送ることで調整が進んでいる。坂井社長が4月から1年間、全銀協会長を務める予定だった。3月17日の会見で坂井氏は「当面は就任しない」としていたが、完全に見送りの公算だ。
全銀協会長はメガバンク三行トップが1年交代で務めている。4月の新年度入り以降も現在会長の三菱UFJ銀行の三毛兼承頭取(4月から三菱UFJフィナンシャル・グループ会長)が3か月程度続投。その後は、みずほを飛ばして三井住友フィナンシャルグループの太田純社長が全銀協会長に就任する方向で調整が進んでいる。
10年前のみずほの大規模システム障害時とまったく同様に、三菱UFJが短期間引継ぎ、三井住友が繰り上げで会長行を務めることになりそうだ。
システム障害の原因が判然としない部分があり、金融庁が就任に強い難色を示したことが、全銀協会長就任見送りの直接的な原因。だが、完全見送りで調整が進んでいる背景には、坂井氏の責任を問う声がみずほ内外から高まっていることがある。坂井氏の進退問題につながる可能性もでてきている。
坂井社長はシステム障害の直後は会見に現れず、会見をみずほ銀行頭取で4月の退任が予定されていた藤原弘治頭取に押し付けていて、みずほ内部から批判する声があがっていた。当初は「(今回の問題は)お客様周りのことだからね」と記者に弁明を繰り返し、持株会社トップの自身の責任問題にならないよう予防線を張っていた。藤原頭取を会長にもしない引責辞任で納めたいとする意図が露骨だったとされる。
しかし、麻生太郎金融相や加藤勝信官房長官に叱責され、最後は金融庁の圧力もあり、謝罪会見を開かざるを得なかった。徹底的に調査し、原因究明と再発防止を図るよう金融庁は指示しており、お目付け役のために入検検査にも入っている。
このため、3月17日になって坂井氏はやっと記者会見し、今回のシステム障害について謝罪した。「(新システムMINORI稼働から)2年が経過し、過信や気の緩み、体制の緩みがなかったか見ていく」と述べたが、なぜ、2週間にわたり立て続けにシステム障害が起ったのか、原因を説明することはできなかった。
システム障害の原因究明のため坂井氏の全銀協会長就任も4月に予定していた加藤勝彦氏のみずほ銀行頭取の就任も見送りになった。「そもそも昨年秋に2021年度の次期全銀協会長を内定する際、当初はみずほ銀行の藤原頭取の名前が挙がっていたが、坂井氏の強い意向で持株会社の坂井社長に落ち着いた経緯がある」。