ファミリーマートとユニーグループHDが経営統合の交渉を続けているが、基本合意が当初予定よりずれ込んでいる。難航の一因は、ユニー傘下のコンビニ大手、サークルKサンクスに不満が強いからとの見方がでている。
サークルKサンクスの加盟店主(オーナー)の間では、「ファミマの方がブランド力は高いし、コンビニ加盟店ユニオンの活動も活発なので、合併は歓迎」という声もある。一方で、「ウチはサークルKサンクスと契約したのであって、ファミマと契約したんとちゃう、と言うてるオーナーもようさんおるわ。それに、おにぎりなんかのプライベートブランド商品なんかは、ファミマより上という自負をサークルKサンクスは持っている。am/pmのようにファミマの軍門に降った方が必ずしも得という訳やあらへん。それに本部と加盟店は一応対等の関係やから、加盟店の意見も訊かんと本部同士だけで看板を決めるなんておかしいわ」とある関西のサークルKサンクスのベテランオーナーは心情を吐露する。
先週末、ファミリーマートやサークルKサンクスは「ファミリーマートにブランド統一との報道はまだ決まったことではない」とするプレスリリースを公表するとともに、オーナー向けに「現在まだ検討中」と内部通達(写真)を出した。拒否感が強いサークルKサンクスへの対応策と見られている。
ファミリーマートは2010年~2011年にかけてam/pmを吸収合併し、店舗数を飛躍させた。しかし、am/pmの吸収合併と、サークルKサンクスでは「まるで違う」と指摘する関係者も少なくない。
サークルKサンクスとファミリーマートの社風が違い過ぎるのである。am/pmは「コンビニ業界一緩い」と言われた社風で、店舗数も業界下位だったので難なくファミリーマートに吸収できたが、「よそ者に厳しい」と言われる名古屋を本拠とするサークルKサンクスの社風は独特だ。
たとえば、もう15年以上も前になるが、宇治田原店の取り壊し事件は有名だ。1998年当時、サークルk宇治田原店のオーナーだった小山潤一さんは開業してからというものの、売上の額が本部が当初予想したものと異なり、低い数字しか出なかったので本部と軋轢が生まれていた。
そんな小山さんの態度を苦々しく思ったサークルK本部は何と60人もの社員らが押し掛け、クレーンで看板を撤去し、所品、現金を持ち去るという店舗破壊に出るという事態となり、京都府警が出動する事件となったが、警察官が本部社員に店を破壊するのを止めるように忠告しても本部社員は無視し、小山さんの店舗は閉店を余儀なくされたという。小山さんはその後、『現代コンビニ商法―サークルKに見る奴隷契約』{かもがわ出版}という著書を刊行している。
すでに17年も前の事件なのであるが、サークルKとサンクスが合併してから、サンクスオーナーたちは、コンビニ加盟店ユニオンが出来、他チェーンのオーナーが次々と実名、顔出しでマスコミに露出する中、「サークルKサンクスは、下手に取材に応じたことがばれると何をされるかわからへん」と怯えていたものだ。
サークルKサンクスの店舗数は約6300店舗、約1000店舗程度しかなかったam/pmとは異なり、社員のプライドも高く名古屋企業という独特の社風だけにファミリーマートの社風とマッチングするのかが注目される。
「社風の違い」越えられるか |
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【コンビニ事情】ファミリーマート・サークルKサンクス統合は前途多難
公開日:
(ビジネス)
Reuters
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角田 裕育(ジャーナリスト)
1978年神戸市生まれ。大阪のコミュニティ紙記者を経て、2001年からフリー。労働問題・教育問題を得手としている。著書に『セブン-イレブンの真実』(日新報道)『教育委員会の真実』など。
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