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新しくない岸田首相の「新しい資本主義」

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【木内前日銀政策委員の経済コラム(109)】所信表明で「グランドデザイン」を示すべきだった

公開日: 2021/12/09 (政治, マーケット)

【木内前日銀政策委員の経済コラム(109)】所信表明で「グランドデザイン」を示すべきだった

 12月6日に臨時国会が召集され、岸田首相は所信表明演説を行った。経済政策については、概ね、政府が先般決定した経済対策、補正予算案で示された施策の説明に終始した感があった。

 政権としての方針を説明する施政方針演説とは異なり、所信表明演説は首相自身の考えを説明するものであることから、もっと自身の考える将来ビジョンを強く打ち出しても良かったのではないか。

 ポストコロナの日本経済をどのように変えていくのか、という中長期の「グランドデザイン」を国民に示すことが演説では期待されたが、それが十分になされたとは言えないだろう。

 首相は自らが掲げる「新しい資本主義」に関連して、企業の自由な活動、市場経済が、経済の繁栄をもたらしてきたとともに、格差の拡大、貧困、地球温暖化などの弊害を生みだしたとして、それを修正することの重要性を訴えた。

 しかし、完全に自由な企業活動を認め、自由な市場で全てが決まる純粋な資本主義などは、地球上に存在したことはない。企業・経済活動に政府が一定程度介入しながら、資本主義の問題点を補いつつ、多くの資本主義国は今まで発展を続けてきたのである。

▽「新しい資本主義」は新しく感じられない

 どの国でも社会保障制度があり、あるいは累進課税制度があることで、社会が許容できない格差拡大や貧困に対応してきた。また、地球温暖化対策を企業活動に取り込む動きは、既に世界的に広がっており、改めて強調する必要はないだろう。

 このように、首相は掲げる「新しい資本主義」は、既に世界で広く行われてきた資本主義の修正の考えであり、新味があるようには思えない。国民にとってもポストコロナの日本経済の「グランドデザイン」として、胸に響くことはないのではないか。

 また首相は、優遇税制の強化を通じて、企業に賃上げを促す考えを改めて強調した。しかし、将来の成長期待が乏しいもとでは、一時的な税優遇で企業が大幅な賃上げに動くとは思えない。

 また、こうした企業活動への政府の関与、介入の強化が「新しい資本主義」の本質なのであれば、それは企業が生みだすイノベーションを損ね、また設備投資の抑制を通じて経済の潜在力を一段と低下させてしまう恐れも出てくるのではないか。首相の目玉政策の一つである「経済安全保障政策」にも、行き過ぎれば同様のリスクがあるだろう。

▽財政のサステナビリティにも「グランドデザイン」を

 他方、岸田首相が提示する成長戦略には、「デジタル田園都市国家」を筆頭に、納得感のあるものも少なくない。ぜひ、分配、賃上げ政策よりも成長戦略、構造改革を前面に打ち出していって欲しいところだ。

 ただし、所信表明演説で示された成長戦略は、巨額の予算を付けていくことで実現を図る、との印象も強かった。財政負担を伴う歳出増加、税優遇措置以外の手段でも、規制改革などを通じて成長戦略を進めることは可能だ。

 首相は演説の冒頭で、「経済あっての財政だ。順番を間違えてはいけない」として、巨額の国債発行を伴う大規模経済対策の正当性を訴えた。短期的には経済対策に注力し、財政健全化は中長期の課題とする、との整理である。

 しかし、そうした経済重視の姿勢のもとで、政府がここまで財政環境を悪化させてきたことをどう考えるのか。全ての国民が満足できるような経済環境が実現されるまでは財政健全化に着手しないということであれば、それは永遠に行われないのではないか。

 その間に、将来世代への負担はまずます累積し、それが企業の成長期待を押し下げ、設備投資の抑制などを通じて経済の潜在力を一段と低下させてしまうだろう。日本はまずます貧しくなってしまうのではないか。

 こうした悪循環から抜け出すための財政健全化の「グランドデザイン」、財政の「サステナビリティ」向上のビジョンについても、岸田首相は今回の所信表明演説でしっかりと示すべきであった。

木内 登英 (前日銀政策委員、野村総研エグゼクティブ・エコノミスト)

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木内 登英(前日銀政策委員、野村総研エグゼクティブ・エコノミスト)
1987年野村総研入社、ドイツ、米国勤務を経て、野村證券経済調査部長兼チーフエコノミスト。2012年日銀政策委員会審議委員。2017年7月現職。
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