政府は1月7日に「まん延防止等重点措置」を、沖縄県、広島県、岡山県の3県に適用した。それから2週間で、対象区域は合計で16都県にまで広げられた。政府は1月19日に対象区域の拡大を正式決定したのである。期間は1月21日から2月13日までの3週間程度(24日間)となる。
新たに対象区域に加わったのは、首都圏では、東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、群馬県の1都4県、愛知県、岐阜県、三重県の中部3県、新潟県、熊本県、宮崎県、長崎県、香川県、の13都県だ。
1月7日に同措置が適用された3県の経済規模(県民所得)は、日本全体の4.0%であった。これに対して、新たに加わる13都県の経済規模は、日本全体の50.7%と半分を超えており、合計すると54.7%にまで一気に拡大することになる。
1月7日に決定された3県での同措置による経済損失の試算値は、540億円と推計される。一方、新たに加えられた13都県で仮に全市町村が対象となれば、3週間程度(24日間)での経済損失は1兆650億円になる計算だ。既に実施されている3県での同措置の経済損失と合計すると、1兆1,200億円となる。これは、1年間の名目GDPの0.19%に相当する規模である。同措置による3県での経済損失額と比べて、一気に19.6倍にまで膨れ上がる。
一方、13都県の全てが適用地域とならないケースを考えよう。適用地域となる市町村の都県全体に占める経済規模が、仮に沖縄、山口、広島の3県と同様に76%となる場合には、13都府県での経済損失は8,090億円となる計算だ。3県での同措置の経済損失と合計すると、8,640億円となる。これは、1年間の名目GDPの0.15%に相当する規模である。3県での経済損失規模と比べて、14.9倍となる。
他方で感染が急拡大を続ける大阪府は、隣接する兵庫県、京都府とともに「まん延防止等重点措置」の適用を政府に要請することを既に検討し始めている。同措置の適用区域は、この先短期間でさらに拡大していく可能性が高まっている。さらに、「まん延防止等重点措置」から「緊急事態宣言」へと移行する地域も、早晩出てくるだろう。
感染再拡大を受けた規制措置も、まだ始まったばかりと言えるだろう。規制がさらに強化されていくなか、経済への打撃は強まっていくことは避けられない。感染リスクの一時低下を受けて昨年秋に持ち直しのきっかけを掴んだ日本経済は、年明け後の予想外の感染急拡大と規制強化を受けて、再び足踏み局面へと陥っている。
まん延防止措置、16都県に拡大 経済損失1.1兆円 |
あとで読む |
【木内前日銀政策委員の経済コラム(112)】持ち直しかけた日本経済、また足踏み状態に
cc0
![]() |
木内 登英(前日銀政策委員、野村総研エグゼクティブ・エコノミスト)
1987年野村総研入社、ドイツ、米国勤務を経て、野村證券経済調査部長兼チーフエコノミスト。2012年日銀政策委員会審議委員。2017年7月現職。
|
![]() |
木内 登英(前日銀政策委員、野村総研エグゼクティブ・エコノミスト) の 最新の記事(全て見る)
|