武田薬品工業は14日に発表した2020年3月期の業績予想のなかで、2019年1月に買収が完了したアイルランドの製薬大手シャイアー社に関連する買収関連費用が9500億円に上ると明らかにした。
2019年3月期にも買収関連費用が3119億円になったと発表しており、合計で約1兆2600億円もの買収費用が武田の業績にのしかかる。
買収関連の費用が今期も1兆円近くに上ることもあって、最終損益は3830億円の赤字と予想する。ウェバー社長は記者会見で「想定内。あまり心配していない」と語ったが、6兆円の巨額買収に伴うものとはいえ、1兆2600億円もの買収費用が買収後に発生するのは異常だ。
これまで開示していなかった巨額費用の発生でもあり、買収に反対した武田の関係者などを中心に改めて経営責任論が浮上するのは必至だ。6月の株主総会に向けて、ウェバー社長の退陣を求める声がでてくるだろう。
今期の買収関連費用9500億円の内訳は、「製品等に係る無形資産償却費」の4390億円、「棚卸資産の公正価値調整」で2530億円。ほかに、統合のための営業費用として1540億円かかるとしている。買収のための新規負債の費用として、ブリッジローン(本格的な資金調達までのつなぎ融資)の手数料などで870億円も見込む。ほかに買収に伴う金融費用として150億円かかると予想している。
武田は5月9日にシャイアーの眼科薬をスイスのノバルティスに最大53億ドルで売却すると発表、最大100億ドル規模の資産売却を目指すとしている。売却益の額次第では赤字額が縮小する可能性もあるが、売却益が大きいものはそれだけ収益力が高いとも言え、将来的に体力を弱めるだけとの批判もでてくるだろう。
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15日の東京株式市場で武田薬品の株価は急落、午前11過ぎには下げ幅が7%以上に広がった。