セブン&アイ・ホールディングスは30日、2017年2月期の最終利益予想を800億円と発表した。これは、当初予想の1720億円を大きく下方修正したものだ。6%の増益予想が一転、前期比50%減益予想となる。一見すると、カリスマ経営者が去ったあとの新体制下での業績悪化にもみえるが、井阪社長が率いる新体制が、負のレガシー(遺産)を踏み込んで処理した結果と言えそうだ。
最終利益の下方修正の最大要因は、不動産の帳簿価格の引き下げなど606億円に上る減損損失を計上した点だ。特に、お荷物となっている百貨店部門での買収時ののれん代のうち334億円を損失処理している。
さらにスーパー部門では、下期に値下げセールなどにより在庫の一掃を狙った措置をとる。そのための110億円の利益減の販売計画を立てた。こうした措置により、前の政権(経営陣)から引き継いでしまっている不良資産の圧縮をできる限り踏み込んで処理しようとの姿勢が見える。
裏返していえることは、来期以降の特別損失の処理を回避して、最終利益ベースでの急回復を狙った資産の「大掃除」だということ。言い換えれば、V字回復という跳躍に向けて、今期はかがみこんだ決算になったということだ。
V字回復の裏づけとなる営業利益は30日発表の業績修正でも、1815億円と当初予想比でわずかに5%の下方修正にとどまっている。前期の営業利益を約100億円上回っており、ほぼ横ばいとはいえ、稼ぐ力はまだ健在だ。
気になるのは、営業利益で3000億円台とほぼ一本足打法ともいわれるコンビニ事業の数字だ。本当に僅かだが、営業利益を当初予想に比べ64億円下方修正した。
本サイトが指摘してきたように、実はコンビニに出店面などでの飽和感が強く、今後、さらに利益がかさ上げできるかどうかは不透明だ。今後5年程度の視野に立つと、最大のポイントはコンビニ事業のビジネスモデルをどう転換するかだろう。
井阪社長は、10月6日の中間決算発表で、中期経営計画も発表する。足元の縮こまり決算という踏み台を作れたことで、現実的な明るい将来像を数字的に描くこともできるだろう。来期の最終利益でのV字回復はほぼ確実に準備できつつある。真価が問われるのは、売り上げが頭打ちの消費環境のなかで、営業利益をどう伸ばす戦略を打ち出せるかだろう。
その答えの鍵を握るのは、コンビニ事業である。
セブン&アイ、V字回復に向けかがみ込み |
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跳躍への踏み込み セブン&アイが今期純利益を大幅下方修正
公開日:
(ビジネス)
井阪社長=Reuters
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土屋 直也:ネットメディアの視点(ニュースソクラ編集長)
日本経済新聞社でロンドンとニューヨークの特派員を経験。NY時代には2001年9月11日の同時多発テロに遭遇。日本では主にバブル後の金融システム問題を日銀クラブキャップとして担当。バブル崩壊の起点となった1991年の損失補てん問題で「損失補てん先リスト」をスクープし、新聞協会賞を受賞。2014年、日本経済新聞社を退職、ニュースソクラを創設
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