みずほフィナンシャルグループ(FG)は8月31日に8月20日に起こったシステム障害に関する報告書を金融庁に提出した。原因が究明しきれていないが、経営陣の責任問題が浮上している。グループトップの坂井辰史みずほFG社長の引責辞任は避けられない情勢となっている。
8月20日のシステム障害は、店舗と勘定系システムをつなぐサーバーのディスクの故障が直接的な原因だが、なぜこの故障が起こったのか、判明していない。さらに、バックアップ予備機が働かず、復旧まで最終的には14時間もかかったが、なぜ予備機が働かなかったかもはっきりしない。
障害の原因がわからず、再発防止策も立てようがないのが現状。6月半ばに坂井社長は「2度とこのような事態は起こさない」と言及していたが、2か月もたたないうちの発言は反故になった。
原因究明や再発防止策の確立するのは長期化しそうだが、度重なるシステム障害に金融庁は、ガバナンス(企業統治)に問題あるとして経営責任の明確化を求めるのは確実だ。みずほグループ内でも一般の社員(行員)から関連会社経営陣に至るまで「けじめ」を求める声が広がっている。
今回の障害はみずほ銀行で発生したが、みずほ信託でもシステム上に保管されていた開発の一切を記録した重要文書が消失している。消失を検知するはずのシステムも長期にわたって稼働しないという不祥事が発覚していた。
それを関係する取引先や金融当局に報告しておらず、隠蔽疑惑も指摘されている。今回の障害はみずほ銀行で発生しているが、信託にもシステム不祥事が広がっていたことで、グループトップの坂井氏の責任問題は避けようがない。
今回の8月20日の大規模障害の前から、坂井社長の引責を求める声はみずほFGの指名委員会や金融庁から上がっていた。坂井社長には春先の大規模障害の時から、責任逃れの姿勢がありありとみえ、金融庁ばかりかグループ内からも不信感が広がっていた。
金融庁幹部は坂井社長と会おうせず、日銀も含め金融当局との折衝はもっぱらみずほ銀行の藤原頭取が務める状況となっていた。
こんな経緯もあり、8月の大規模障害が発生するまでは、坂井社長が退任し、みずほFG社長は藤原みずほ銀行頭取が一時的に兼務し、早期に外部からトップの人材を求める案を中心に人事刷新を進めようとしていた。しかし、みずほ銀行で再び障害が起こったことで、一時的にしろ藤原頭取がFG社長を兼務するのは難しくなっている。
このため、一気にみずほFGのトップ陣を外部から招へいする案に移行し、すでに人選も始まっている。しかし、取引先企業の経営者などは利益相反の恐れがあり、完全にもともとの企業との関係を絶つ必要があるとされ、それが人選を難しくしている。いまは、みずほグループの関連会社のトップ級などいわゆるみずほOBに広げて人選が進んでいるもようだ。ただ、最終的に坂井社長の後任を決めるのは、時間がかかるとの見方もでている。