絶対的カリスマ性を誇ってきたセブン-イレブンの創業者である鈴木敏文前会長(現名誉顧問)が退任して3カ月以上経った。井阪セブン&アイ新社長は「風通しの良い、言いたいことの言える社風にしていく。同時に現場の声を大切にしていきたい」と語ったが、現在の様子はどうなのだろうか?
「鈴木会長というカリスマがいなくなった結果、指揮体系が不明確になっている。井阪社長はセブン-イレブンからセブン&アイの社長に移ったし、新社長の古屋さんではまとまらない」という声が現場から聞こえてくる。
井阪社長の後任としてセブン-イレブンの社長に就任した古屋一樹氏は、「クリスマスケーキや年賀状などの予約は気合で取るもの」と主張するような古い体育会系のキャラクターで、「時代に合わない」という声がオーナーや本部社員からも聞こえてくる。
あるオーナーによると、現場力重視と言うのでOFC(店舗経営相談員)とも相談して、利益がでていないドーナッツの販売中止をオーナーの判断でできるようにしたいと意見具申したという。しかし、役員会議にかけられたものの、決められずたなざらしになったという。その一方で、革新派の役員からは、現場の判断でやればいいという「黙認」の指示がでて、鈴木会長時代のように指揮体系が明確でないのだという。
ただ、加盟店への押さえつけも鈴木会長時代にくらべ明らかに薄れたというのがオーナー全般の受け止め方だ。すでに、現場の見切り判断でドーナツの販売をやめる店は増えてきている。やはり利益が薄いおでんも止めるところがチラホラでてきている。
鈴木前会長の売り上げ数字などを重視する「統計データ主義」から「現場主義」への転換は、なし崩し的に進んでいる。
OFCに意味不明な仕事も目立つという。例えば、「OFC(店舗経営相談員)に『店の写真を撮って来い』という指示を出しているようで、パチパチ店内の写真を撮っているけど、目的がわからない」と語るオーナーが少なくない。
おそらく、指示を受けた本部社員もよくわからないのだろう。店内の様子を写真に撮るなら、鈴木前会長時代なら具体的に、「トイレは汚れていないか。商品の欠品や陳列に乱れはないか」といったポイントが指示されただろう。
皮肉なことにワンマン経営者がいなくなったセブン-イレブン本部はどのような指示を店舗に出せば良いのか呆然としているように見えるという。
その結果、「鈴木信者が、また社内で幅を利かせている」という見方も一部のオーナーからは漏れてくる。教祖とも言える存在感だった鈴木前会長の経営手法や理論を紐解いて解説したり、すがりつくムードが消えないという。
今年5月26日に井阪新社長は「100日で総括を行う」と明言した。100日まで後あと1ヶ月以上もあるが、どのような総括結果が出てくるのか、それを浸透させることができるのか注目される。
カリスマ不在のセブン-イレブン、指揮命令系統が不明確 |
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井阪新体制でも、「現場重視」徹底できず
公開日:
(ビジネス)
井阪社長=Reuters
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角田 裕育(政治経済ジャーナリスト)
1978年神戸市生まれ。大阪のコミュニティ紙記者を経て、2001年からフリー。労働問題・教育問題を得手としている。著書に『セブン-イレブンの真実』(日新報道)『教育委員会の真実』など。
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