大規模なシステム障害が相次いでいるみずほフィナンシャルグループ(FG)とみずほ銀行に対し、金融庁はシステムの管理命令を業務改善命令の形で発動する考えを固めた。異例で強硬な措置で、金融界には衝撃が走っている。
週内にも発動される措置は、システムの更新作業や保守業務を共同で管理し、運営体制の変更も命じることができる。金融庁がシステムを直接監督するという。
金融庁は直接の介入を今後も起こりうるシステム障害を最小限にするための措置と説明するとみられるが、システムは銀行業務そのもの。システムを直接監督と言う形で「占領下」に置くことは、銀行を「占領下」に置くこととほぼ一致する。
銀行が新しい商品やサービスを提供しようとすれば、そのためのシステムの構築や改変が不可欠。システムを金融庁の管理下に置くことは、金融庁の許可なく新たな業務は一切できなくなる。
今回の措置は年内をメドにしている一時的な措置だが、金融庁に障害を起こさせない管理をするシステム部門に関する能力があるとは思えず、今回の措置はシステム部門を通じて、みずほFGとみずほ銀行の全体に対して強い監督をすることになる。
背景にあるのは、みずほグループに対する金融庁の不信感だ。相次ぐシステム障害を目にして、単にシステム部門の問題というより金融グループ全体の社風やガバナンスに問題があるとみるようになっていた。
この問題の改善には、思い切ったトップクラスの人事の刷新が不可欠とみて、坂井みずほFG社長の退任を含む人事の大幅な交代を求めていた。だが、坂井社長がこれに反発し対立状態となっていた。
委員会等設置会社であるみずほFGでは、トップクラスの人事は指名委員会で決まる。社外取締役の発言力が強い。社外取締役のなかには、坂井社長では再建は難しいとみる向きがある一方で、システム問題以外の坂井社長の銀行とグループの改革の方向性は正しいとの見方もあった。
今後は、トップ人事の問題を中心に金融庁との関係改善が焦点となるとみられるが、より抜本的な経営改革を進めるため、トップクラスの後任人事に他のメガバンクのOBなどの招へいも関係者の間では取り沙汰され始めている。
金融庁の異例の措置の背景には、麻生財務相・金融担当相の強い意向もあったとされ、来月早々に発足する新内閣の人事にも微妙な影響を与えそうだ。