燃費試験に関する不正行為を明らかにした三菱自動車工業は26日に二回目の会見を開いて、その後判明した事実を明らかにした。
しかし、「(自分たちの調査では)信じてもらえないだろうから外部専門家による特別調査委員会に原因追求はゆだねている」(相川社長)と前回の会見と同様に特別委員会を隠れ蓑にするような姿勢に終始した。肝心なことは明らかにできない、お粗末会見の繰り返しとなってしまった。
この日の会見で配られた「当社製車両の燃費試験における不正行為に係わる国土交通省への報告について」と題したA4で1枚のプレスリリース。法規と異なる「高速惰行法」を使った経緯を記しながら、「当時の判断理由については調査中」と逃げている。
原因や責任伝も「未解明で、引き続き調査を進める」とし、軽自動車以外の車両についても「十分な調査が進んでおらず、引き続き調査」と調査中との説明が繰り返し並ぶ。
何かを隠し、何かを守ろうとしているのではないかと疑りたくなる内容だ。書類を調査したというばかりで社内の関係者へのヒアリングは発表できる内容でないと言うばかりだった。
関係者がどう発言しているか、把握できていないという説明はにわかには信じがたい。意図性があったと前の会見では明言しており、その立場は今回の会見でも変えていない。明らかな不正データが申告されていたから意図性を認定したというのだが、ミスでなく意図性があったとするには、行為者がそれを認めていなければできない。不思議な説明だ。
前回の会見では「担当部署の部長が(不正を)指示した」と認めていると説明したが、今回の会見では「その部長は発言を撤回している」と調査内容を後退させた。上司のその部長への指示を隠したいのではないかとの疑いが強まる。
今回の会見では、社内の燃費目標は当初1リットルあたり26.4kmだったのが、2年の間に5回にわたって上方修正され、29.2kmまで引き上げられたと明らかにした。ある記者の「ライバルのダイハツの燃費が公表されそれに負けないように引き上げられたのではないか」という質問には「それが影響したと考えられる」(副社長)と認めている。負けられない燃費競争が不正の理由と言っているのも同然だ。それなのに原因はわからないという矛盾はなんだろう。
この5回の燃費目標の引き上げの責任者はだれかと問われ、「社内会議には社長も出席しているので、最終的には社長」と副社長が説明したのに対し、相川社長は「社長のところに上がってくるときにはできる数字という調整がなされているもの」と補足した。責任逃れに気を配っている印象は否めない。
相川社長は「全容把握ができておらず、(三菱グループへの)支援要請などはしていない」と語ったが、補償が多額に上り、経営危機であるのはもはや取り繕いようがない。だが、三菱グループ幹部からは「もう助けられない」といった声が漏れてくる。お粗末会見を繰り返す間に傷口はさらに広がろうとしている。
前回の会見との食い違いや後退も 三菱自社長会見 |
あとで読む |
三菱自 繰り返されるお粗末会見
公開日:
(ビジネス)
Reuters
![]() |
土屋 直也:ネットメディアの視点(ニュースソクラ編集長)
日本経済新聞社でロンドンとニューヨークの特派員を経験。NY時代には2001年9月11日の同時多発テロに遭遇。日本では主にバブル後の金融システム問題を日銀クラブキャップとして担当。バブル崩壊の起点となった1991年の損失補てん問題で「損失補てん先リスト」をスクープし、新聞協会賞を受賞。2014年、日本経済新聞社を退職、ニュースソクラを創設
|
![]() |
土屋 直也:ネットメディアの視点(ニュースソクラ編集長) の 最新の記事(全て見る)
|