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FRB議長講演 利上げ慎重をアピール

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【木内前日銀政策委員の経済コラム(102)】ハト派議長はFRB内タカ派を抑えられるのか

公開日: 2021/09/02 (マーケット)

Reuters Reuters

 8月27に開かれたカンザスシティー連銀主催の経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」で、FRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長は資産買い入れの段階的削減策、いわゆるテーパリングについて「年内実施が適当と考える」と発言した。これで、早ければ次回9月のFOMC(米連邦準備制度理事会)、遅くとも12月のFOMCまでにテーパリング開始が決定される可能性が高まった。

 金融政策に関するFOMC内でのコンセンサスは、FOMCの声明文とその後の議長の記者会見で公表するのが通例であることを踏まえれば、パウエル議長がこのジャクソンホール会議でテーパリングに言及しないことも十分に考えられた。

 しかし、金融市場の注目があまりにも高まったことで、仮にテーパリングに言及しなければ、金融市場にテーパリングに関する不確実性が残ることになり、金融市場が悪く反応する可能性がある、とパウエル議長は考えたのではないか。

 さらに、直前にはジャクソンホール会議でのパウエル議長の講演を意識したかのように、早期のテーパリング実施を主張するタカ派の地区連銀総裁らの発言が相次ぎ、それに背中を押されてパウエル議長がテーパリングへの言及に追い込まれた可能性もあるだろう。

▽金融市場の安定にはベストな内容に

 パウエル議長の講演は、金融市場の安定の観点からは、ベストな内容に近かったと言えるかもしれない。

 第1は、すでに指摘したように、テーパリングに言及することで、金融市場の不確実性を低下させたことだ。第2は、テーパリングに関するFOMC内での意見の隔たりが大きくないことをアピールしたことだ。これも先行きの金融政策見通しの不確実性を低下させる。第3は、政策金利の引き上げには慎重である姿勢をアピールしたことだ。

 第2の点について、パウエル議長は前回7月のFOMCで、もし経済が幅広く良好に推移すれば、「今年テーパリングを開始するのが適当だ(it could be appropriate to start reducing the pace of asset purchases this year)と自身は考えた」、と説明した。さらに、これは多くの参加者も同様だったと説明している。

 パウエル議長はテーパリング開始に比較的慎重なハト派であり、他のメンバーには早期実施を求めるタカ派も多くいたはずだが、コンセンサスを重視するパウエル議長は、敢えてFOMC内での意見の相違が小さいことをアピールしたのではないか。

▽市場の関心はテーパリングから政策金利引き上げ時期に

 第3の点についてパウエル議長は、「テーパリング開始の時期とそのペースは、政策金利引き上げに関する直接的なシグナルではなく、政策金利引き上げにはそれとは異なるより強い検証が必要」と説明した。テーパリング開始が政策金利引き上げへと自動的に繋がっていくものではなく、政策金利引き上げのハードルはもっと高いことを強調したのである。

 パウエル議長の講演を受けて株高など金融市場が良い反応を見せたのは、テーパリングへの言及よりもこの部分の発言であった。とりあえず、すぐに政策金利の引き上げが実施されないとの見方が、金融市場に安心感をもたらしたのである。

 そもそも資産買い入れ策は、長期金利の変化など金融市場の反応を通じて経済に影響を与える政策手段であり、政策金利を動かす伝統的な金融政策と比べてその政策効果は不確実だ。政策金利引き上げの方が、より本格的で重要な正常化のプロセスなのである。今後、金融市場の関心はテーパリングから政策金利引き上げ時期に移っていく。

▽政策金利引き上げ時期について見方は分かれる

 FOMCの参加者の最新見通しでは、2023年には2回の政策金利(FF金利誘導目標)の引き上げが予想されている。さらに地区連銀総裁の中には、2022年中の政策金利引き上げに言及する者もいる。ハト派のパウエル議長の見通しはそれらとは異なるはずだ。

 物価上昇率が2022年以降は目標の2%程度まで低下していくとの前提のもと、1年前にFRBが公表した新たな金融政策の枠組み、新たな物価目標政策に照らせば、物価上昇の上振れを容認し、政策金利の引き上げは急がない方針となるはずだ。

 パウエル議長が主導し鳴り物入りで打ち出したこの新たな方針を無視するかのようなFOMC参加者の見通しを、パウエル議長は苦々しく思っているだろう。そして、それはパウエル議長のリーダーシップの欠如を示唆している可能性もある。

▽政策金利引き上げと金融市場の関係について3つのシナリオ

 いずれにせよ、テーパリング実施はほぼ見えてきたが、政策金利引き上げの時期についてはまだ見えていないのである。コロナショックを受けてFRBが実施した金融緩和は、結果的には行き過ぎたのではないか。それは多くの人が懸念するインフレのリスクではなく、金融市場の過熱感を生み出した可能性がある。そのもとで、政策金利を引き上げていく本格的な正常化は簡単なことではない。

 将来のFRBの政策金利引き上げと金融市場の関係について、3つのシナリオがある。

 第1は、政策金利引き上げが引き金となって、行過ぎが生じた金融市場に大きな調整が起きる、第2は、市場の不安定化を警戒して政策金利の引き上げが遅れることが、市場の行過ぎ、市場の歪みをさらに増幅し、いずれ市場が自律的に大きな調整を見せる、第3は、市場の調整を小幅に抑えつつ政策金利引き上げを進める中で、市場の歪みが時間をかけて解消されていく。

 第3が望ましいシナリオであるが、FRBがそれを実現できるかどうかは定かではない。それはかなりのナローパスだ。

木内 登英 (前日銀政策委員、野村総研エグゼクティブ・エコノミスト)

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木内 登英(前日銀政策委員、野村総研エグゼクティブ・エコノミスト)
1987年野村総研入社、ドイツ、米国勤務を経て、野村證券経済調査部長兼チーフエコノミスト。2012年日銀政策委員会審議委員。2017年7月現職。
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