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OPECプラス減産合意でも、原油価格反転は期待できず

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【エネから見える世界】OPECプラスに米国も加わる減産体制はできたが・・・

公開日: 2020/04/13 (マーケット)

Reuters Reuters

阿部 直哉 (Capitol Intelligence Group 東京支局長)

 石油輸出国機構(OPEC)とロシアなどの産油国で構成するOPECプラスが日量970万バレルの減産で最終合意したことが13日までに分かった。『ブルームバーグ・ニュース』などの海外報道によると、OPECプラスのほか、産油国の米国やカナダ、ブラジルも370万バレルの減産のほか、20カ国・地域(G20)加盟国が130万バレル相当の減産に応じる姿勢を示したという。

 ただ、産油各国が自発的に減産するというよりは、低価格による生産縮小が反映された結果との見方も強く、新型コロナウイルス感染拡大の先行き不透明感から、市場関係者の間では「原油価格は上値を追う展開になりにくい」(エネルギー・アナリスト)との指摘が出ている。

 原油暴落の背景として、新型コロナウイルスの世界規模の蔓延によるエネルギー需要の減少観測に加え、今年3月6日に開催したOPECプラスでサウジアラビアが提案した日量150万バレルの減産継続案をロシアが拒否し、決裂したことが挙げられる。OPECプラスは主要産油国が石油の供給量を調整する枠組みで、OPEC加盟国とロシアなど非加盟の10カ国が2016年12月に設立で合意、17年1月から協調減産を開始した。

 3月の協調減産の継続に失敗したサウジアラビアは一転、日量970万バレルの原油生産量を4月から1,230万バレルに引き上げると表明。OPECの盟主とされるサウジアラビアが原油市場の調整役を自ら放棄したとの失望感が広がり、原油安に拍車をかけた。

 OPECプラスが原油減産の歩み寄りに失敗したことを尻目に、世界最大の原油輸入国である中国の動きが注目された。3月20日付の『ニューズウィーク日本版』は「中国全土の港に横付けされているVLCC(20万~30万トン級の大型タンカー)84隻が一斉に錨をあげ、一カ所に集まってペルシャ湾に向かった」と紹介。サウジアラビア産原油が3割暴落したことを好機と捉え、中国政府が事前に指示を出していたという。

 中国の石油消費量は1日当たり1,280万バレル程度で、派遣したタンカー84隻に原油を満載したとしても計1億6,800万バレルなので、10日間ほどの消費量でしかない。ただ、原油安が継続すれば、中国勢の大型タンカーが再び、大挙してペルシャ湾に向かうこともあり得るだろう。

 世界最大の原油生産国である米国でも、原油暴落はエネルギー業界に甚大な影響を及ぼし始めた。ノースダコタ州バッケン地域でシェールオイル生産を手がける上場企業のホワイティング・ペトロリアムは4月1日、日本の民事再生法に相当する米連邦破産法11条(チャプター11)の適用を申請したと発表した。負債総額は28億ドル(2019年末時点)とされる。

 3月20日にはニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)でWTI原油相場(当限)の終値が1バレル22.43ドル。取引時間中に一時19.46ドルを付けるなど、2002年2月以来、18年ぶりに20ドルの節目を割り込む場面があった。

 シェール開発企業は財務基盤が脆弱なため、原油価格の低迷が続いた場合、破綻するシェール企業が今後も続出すると予想される。エネルギー業界からの支援を受けるトランプ米大統領にとり、今年11月の大統領選挙で支持基盤を失いかねず、石油市場の安定化は急務の課題である。

 世界最大の原油輸出国であるサウジアラビアにとっても、さらなる原油安は国家財政を直撃する。昨年末に新規株式公開(IPO)した国営石油会社であるサウジアラムコの株価への影響も必至だ。

 3月にサウジアラビアとロシアとの減産協議が物別れしたことを受け、サウジアラムコは代表油種の公式販売価格(OSP)を過去約30年で最大の値下げに踏み切った。これをきっかけに、石油市場では価格戦争に突入したとの思惑からサウジアラムコの株価が3月8日、上場後初めてIPO価格(32リヤル)を下回った。

 こうした状況下、サウジアラビアは米テキサス州政府とも接触するなど、石油市場の安定化に向けて本腰を入れた。テキサス州政府はサウジアラビアと意見交換し、原油生産量の制限設定を検討する必要があると伝えたという。他方、米連邦政府とも連携。3月21日付の『ロイター通信』によると、トランプ政権は米エネルギー省(DOE)高官をサウジアラビアに派遣すると表明。米政府は当時、サウジの増産姿勢を踏みとどまらせるよう躍起だったようだ。

 原油安による打撃はロシア経済も同様だ。ロシア政府は今年2月初旬、落ち込んだ経済成長率を引き上げるため、2021年に2%台後半まで回復させる目標を掲げ、44兆円相当に上る財政出動計画を明らかにした。19年は石油や天然ガスの輸出が低迷し、エネルギー資源大国のロシアは、待ったなしの経済改革に取り組まなければならない状況に置かれている。

 3月初旬の時点で「原油価格の下落はガソリン高を嫌う消費者にとってよいことだ」と公言していたトランプ大統領だったが、4月9日にロシアのプーチン大統領、サウジアラビアのサルマン国王と相次いで電話会談し、石油市場の安定化に向けた共通認識で一致したことを明らかにした。12日にも再度、3首脳は電話会談し、OPECプラスによる減産の最終合意を互いに支持したという。

 今後のニューヨーク原油相場の見通しだが、楽観的な見方は少ない。コロナ禍の先行き不透明感に加え、世界で生産される石油生産量の2割に相当する日量2,000万バレル以上が余剰分として残るとみられるため、前出のエネルギー・アナリストは「(今回の合意を)積極的な減産とみる市場関係者は少ないだろう。WTIは1バレル20ドル割れを試す展開もあるのではないか」と指摘する。

 ウイルスという見えない敵との戦いで、国際社会は現在、終息どころか収束の見通しすら立たない状況にある。新型肺炎コロナウイルスの感染拡大によって、あらゆる経済活動が停滞を余儀なくされる一方、皮肉にも地球全体の温室効果ガス(GHG)排出量が大幅に減少していると報告されている。コロナ禍は、環境と経済の両立、これからのエネルギーの在り方を人類に考えさせる天の啓示かもしれない。
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阿部 直哉(Capitol Intelligence Group 東京支局長)
1960年、東京生まれ。慶大卒。Bloomberg Newsの記者・エディターなどを経て、2020年7月からCapitol Intelligence Group (ワシントンD.C.)の東京支局長。1990年代に米シカゴに駐在。
著書に『コモディティ戦争―ニクソン・ショックから40年―』(藤原書店)、『ニュースでわかる「世界エネルギー事情」』(リム新書)など。
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