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東芝会計、思い出す銀行の決算操作

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東芝の不正会計はグレーゾーンとの見方も

公開日: 2015/08/19 (ビジネス)

森岡 英樹 (経済ジャーナリスト)

 「経営の新体制も決まり過去分の決算訂正も公表した。監査法人の監査を経て8月末までに2014年度の有価証券報告書を提出する。東芝問題は一応の山を越えたと受け止めている。東芝の事業領域は分厚く、経営そのものが揺らぐことはないと確信している」
 東芝のメーンバンクである三井住友銀行の幹部は、不適切会計問題で揺れる東芝をこう気遣う。しかし、特設注意市場銘柄として上場廃止は免れているものの、財務基盤の劣化は避けられず、国内外の株主等からの訴訟の可能性も残る。東芝の前途はまだ霧がかかったままと言っていい。
 不適切な会計処理について、東芝の第三者委員会は7月20日の報告書で「経営トップの関与等に基づいて多くのカンパニー(社内分社組織)において同時並行的かつ組織的に実行又は継続され、経営判断として行われたと言うべきである」と厳しい総括を行っている。
 結果、2009年3月期から14年4~12月期の約7年間を対象とする過去決算訂正の減額分は2130億円に上った。この間に稼いだ税引き前利益の合計の4割近くに相当する大幅な減額であり、市場、顧客、株主を欺いた罪は免れ得ない。15年3月期決算は最終赤字となることも正式に公表された。
 しかし、社会的に厳しく糾弾される東芝の不適切な会計処理ではあるが、内心では同情する経済人は少なくない。東芝問題は「内紛が招いた不祥事」というのが財界の偽らざる本音だろう。なぜなら、東芝の不適切な会計そのものは、一昔前まで横行した「決算操作」に限りなく近いグレーゾーンにほかならないためだ。
 東芝の不適切な会計処理はインフラ関連が発端だった。工事が長期にわたる案件の収益を段階的に計上する「工事進行基準」で、原価の過少計上などが発覚した。その後、他の分野でも売上原価や営業費の翌期以降への繰延べや不透明な在庫評価、減損処理の先送り等が露呈した。
 期間利益を嵩上げするためになり振り構わぬ操作がほぼすべての事業領域で行われていた構図だ。第三者委員会の報告書は、「経営トップらによるみかけ上の当期利益の嵩上げが目的」で、「チャレンジと称して過大な目標設定がなされ目標必達のプレッシャーが期末直前に執拗に加えられた」と指摘し、「不適切な会計処理が外部からは発見しにくい巧妙な形で行われていた」と指弾している。
 しかし、これら不適切な会計処理の手法はいずれも古典的なもので、合法的な決算操作と紙一重でもある。このことは2000年代初頭にかけて不良債権処理に苦しんだ銀行の決算操作を彷彿とさせる。
 例えば、銀行の決算操作では次のような期末対策が横行した。「恒常的に多額な資金需要を抱える親密な信販会社や消費者金融会社等のノンバンクに対し、期末直前に固定金利での借り入れを半ば強要する。それを借入と同時に変動金利に変える金利スワップを組ませる。
 この一連のオペレーションで銀行には多額な金利スワップ手数料が期末までに前倒しで入る仕組みだ。いわゆる“アップフロント”と呼ばれる手法で、期末の利益目標を達成するための究極の裏ワザとなっていた」(メガバンク元役員)というものだ。
その後、大手銀行では中小企業へもデリバティブを販売し、同様の手数料収益の嵩上げを行った。その中には、為替リスクとは無縁の国内企業に対して為替デリバティブを嵌めこんだケースも少なくなかった。いすれも銀行の優越的地位の濫用が問題視されかねない事例だった。
 これらの決算操作は、当初は不良債権処理による過小資本の回避であり、国有化を免れるためであった。その後は公的資金の返済競争に起因する利益の嵩上げが目的となった。東芝の不正会計の背景には経営陣による当期利益至上主義があったが、その誘惑は過去も現在も変わらず経営者を不透明な決算操作に駆り立てるということだろう。
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森岡 英樹(経済ジャーナリスト)
1957年生まれ、 早稲田大学卒業後、 経済記者となる。
1997年米国 コンサルタント会社「グリニッチ・ アソシエイト」のシニア・リサーチ ・アソシエイト。並びに「パラゲイト ・コンサルタンツ」シニア・アドバイザーを兼任。2004年 4月 ジャーナリストとして独立。一方で、「財団法人 埼玉県芸術 文化振興財団」(埼玉県100%出資)の常務理事として財団改革に取り組み、新芸術監督として蜷川幸雄氏を招聘した。
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