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バイデン米大統領が月内サウジ訪問か 

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【エネから見える世界】サウジへ増産要請 失敗なら大ピンチ 

公開日: 2022/06/06 (マーケット)

バイデン大統領=Reuters バイデン大統領=Reuters

阿部 直哉 (Capitol Intelligence Group 東京支局長)

 国際エネルギー市場で原油価格の高騰が続くなか、石油輸出国機構(OPEC)とロシアなど非加盟の主要産油国で構成するOPECプラスはこのほど、原油の追加増産することで合意した。これを受けて原油市場ではいったん売りが優勢となったものの、増産幅が限定的だったとの見方から買い戻されている。

 エネルギー市場では、今後のマーケット動向を予測するにあたり、他の産油国と比べ、増産余力があるとされるサウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)の出方に注目すべきとの指摘がある。

 OPECプラスでは、ウクライナ危機の当事国であるロシアと、他の構成国が追加増産の合意を得られるかに焦点が絞られた。結果として7月分の増産幅を日量64万8,000バレルとし、同43万1,000バレルとしてきた6月までの方針から拡大すると決定した。ただ、市場関係者からは増産幅が限定的と受け止められた。

 欧州連合(EU)は5月末、ベルギーのブリュッセルで臨時首脳会議を開催し、ロシア産石油の輸入禁止で合意した。陸上パイプライン経由の輸入分は除外対象で、海上輸送分だけに限定されるが、EUは年内にロシアから約9割の輸入削減が可能との見解を示した。

 EUは今後、輸入の代替先を急がなければならない。その中で注目される市場の一つが米国だ。シェール革命の結果、原油生産量で世界一となった米国にとっては、欧州向けに供給を増やすことでロシアへの制裁強化にもつながる。

 ロシアによるウクライナ侵攻後の3月末、バイデン米政権は原油供給に対する懸念や、原油価格の高騰を緩和することを目的に戦略石油備蓄(SPR)を過去最大級の規模で取り崩すとともに、国内での原油増産(2022年は日量100万バレル分)にも取り組む姿勢を明らかにした。

 こうした状況下にもかかわらず、米シェールオイル・ガス企業は増産にあまり乗り気でないとの情報も伝わってくる。石油関連設備の能力がすでに限界であるという技術上の問題に加え、新型コロナウイルスの感染拡大でエネルギー需要が急減した結果、掘削関連の技術者や労働者の多くが業界を離れたため、彼らを現場に引き戻すことはたやすくないとされている。

 それよりも大きな懸念があるようだ。米シェール業界関係者に取材したところ、原油、天然ガスや液化天然ガス(LNG)の需要が欧州を中心に数年先まで期待できるのかが不透明だという点だ。増産設備の新設などには稼働までに数年単位の時間がかかるため、あるシェール企業の関係者は「ウクライナ危機の真っただ中にある現在、欧州各国は目先の原油やLNGの確保に躍起とならざるを得ないだろうが、並行してロシア依存の脱却で再生可能エネルギー導入をさらに急ぐとみられる。

 そのため、数年先に彼らは化石燃料としての石油やLNGをいまのように必要としなくなるのではないか」と危惧する。

 そこで注目されるのがサウジアラビアだ。ガソリン価格の高騰で原油高対策を優先させなければならない米政権は、増産余力が日量約180万バレルとされるサウジに増産を期待するしかないと判断したためか、バイデン大統領が6月下旬にサウジを訪問するとの観測が広がっている。

 ガソリン高を中心とするインフレ率の上昇は米国民から不評を買っている。物価高の原因がバイデン氏の経済失策によるものとされ、大統領支持率も下げ止まらない。この状態が続けば、11月に実施される米中間選挙で与党民主党の敗北が決定的との見方も根強い。

 6月3日の米国先物市場では、ウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)原油相場(期近)が1バレル当たり120ドル台を付けるなど、マーケット関係者の間では、原油相場の下げ余地がないとの見方が一般的だ。今後の原油相場の見通しについて「バイデン大統領が中東を訪問してもサウジによほどの見返りがない限り、大幅な増産幅を確約しないだろう」(国内のエネルギー・アナリスト)との指摘もある。

 他方、グラムザ・キャピタル・マネージメント(シカゴ)のダニエル・グラムザ社長は「ファンダメンタルズに関する大きなニュースが飛び込んでこなければ、テクニカル・チャートからみてWTI原油価格は当面、1バレル110ドルから120ドルのレンジ取引が続く」と指摘する。

 サウジにさらなる増産を求める米政権にとり、悪化したままの外交関係が懸念される。2018年10月に起きたサウジの著名ジャーナリスト、ジャマル・カショギ氏の殺害事件について、米政府は2021年2月、この事件に(サウジの)ムハンマド皇太子が関与したと結論付けた。これを契機に外交関係が一気に冷え込んでおり、信頼関係が再構築されるかがカギとなる。

 外遊が実現すれば、劣勢挽回を狙うバイデン氏に好機となる。ただ、サウジから大幅増産という実利を引き出せなければ、さらに窮地に追い込まれることも予想される。バイデン大統領の中東訪問は政権運営の正念場となりそうだ。
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阿部 直哉(Capitol Intelligence Group 東京支局長)
1960年、東京生まれ。慶大卒。Bloomberg Newsの記者・エディターなどを経て、2020年7月からCapitol Intelligence Group (ワシントンD.C.)の東京支局長。1990年代に米シカゴに駐在。
著書に『コモディティ戦争―ニクソン・ショックから40年―』(藤原書店)、『ニュースでわかる「世界エネルギー事情」』(リム新書)など。
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